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二次元自然対流問題の解析


本章ではMSR解法の二次元及び三次元熱流動問題解析への
適用例について述べる。
数値計算例としてはキャビティ内の自然対流問題を
取り上げ,レーリー数Ra=108までの
解析結果について他の研究例との
比較を含めて検討した。


1 基礎式

基礎式として,連続の式,ブジネスク (Boussinesq) 近似による
浮力項を
考慮したナビエ・スト−クス方程式およびエネルギー方程式の
無次元形を用いる
[13]

                  (4.1)

  (4.2)

                    (4.3)

ただし, :速度ベクトル :y方向(重力方向)の単位ベクトル θ:温度 

:圧力/密度  Ra:レーリー数  Pr:プラントル数 :時間 であり,ここで
レイノルズ数での代表速度を温度伝導率と代表長さとの比[9]とするととなる。


2 MSR解法による定式化

本節では二次元粘性流動問題の支配方程式(式(2.1),(2.2))との
相違点のみについて述べる。浮力項を考慮すると式(2.10)は次式のようになる。

      (4.4)

なお式(4.2)を変形ガレルキンにより流速の予測値を求める際には
浮力項も陽的に扱う。
また式(2.15)を導出する際には浮力項も省略し,
式(4.3)は式(2.5)と同様に変形ガレルキン法に
より定式化する。
ただし流速の予測値と温度を求める際には支配方程式を

移流拡散方程式とみなし,拡散項に補正係数を導入した。


3 二次元自然対流問題の数値計算例

キャビティ内での自然対流問題の解析は数値計算スキームの検証に
用いられる典型的な問題であるが[14],以下に二次元問題の計算結果について述べる。


3.1 計算条件

4.1のような閉じられたキャビティ内に流体が満たされ,左側(AD線)に
温度θ=1を,右側(BC線)に温度θ=0を与え,上下(AB線とCD線)に断熱(境界条件を
課した際の流動問題を考える。

左側の流体は加熱されるとともに浮力により上昇し,右側の流体は
冷却されて密度の増加により下降し,その結果,反時計回りの自然対流現象が生ずる。
流体を空気(Pr=0.71)とし,流速の境界条件としてu=v=w=0を,圧力の境界条件として
を考える。
 
また初期条件としてu=v=w=0,p=0,θ=0 とおく。

Fig. 4.1  Computational domain

また図4.2に計算領域を不等長四辺形メッシュに分割した一例を示す。

Fig. 4.2  Non-uniform meshes ()

解析結果の収束性等を検討するために  
満足する
速度に対して次式の相対速度変化率を定義する。

       (4.5)

また熱の通過量を調べるために次式の平均ヌッセルト数を用いる。

                   (4.6)


3.2 計算結果

Table 4.1 Computational parameters and results (Ra=105~108)

Ra

Method

Meshes

Δt

Loop

umax

vmax

Nuav.

108

Present

100×100

5×10-7

110,947

327.4

2231

30.98

Okanaga et al.[9]

2.5×10-7

200,000

320.7

2221

30.06

Inada et al. [15]

50×50

5×10-7

269.7

2039

28.60

Kakuda et al. [16]

100,000

306.5

2036

30.40

Matsuda et al. [17]

100×100

49,934

300.5

2171

30.41


   (a) Temperature ()        (b) Velocity           (c) Correction coefficient ()


Fig. 4.3 Distributions of temperature, velocity
     and correction coefficient ()


      

                (a) Okanaga et al. [9]                (b) Matsuda et al. [17]

       Fig. 4.4 Distributions of temperature (, )


105            106               107            108

          Fig. 4.5 Relationship between Ra and