今考える「縁川小石」論
注:この文章では、「ちゃん」とか「たん」などの敬称は、あえて略させていただきます。
小石は、損なキャラクターだ。
それは、「おねがい☆ティーチャー」の作中で桂に告白をしたものの、振られてしまう役だったからだけではない。
みずほ先生や苺にはかなりの支持層がいて、多くのファンを獲得しているにもかかわらず、
小石は人気のうえでその2人にかなりの差をつけられてしまっていることだ。
普通、「おねてぃ」のような恋愛ものでは、ヒロインはもちろん、そのヒロインの恋敵となる女の子にも、
ある一定のファン層がつくものだ。
「めぞん一刻」における八神いぶきや七尾こずえ、「オレンジロード」における檜山ひかるなどがその例だ。
もちろん、小石にも熱烈なファンは確実に存在しているのだが、悲しいかな、そのファン数は「少ない」と言わざるをえない。
その理由をあえて考えるならば、彼女が「おねてぃ」に登場する女性キャラのなかで、
いちばん現実にいそうなキャラクターだったからではないか。
言いかえれば、小石の魅力的な部分が、「おねてぃ」の女性キャラのなかで突出したものでなかったからではなかろうか。
今回は、そのことをテーマに語ってみたい。
私は、「おねてぃ」を観始めた当初、小石が好きだった。まさに、小石は萌えの対象だった。
今では苺にどっぷりハマっている私だが、間違い無く小石が「おねてぃ」の中で一番好きな時期があった。
なにが私の琴線にふれたのか。
それは、第1話の冒頭、桂の机に寄りかかっている小石の姿を観た時だった。
高校1年生にしては発育のいい胸が、桂の机にのっかっている、あの映像である。
もちろん、小石の胸だけに興味がいったわけではなく、活発で元気でいつも明るい小石に、
私は惹かれていくことになるのだが、なにより最初の映像のインパクトはとてつもなく大きかった。
私と同じような印象を抱いた方も多いのではなかろうか。
OPの海ノ口駅のホームにぴょこんとフレームインしてくる小石、
桂に好きな人ができたんじゃないか、といわれてむっとする小石、
なんとか桂を自分に振り向かせたくて、積極的に行動する小石、
純粋なとこ、いじらしいとこ、すべてが私の心をとりこにしたのだった。
だから、そんな小石が桂にふられてしまう第8話は、私にとって「おねてぃ」のベストサブタイトルである。
相手がみずほ先生じゃ仕方が無いし、そのことに桂に文句を言うつもりは無い。
それより、小石が桂に振られるシーンを、しっかり描いたことが私には良かったと思った。
もし、現実に小石のような女の子がいたとすれば、おそらくかなりモテたであろう。
いや、クラスの中でNo,1の人気を得てもおかしくない。それほどかわいい。
しかし、「おねてぃ」には、みずほ先生がいたため、小石はNo,1にはなれなかった。
みずほ先生はヒロインなのだから、しょうがないんだが、それにしてもみずほ先生は何から何まで完璧だった。
年上なのにあどけない表情をして、ポニーテールで眼鏡をして教師をしているときと、
髪をおろして眼鏡を外してポッチーを食べているとき、その両方が魅力的で、
おまけにとてつもないナイスバディで、しかしウブで、まさにみずほ先生は萌えであった。
私がまだ小石に萌えていた時は、それでも小石のほうが魅力的だったのだが、
一般的な観点で言えば、やはり小石はみずほ先生にはかなわないのであった。
小石の不幸なとこは、せっかく高校生にしてはけっこうなナイスバディであったのに、
その小石よりもみずほ先生のほうがナイスバディであったことだ。
これでは、身体的な魅力だけで比べた場合でも、みずほ先生のほうが上になってしまう。
魅力的な部分が他のキャラとかぶってしまう、小石が損なキャラクターだと私が思ってしまう所以である。
それでも第8話までなら、このままNo,2としてなかなかの人気を得たことであろう。
しかし、さらに小石が不幸だった点は、苺というキャラが第9話以降ストーリーに大きくからんできたことであろう。
いうまでもなく、苺が桂と同じ停滞を患っていて、しかも6年間も停まっていて、今は21であったことである。
桂はそのことを知り、苺をまた停滞させたくない一心で、みずほ先生と別れて小石と付き合う決心をするのだが、
正直言ってこの展開には驚いた。
今まで第8話までの苺は、クールなロリなキャラであるのは9話以降と変わらないが、
自分の心を押し隠して、小石や楓に幸せになって欲しいと願っているだけで、彼女の本心がなにひとつわからなかった。
物語の本編にもあまりからんでこなくて、今一つ萌えるキャラにもなりえなかった。
もちろん、第1話からもう苺一直線なファンも多数いたことだろうし、
そうでない人も、第5話のパンチラの苺にはクラっときて虜になってしまったようで、
そういう人から比べれば、私なんか苺に萌えるのは遅いほうなのだが、
とにかく第9話の苺には大きな衝撃を受け、私の心は揺らぎ始めてしまったのであった。
桂に何故小石を振ったのか問い掛けている最中に停滞してしまう苺は、今まで観たことの無いか弱さがあった。
「私、止まりたくない」苺のこの言葉は、私の心に大きく突き刺さった。
停滞を患い、6年も時間が止まっていた苺は、やっと出来た小石と楓という友達の幸せを願い、
彼女たちが幸せになることで自分が止まらないでいられる、
これを知ったとき、「苺を守ってあげたい!」と思わずにはいられなかった。
苺のちっちゃくてロリ体形なとこも、一度彼女を好きになると、そこもまたよくて惹かれる一因になっていった。
さらに第10話。桂と電話している苺は、今までにない自然な感じでよかった。
そして苺のアパートを訪ねた桂に会うために現れた苺は、本当に自然な表情をしていてかわいかったのだ。
彼女の私服は既に何度も見ていたが、このときの服がまたなんとも彼女にあっていて、萌えたのだった。
おまけに桂の手をとって自分の胸に押し当てるシーンを見てしまうと、
「うぉ〜!かわいいぜ〜!」
と吠えてしまったくらい。とにかくこの時の苺はホントにかわいくて、さらに私の心は揺らいでしまったのだった。
小石の話しに戻れば、サブキャラクターのなかで小石よりもファンの心を掴んだキャラが出てしまったことが、
彼女の最大の不幸だったといえるだろう。
ただでさえロリキャラで人気が出るのも当然なのに、あれだけストーリーにからんできて彼女の秘密がわかってくれば、
一般的な観点から言えば、とてもじゃないが小石はかなわない。
だからこそ、小石ファンからすれば、小石はかわいそう、と思ってしまうのであろう。
私もそれがわかったから、悩んだ。小石がかわいそうだ。あれほど小石が好きだったのに。
それでも自分の気持ちに嘘はつけない。いや、つきたくなかった。だから、私は小石から苺に乗り換えた。
乗り換えた、という表現は悪いかもしれないが、もうその時には自分の気持ちは苺しかなかった。
でも、私は小石が嫌いになったわけではない。今でも小石は好きだ。
ただ単に小石よりも私の心を奪った苺というキャラがいたに過ぎない。
こういう気持ちを抱いたファンは他にもいるのだろう。キャラ人気ではみずほ先生や苺が好きだ、という意見が多いなか、
一番印象的なシーンでは小石が振られるシーンをあげている人が多いからだ。
今でも小石がいちばん好きだ、と少ないながらにも声を大にして言っているファンをネットの書きこみで見かけるたびに、
そんなファンに思われて小石は本当は幸せなのかも、と思ってしまうのであった。
さて、最後に苺のことについてもう少し話そう。苺はそのあとも、実に魅力的に描かれている。
第10話で小石と抱き合うシーンもいいのだが、なんといっても第12話で猫とじゃれあっているシーンが印象的だ。
あの苺がここまで表情豊かになったのか、と改めて苺を好きになってしまった。
第10話のそのあとには、桂に向かってこう呟いている。
「あなたに、もっと早く会ってれば、私・・・」
もしかしたら、この時苺は、桂に対して少なからず恋愛感情を抱いていたのではないか、
同じ停滞という病を患っていながら、必死に前へ行きようと努力している桂を見て、苺も桂のことを好きになったのかも、
そう思ってしまう。
第12話で苺桟橋で桂と夕闇のなか話しているシーンでも、まるで桂にしか見せないようなかわいい表情であり、
ここだけ見たらまるで恋人同士のような雰囲気である。
ダメ押しは、ラジオドラマの「みずほ先生のイメチェン」の回である。
ご存知、苺が「るるった るるった にゃんにゃにゃ〜ん」と言いながら猫耳にしっぽをつけて登場するという問題作である。
この回はさすがに私もぶったおれてしまい、何度も何度も聴き直しているほどお気に入りなのだが、
ふと、そのなかでの桂に対してのこの言葉に、実は苺の本心がこめられているのでは、と思ってしまった。
「苺は、草薙くんになら食べられてもいいのににゃ」
このイメチェンは、みずほ先生を嫉妬させるためだけにしたことなのだが、
それはあくまで表向きで、実はにゃ〜言葉でカモフラージュして、桂に自分の本心を伝えたのではないか、
つまり苺の桂への告白だったのではないか、と思ってしまう。
もちろん桂はみずほ先生と結婚していて、かなわぬ恋なのはわかっているわけで、
だからこそこのようなギャグともとれるような方法で、自分の本心をさりげなく伝えたのではなかろうか。
やっぱり苺のファンになれば、桂と結ばれればよかったのに、と思ってしまう。
それがこのような深読みをしてしまうのであろうが、苺も桂が好きだったんだろうな〜、
とやっぱり思ってしまうのである。