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二次元流れ問題の解析(1)
本章では,まず変形ガレルキン法を用いた流れ関数と渦度によるナビエ・ストークス
方程式の離散化技法[2,3]について説明し,つぎに変形ガレルキン法とSIMPLER[4]法との
組み合わせ解法(MSR解法)による離散化技法について述べる。
最後にこれら二解法による正方形キャビティ内流れの解析結果を紹介する。
1 基礎式
非定常非圧縮性粘性流れの運動は,式(2.1)の連続の式と式(2.2)の
ナビエ・ストークス方程式により記述できる。
(2.1)
(2.2)
ただし,各式は無次元形であり,:速度ベクトル,
:時間,
:圧力/密度,
:レイノルズ数,U:代表速度,L:代表長さ,ν:動粘性係数,である。
2 流れ関数と渦度による定式化
二次元問題の場合には、渦度 と流れ関数
を導入すると
式(2.1)と(2.2)から次式が得られる。
(2.3)
(2.4)
(2.5)
ただし u,v:x,y方向の流速である。
式(2.3)右辺の渦度として前時刻での値を用いると,式(2.3)を文献[1]でのガレルキン法により
離散化すると流れ関数が得られる.また各節点での流速は,次式のような当該節点回りの
要素面積重み付け法により求める。
(2.6)
ここで,mは節点を囲む要素数,と
は式(2.4)により得られる各要素での平均流速,
は各要素面積,である。 また式(2.5)は移流拡散方程式とみなすことができ,
変形ガレルキン法を適用して渦度が求められる。 ここで移流項は以下のように考える。
(2.7)
上式での項は数値誤差により厳密にゼロとはならないが,この導入
により数値計算の収束性と安定性を改善することができる。また安定性の向上と
計算精度の改善を図るため,文献[1] 3.3節での誤差解析手法を用いて式(2.5)の
離散化式に文献[1]6.1節での補正係数を導入する。
ク−ラン数: ,
, フ−リエ数:
,
(2.8)
なお補正係数の導入により最終的には支配方程式の拡散係数に
f をかけることになるが,式(2.5)の場合には となる。
3 流速と圧力による定式化 (MSR解法の提案)
式(2.1)と(2.2)の連立方程式をパタンカ(Patankar)によるSIMPLER法[4]のプロセスにより
解くが,この際,流速の予測値は変形ガレルキン法により求める。 本解法をMSR法とよぶ。
3.1 擬似速度の導出
式(2.2)の左辺第一項を とおくと次式が得られる。
(2.9)
ここで上式の右辺第1項と第2項を次式の擬似速度として定義する。
(2.10)
すなわち式(2.9)は次式で表される。
(2.11)
したがって式(2.10)をガレルキン法により定式化すると擬似速度が求められる。
3.2 圧力予測値の導出
式(2.11)の発散をとると式(2.1)から新しい時刻ではとなるため
次式の圧力に関するポアソン方程式が得られる。
(2.12)
ここで上式左辺の圧力を予測値で表すと次式を得る.
(2.13)
したがって上式をガレルキン法により離散化して圧力の予測値が得られる。
3.3 速度予測値の導出
式(2.2)を変形ガレルキン法により定式化して流速の予測値を求める.この際,
対称マトリックスを得るために移流項と圧力項を陽的に取り扱う。 また補正係数の導入により
は
となる。 なお補正係数を導出する際には,式(2.2)の圧力項を無視し,
式(2.5)と同様に移流拡散方程式とみなした。 上式の圧力項に予測値を代入し,
得られた流速を予測値とする。
3.4 圧力修正量の導出
式(2.2)左辺の第一項を予測段階と新しい時刻段階での陰的差分法により
離散化すると次の二式が得られる。
これら二式の差を求め,さらに圧力の差を修正値
(2.14)
とおいて移流項と粘性項を省略すると次式が得られる.
(2.15)
上式の発散をとると,連続の式を考慮してδpについてのポアソン方程式が得られる。
(2.16)
上式をガレルキン法により定式化すると圧力修正量が得られる。
3.5 新しい時刻での流速と圧力の導出
式(2.15)と(2.14)から,次の時刻での流速と圧力を式(2.17)により求める。
,
(2.17)
以上の計算過程を図2.1に示す。
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Fig. 2. 1 Computational procedure for the MSR method