戻る 3 モデル式とは? 〜物理と数学の役割〜 3.1移動現象における基礎法則 それでは前ページで述べた天気予報やエアコン、自動車、 新幹線の設計などに使われているコンピュータ・シミュレーション でのモデル式とはどんなものでしょうか? これらの物理現象は運動量やエネルギー、そして物質の移動 する現象をさすことから、まとめて移動現象ともよばれています。 そしてこの移動現象(TransportPhenomena) を数学的に記述したものが モデル式ですが、そのためには その移動現象における基礎方程式が必要となります。 ではこの基礎方程式を導くための基礎法則とはどんなもの でしょうか?これには大別して以下の二つの法則があります。 (1)保存法則 運動量、エネルギーおよび質量の各々について 保存則が適用されますが、いま流体中に適当な閉じた 領域を考え、これに対して保存法則を一般的な形で 書き表すと次のようになります。 (系での蓄積量の時間変化)=(系に流入する速度) -(系から流出する速度)+(系内の生成速度) ・・・・(1) 系に出入りする物理量の速さは流束によって 表されるのでこの一般公式を適用して得られる 保存方程式は通常、状態を表す変数の時間的変化と 流速を含む微分方程式となります。 したがって 基礎方程式を導くには、流速に対する何らかの 表現をこれに付加する必要があります。 (2)移動速度に関する経験法則 たとえば熱伝導の例では温度の空間的な不均一が 熱移動の原因とみなされます。系が均一温度になれば 熱移動は生じないので、温度の空間的なこう配が 大きいほど熱移動速度、したがって熱流束も 大きいと考えられます。 すなわち広範囲に成立する経験法則は流速と 物理量の空間こう配との比例関係であり、運動量、 熱および物質の移動に関して別に得られたNewtonの 粘性法則、Fourierの熱伝導法則およびFickの 拡散法則をあげることができます。 すなわちFickの拡散理論を紹介しますと、 物質は@拡散によって、多いほうから少ないほうへと 移動する。 A単位時間に物質が単位面積を通して移動する量 (流束)は、その面の法線方向の濃度勾配に比例 (比例定数を拡散係数とよぶ)し、これを一次元の 場合について数式で表現すると 次式のようになります。
ここで、Jは単位時間に物質が単位面積を通して 移動する量であり、Cは物質の濃度、xは物質の移動 していく方向を正とする座標、Kは拡散係数である。 なお式(2)は物質が高濃度側から低濃度側へ移動する と考えられますのでマイナスの符号がついています。 |