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● 誤差解析手法による各種数値解法の精度評価

     変形ガレルキン法を含めた各数値解法の計算精度について、理論誤差の観点から検討した。


5.1 誤差解析の解析条件

    理論誤差解析では一般解の増幅因子と数値解の増幅因子との比較により数値解法の

計算精度を評価する。
一般解において、時間が経ったときの位相変化は とおける。

ここで、        
                  (4-33)

:波長  である.一方、数値解の位相変化の虚数部の実数部

であるため、一時刻を経るときの相対的な位相のずれは

             (4-34)

で与えられる.また数値解の安定性検討のためにはを調べればよいが、

一般解の場合は、式(3-6)と(4-33)よりとなる。よって各数値解法の誤差を

評価するために次のような標準偏差を考える。

               (4-35)

           (4-36)

                       (4-37)

ここで、@を変化させた場合、(の種類数)(の種類数)、Aを固定した場合、

(の種類数)である.または位相誤差、は散逸誤差の指標になると考えられる.

よって数値解法が安定条件を満たしている場合には、が小さいほど、その計算精度は

高いといえよう.いまとしている(なお、の場合は、式(4-33)よりとなるが、

式(3-15)、式(4-8)から(4-32)までのすべてのの虚部は、またはの関数であるので、

式(4-34)より、常にとなる.すなわち.がかなり特異な値となり全体的な数値誤差を

見るには不適当なため、は除外している).




    5.2 陰解法の誤差解析結果

表4-1に有限要素法と差分法の各解法について0.01〜0.4のもとで、0.1〜1(0.1きざみ)と

変化させた際の値を示す。ここでMGは変形ガレルキン法であり、GLはガレルキン法を示す.

また網掛けのデ−タは、そのでの最小値であることを示す。これより次のことがわかる.

@ 有限要素法ではMG法が、 A 差分法ではCNKの精度が高い。

B 総合的に見てMGが、最も精度が高い。

Table 4-1 Theoretical errors of  of implicit methods

0.01

0.02

0.04

0.1

0.2

0.4

FEM

MG

0.250

0.244

0.234

0.213

0.204

0.219

GL

0.293

0.296

0.303

0.334

0.392

0.485

MG

0.111

0.098

0.076

0.082

0.287

1.744

GL

0.121

0.121

0.119

0.106

0.097

1.939

FDM

CNK

0.334

0.334

0.334

0.334

0.324

0.254

RW

0.420

0.420

0.421

0.426

0.430

0.405

KS

0.504

0.494

0.476

0.430

0.371

0.262



5.3 陽解法の誤差解析結果

    4-2に、すなわち安定解範囲でのの最大値()を示す.

ただしは0.1から0.1のきざみで増やして検討した(なお、では、全ての陽解法が不安定となった).

これより陽的有限要素法の場合には、を除いて補正により安定性が改善されていることがわかる.

またSCE方式とSCE(C)(=SCV)方式との比較により、二次中心差分法では補正方式の導入により

安定性が
改善されていることがわかる.なお三次上流法(TU)と(TU(C))では、上流係数では

両者の
ほとんど変化はなかった。検討対象とした範囲では、TU(C)はTUに比べて

一般に大きなをもつ.


Table 4-2 The stability range of bmax

0.01

0.02

0.04

0.1

0.2

0.4

FEM

EX(C)

0.9

0.9

0.9

0.9

0.8

0.6

EX

0.6

0.6

0.6

0.7

0.8

0.8

FDM

SCE

0.1

0.2

0.3

0.4

0.6

0.6

SCV*

0.9

0.9

0.9

0.9

0.8

0.6

SZE

0.9

0.9

0.9

0.8

0.7

0.4

TU(C)

0.6

0.7

0.7

0.7

0.6

0.4

TU

0.1

0.2

0.2

0.4

0.6

0.6

TU(C)

0.5

0.5

0.5

0.4

0.4

0.2

TU

0.2

0.3

0.3

0.5

0.5

0.3

SCV=EX(C)=SCE(C)

4-3は〜0.6での数値誤差である.ただし、“――”は、その条件で不安定

となる
ことを示す.これより次のことがわかる.@ 有限要素法ではEX(C)法、差分法では

TU(C)()法の
精度が高い.A 総合的に見て、TU(C)()法が最も精度が高い

(なお、網掛けのデ−タはそのでの
最小値であることを示す).

ちなみに陰解法のMG法は、検討されている各種解法の中で
最高の精度となっている.

Table 4-3 Theoretical errors of Et of explicit methods

0.01

0.02

0.04

0.1

0.2

0.4

FEM

EX(C)

0.272

0.259

0.233

0.145

0.169

2.622

EX

0.247

0.232

0.210

0.310

2.156

4.140

FDM

SCE

――

――

――

――

0.127

2.499

SCV*

0.272

0.259

0.233

0.145

0.169

2.622

SZE

0.122

0.112

0.108

0.210

0.616

――

TU(C)

0.117

0.105

0.089

0.142

0.447

――

TU

――

――

――

――

0.287

2.513.

SCV=EX(C)=SCE(C)

陰解法は本来が大きくても計算できる点に特徴があり、この実用上の観点から

変形ガレルキン法は最適の数値解法の一つであるといえよう。

よって次節では、この方式について
数値実験を含めた検討を行った。