三次元流れ問題の解析(1)
変形ガレルキン法とパタンカらのSIMPLE(4)法との組み合わせ解法である
MSR解法により三次元非圧縮性粘性流れの解析を行った。数値計算例としては
三次元キャビティ内の粘性流れ問題を取り上げてレイノルズ数Re=3,200までの
計算を行い,他の研究例との比較により、その有効性について検討した。
1 基礎式
基礎式として,三次元非圧縮性粘性流動問題の
連続の式とナビエ・ストークス方程式の無次元形を用いる。
(3.1)
(3.2)
ただし,
:x, y, z方向の速度ベクトル,
:圧力/密度,
:時間,
:レイノルズ数 である。
2 MSR解法による定式化[7]
MSR解法による定式化は基本的に2.3節の二次元問題の場合と
同様の考え方で行われる。
図3.1の不等長六面体一次要素の場合には
補正係数は文献[1]6.2節と同様に次式で表される。
(3.3)
ただし,クーラン数
,,,
フーリエ数 ,,,
hx,hy,hz:x,y,z方向のメッシュ幅,
α,β,γ:x,y,z方向のメッシュ幅の変化率 である。
Fig. 3.1 Non-uniform hexahedral linear
elements
3 数値計算例
3.1 計算条件
キャビティ流れの解析は数値計算スキームの有効性を検証するための
典型的な問題である。MSR解法によりレイノルズ数 400,1000,2000及び3200
の場合について静止状態からの計算を行った[7,8]。
本論文ではレイノルズ数2000と3200での計算結果について述べる。
計算領域としては不等長六面体1次要素の40x40x40個要素に分割した。
図3.2に三次元キャビティの計算領域を,図3.3にメッシュ分割図を示す。
なお不等長メッシュではx,y,z方向を次式により分割している[9]。
(x≦0.5) (x>0.5) (3.4)
ただし,, (::一辺の分割数) である。
Fig. 3.2 Computational
domain
他の計算条件を以下に示す。
(1) 初期条件 キャビティ内で u=v=w=0,p=0
(2) 境界条件 @ 流速:DHGC面で u=1,v=w=0;その他の面で
u=v=w=0 A 圧力:全ての面で
(3) 定常判定条件:
に対して次式を適用した。
(%) (3.5)
ただし、 は法線方向の微分を示す。
3.2 レイノルズ数2000での計算結果
表3.1に各計算パラメータを示す.ここでΔtの値は定常解が得られた
タイム・ステップ値であり,カッコ内の数値は計算結果が発散した際の値である。
また,bmax(=,:最小の要素幅)は最大クーラン数である。
図3.4にRe=2,000での流速ベクトル図と圧力分布図を示す。
( ただし,z-y 断面とz-x断面での速度ベクトルはx-y断面での10倍の
スケールで表現している。) これよりz=0.5面での流れの対称性が
確認できる。図3.5に相対速度変化率δの変化を示す。
これより,δは小さな振動を伴うものの,計算を進めるにつれてその値は
小さくなり,最終的には定常解が得られているものと考えられる。
なお図3.6は流速ベクトルの三次元図である。また図3.7に
x−y断面(z=0.5)における渦度中心の位置を文献(10)の値とともに示す。
Re=2000の場合には比較的良く一致しているが,他の場合には
若干のずれが観察できる。
Table
3.1 Computational parameters (Re=2000)
Method |
Mesh |
Δt |
Loop |
bmax |
MSR |
40x40x40 |
|
6,202 |
2.43 |
Matsumoto et al. [10] |
30x30x30 |
0.01 |
− |
0.66 |