迷ったら数字を利用してみよう

 日常生活を送っている中で、判断を迫られる場面というのは必ずある。
人生の岐路に立たされたときや仕事の方向性を決定するときなど大仰な場合もあるが、「今日の晩ご飯は何にしよう」とか、「どっちの道を通って行こう」などというシチュエーションも、判断する場面に立たされていることに変わりはない。判断する内容がそんなに重要でないときは、無意識のうちに「これだ」と決めて行動をとるのがほとんどだろう。
では、ちょっと判断に苦しむ場面にあったらどうするか・・・
人に相談したり広く情報を集めたりして、結局は自分で決定することになるが、個人差はあれ、そこまでたどり着くには時間と労力を必要とする。その時間を短縮するために、よくありそうなことを例にしてこんなことを試してみてはどうだろうか?

(例)車を買いたい、いいアパートを見つけたい、パソコンを買いたいなど、ちょっと値がはる買い物をするとき。
  ここではOKABEにとってありそうな、
バス用の新しいロッドを購入したいという場面で考えてみよう。


1.問題発生!!

○問題
 スピニングロッドは2本持っているが、ベイトロッドを使って釣りをしたい。そこで3本のロッドを候補にあげたが、どれも甲乙つけがたく決められない。
○評価基準
 じゃあ、新しいロッドを購入する場合、どんなことを基準に選ぶのか列挙してみよう。
  
値段・・・やっぱり安いにこしたことはない。
  
性能・・・軽くて使いやすい、微妙な操作が可能etc...長時間使うものだから、全般的に持つロッドの性能が自分に合っているものがいい。
  
携帯性・・・1ピースと2ピース。ロングロッドとショートロッド。車に積む場合も考えよう。
  
入手しやすさ・・・いくら欲しいものといっても、注文してからいつ入荷するかわからないなんてのは困るなぁ。
  メーカー・・・あそこのメーカーのを使ってきたけど、カッコイイから好きなんだよね。
 ○選択肢
 基準に合致したロッドはいったいどれなんだろう?


2.自分が基準としている要素の中で、いったいどれが優先されるのか?
 
まずは自分がどの要素を重視しているのか、各要素を比較しながら思っているままに数字で表現してみよう。

  値段(縦軸)は性能(横軸)に比べると1/3しか重要でない。逆に性能(縦軸)は値段(横軸)に比べると3倍重要である。
  
メーカー(縦軸)は性能(横軸)に比べると3倍重要である。逆に性能(縦軸)はメーカー(横軸)に比べると1/3しか重要でない。
  
メーカー(縦軸)とメーカー(横軸)の重要度はもちろん同じだから1である。

 このように主観で2つの要素を比較し、縦軸横軸に対してどれだけ重要かという基準で数値を記入するとともに、逆の立場からみた場合の数値を逆数で記入する(5を記入したら1/5)。
 次は各要素の横軸に対して
幾何平均をとる(これはエクセル等の表計算ソフトを使わないと難しい。でもこのページを見ることができる人はエクセルも使えるだろうという前提のもと、話を進めさせていただこう)。数式はGEOMEANである。値段だったら、1,1/3,1/4,1/2,1/5の幾何平均を取るわけである。実際の数式だったら、=GEOMEAN(B2:B6)のようになるだろう。
 各要素ごとの幾何平均が計算されたら、次にその合計を計算する(上の例だと0.38+1.00+1.64+0.61+2.61=6.24)。SUMで計算すればこれはすぐだね。
 今度は、各要素の幾何平均は要素ごとの幾何平均の合計に対してどれぐらいのウェイトを占めるのか計算する(
値段だったら0.38/6.24=0.06、性能だったら、1.00/6.24=0.16)。ここででた値が大きいほど、その要素を重視していることを意味している。この場合だと、

メーカー>携帯性>性能>入手しやすさ>値段 の順に重視していることがおわかりいただけるだろう。


3.各要素に関して、候補にあげているものはどれくらい評価できるのか?
 
自分が重視している要素はわかった。じゃあ候補にあげているロッドに対して、値段、性能、携帯性、入手しやすさ、メーカーの5つの要素ごとに点数をつけて評価してみよう。

 手順としてはさっきと同じである。表2 値段に関する各ロッドの評価を例に取ると、

  値段的に見ると、キャロスペフレイムに比べると1/2の優位性がある。逆にフレイムキャロスペに比べると2倍優位性がある。
    (つまりキャロスペの値段はフレイムの2倍だということを示す)
  値段的に見ると、
キャロスペバスワンXTに比べると1/7の優位性がある。逆にバスワンXTキャロスペに比べると7倍優位性がある。
    (つまりキャロスペの値段はフレイムの7倍だということを示す)

 後は同じように幾何平均をとり、ウェイトを計算する。他の要素に関しても同様の計算を行う。
 ここで、値段は実際に売っている値段がわかるので単純に比較しやすいが、他の要素に関しては個人の感じかた一つで変わってくる。こういう場合、難しく考えずに、こっちの方が断然いいと思ったら7や5といった高い点数をつければいいし、あまり差がないけど、どちらかといえばこっちかなと思ったら2や3程度に押さえておけばいいだろう。

 こうやってまとめた結果、
  値段      :
バスワンXTフレイムキャロスペ
  性能      :
キャロスペフレイムバスワンXT
  携帯性     :
フレイム=バスワンXTキャロスペ
  入手しやすさ :
バスワンXTフレイムキャロスペ
  メーカー    :
フレイムキャロスペバスワンXT 
                 となったことがおわかりいただけるだろう。


3.各要素に関して、候補にあげているものはどれくらい評価できるのか?
 
要素のウェイトと、要素ごとの各ロッドのウェイトを表にまとめて整理してみよう。


 すると表7のようにまとめることができるだろう。この値をもとに、総合評価を計算するわけだ。その方法は、

   値段(ウェイト=0.06)  :キャロスペ=0.06×0.10=0.01 フレイム=0.06×0.19=0.01
                 
 バスワンXT=0.06×0.72=0.04
   性能(ウェイト=0.16)  :
キャロスペ=0.16×0.54=0.09 フレイム=0.16×0.30=0.05
                  
バスワンXT=0.16×0.16=0.03
   
携帯性(ウェイト=0.26) :キャロスペ=0.26×0.09=0.02 フレイム=0.26×0.45=0.12
                  
バスワンXT=0.26×0.45=0.12
   入手(ウェイト=0.10)  :
キャロスペ=0.12×0.54=0.01 フレイム=0.12×0.23=0.02
                 
 バスワンXT=0.12×0.65=0.06
   
メーカー(ウェイト=0.42):キャロスペ=0.42×0.18=0.08 フレイム=0.42×0.70=0.29
                 
 バスワンXT=0.42×0.12=0.05
                  
これもエクセルを使えば難なく計算できるだろう。

 後は各ロッドが獲得した点数の和を求めれば、そのロッドに対する評価が数字として現れることになる。その結果、

  フレイムバスワンXTキャロスペ となった。

  よし、この結果をもとに、明日、早速ロッドを買いに行こう!! という運びになるわけである。


でもね、これがすべてじゃないから気をつけてね。

 確かに数字で表されると説得力があるけど、これは主観で点数を付けているということをお忘れなく。自分一人だけに関わってくることの決定だったらかまわないけど、大人数で決めるとなると、要素の選択から点数を付けるところまでみんなで詰めないととんでもないことになる。これが数字のマジックなんだよね。でも自分の意見を提案する分にはかなり有効です。実際、フィンランドの国会で、原発建設の意義を問うケースで使われたことがあります。

 たとえば家族旅行に行きたいけど、お金がかからないようなプランにしたいと考えているお父さん。低料金、時間、見どころ、移動距離等を要素にあげ、低料金にウェイトが高く配分されるように点数を付けてプランを提案してあげれば、グッと自分の意見が通りやすくなりますよ。

 この方法は簡便に数字で比較できるので重宝すると思います。もっと本格的にやろうと思ったら、多変量解析などという統計手法を使うことになりますが、そこまでする必要はないでしょう。

 ちょっとわかりにくくて理解できなかったという人はメールをください。