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3 誤差解析手法による補正(1)
ここではマトリックスを対称化した式(3-1)に補正方式を導入して計算精度の向上と数値解の安定性改善を図る。
3.1 一般解の増幅因子
流速u と拡散係数が定数の場合には式(2-1)は変数分離法によって解く
ことができ、その一般解はフーリエ級数で表現されるが、その成分の一つは次式で表される(6)。
(3-3)
ただし、A:複素定数、():方向の波数,:x方向の波長、である
(なお初期条件と境界条件を満足する解析解を求めるには、各成分を足し合わせて条件を満足する
ように各成分のAとを定めればよい)。ここで時間方向についてt=n・tで離散化すると、
式(3-3)より時刻t=n・t での節点
における濃度成分の一つは次式で表される。
(3-4)
ここで、式(3-3)より は前の時刻における
節点
での濃度であるため、式(3-4)は式(3-5)として表される.
(3-5)
ここでであり、無次元係数(ク−ラン数)と
(拡散数)を導入すると次式を得る。
(3-6)
ここで式(3-6)の実部を、虚部をとおくと次式を得る。
(3-7)
なお式(3-5)からわかるように、は濃度の時間変化を決定するため増幅因子と呼ばれる。
3.2 変形ガレルキン法の増幅因子
変形ガレルキン法の数値解は解析解を近似すべきであることから、
式(3-5)と同じ形式で次式のように表される。
(3-8)
ここでは変形ガレルキン法での増幅因子である.また節点の隣接節点()での
数値解ととの関係は各節点での一般解の間の関係式と同じ形式になるため、
一般解の式(3-3)と(3-8)から、次式のように表される。
(式(3-3)より)
(式(3-8)より) (3-9)
式(3-8)と(3-9)を代数方程式(3-2)に代入し両辺をで割り算すると次式が得られる。
(3-10)
ここでを考慮して上式を整理すると以下の増幅因子が得られる。
(3-11)
いま簡単のために変形ガレルキン法の増幅因子を次式の形で考える.
(3-12)
ここで、、: 非定常項から生ずる、 、: の関数であり,拡散項から生ずる、 : の関数であり、
移流項から生ずるものと分類できる。 したがって式(3-11)より〜は次式のように表される。
(3-13)
3.3 補正係数の導入
いまある数値解法の計算精度を向上させるために拡散項と移流項の定式化において
補正係数fおよびgを導入する.すなわち式(2-1)の代わりに次式を解析対象として考える。
(3-14)
したがってこの場合の変形ガレルキン法の増幅因子は一般に次式のように表される。
(3-15)
次に補正係数の f とg は一般解における増幅因子(式(3-6))と補正した数値解の増幅因子
(式(3-15))とを等値することにより求める.すなわち次式の等価式を実部と虚部の二つの
関係式に分けることにより、f とg を求めることができる。
(3-16)
、、〜は波数に依存しているが、ここで波数によらない補正係数を
求めるために、での極限を考えると次式が得られる。
(3-17)
なお
(, : x方向の波長)を極限でゼロとする考え方は、高精度の数値解を得るために
波長に比べて十分小さなメッシュ幅を使用することに相当する.そして式(3-17)より求めたf を拡散項に、
g を移流項にかけると、最終的に変形ガレルキン法による定式化を得ることができる。