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誤差解析手法を用いた四次差分法による

バックステップ流れの解析


(なお本文は,誤差解析手法を用いた四次差分法による後方ステップ流れの解析
(共著),日本機械学会論文集(B編),Vol. 67-661,2001年9月,
2151-2158頁からの一部転載・および補遺論文である。)


1 緒 言

バックステップ流れ問題は流入と流出境界条件を持つため、
閉じられた領域内部での流れ問題に比べて流れ場はより複雑となり、
数値解法の安定性への要求も厳しくなる。またダクト形状の変化による
流れの分離や再付着、回流などの流動現象も広範囲に利用されて
いるため、その実験と数値計算は数多く行われ(1〜3) 、数値解法の
計算精度とその境界条件への依存性を評価するための
ベンチマーク問題ともなっている(4)。

特にRe=800では定常・安定解の存在についても議論され(5,6)、この際、
再付着点の位置や安定性等についての研究が行われてきている(7〜10)。
これらの背景のもとに、本研究では著者らが開発した四次差分法のFWA(C)法を
用いてRe=800及び1000での数値解析を行った。また従来の計算結果との
比較により本解法の計算精度について考察し、その有効性について検討した。
さらに入り口での境界条件やメッシュ数等の計算条件による
影響についても検討した。

FWA(C)法は、次元粘性流れ問題の差分解法としてフロム(Fromm)
による四次ゼロ平均位相誤差手法(FZA)(11)に重みをつけた四次重み付き
平均位相誤差差分法(FWA)に誤差解析手法により得られた補正係数を導入
したものであり、すでにキャビティ内粘性流れについてレイノルズ数5,000
までの解析に適用してきた(12)。またこのFWA(C)法による自然対流問題
の数値解析でもRa=106〜1011の範囲で合理的な結果が得られることを
確認した(13,14)。

2 四次差分法による定式化(12)


基礎式として、流れ関数Ψと渦度ωから成る非圧縮性粘性流体
についてのナビエ・スト−クス方程式および連続の式を用いる。

                          (1)

     (2)

,                    (3)


ここで、u, v: x, y方向の流速、:流れ関数、
Re:レイノルズ数、t:時間, :渦度 である。

式(2)の時間方向の離散化はEuler前進法により、空間方向は
式(2)の移流項のみをFWA法により、他の微分項は二次中心差分
により定式化する。ここで式(2)の等長メッシュにおける
離散化式を式(4)に示す。

  (4)



なお、式(4)での各項は次式で示される。

ここで、



である。

W:重みパラメータ,n:時間方向の指標,i:x方向座標の指標,
hx:x方向のメッシュ幅,hy:y方向のメッシュ幅 である。

またbx,by:クーラン数,rx,ry:フーリエ数であり、
次式で表される。

               (5)

            (6)

なお W=0,0.5,1とした際には、FWA法はそれぞれ上流差分、
FZA法、中心差分法に相当する。いま数値解の精度向上のために式(2)の
粘性項と慣性項にそれぞれ補正係数fおよびgをかけると、次式の形となる(12)。


,   g=1     (7)


なお式(4)の補正係数をFWA法に導入した方式をFWA(C)法と呼ぶ。


3 Re=800での数値計算結果

3.1 計算対象

図1にバックステップ流れ問題の計算領域と流れ場の
構造を示す。ここで各境界条件は以下のように設定した。

Fig.1 Computational domain

また初期条件としては入り口を除いて一様流れとした。なお重みパラメータ
Wは文献(12)での検討によりW=0とした。また計算領域の長さLは出口の位置が
計算結果に影響しないように決定した。すなわち表1でのL=30と35での
分離・再付着点の差は0.01以下となっているため、以下の検討ではL=35を
採用した。また表1の各メッシュはいずれも等間隔メッシュである。

3.2 計算結果

Table 1 Effects of “L”-length in a computational domain
(Re=800)

Meshes

430×90

500×90

0.070

Δt

0.010

L

30

35

X1

11.991

11.987

X2

9.557

9.553

X3

20.610

20.609


また最も多いメッシュ数(1000×120)と(1200×150)の
計算結果では、X1,X2,X3 の値が小数点以下2桁目で異なっていたが、
その詳細な考察は3.3節に述べる。

図3(a)に最大メッシュ数(1200×150)での流線,渦度分布および速度分布を示す。
いずれも図3(b)のガートリング(Gartling)(10)の結果とよく一致していることがわかる



(a) FWA(C), 1200×150 meshes

(b) Gartling(10)

Fig.3 Stream function, vorticity and velocity distributions
(Re=800)

(以下省略)

文 献

(1) B. F. Armaly,et al., J. Fluid Mech.,127 (1983), 473.

(2) J. L.. Sohn, Int. J. Numer. Meth. Fluids,8 (1988), 1469.

(3) U. Ghia, et al., J. Comput.Phys.,48 (1982), 387.

(4) M. G. Philip, Int. J. Numer.Meth.Fluids, 11(1990), 951.

(5) M. G. Philip, et al., Int. J. Numer. Meth. Fluids, 17(1993), 501.

(6) L.. Kaiktsis, et al.,J.Fluid Mech., 231(1991), 501.

(7) M. Manzan, G. Comini, Commun. in Numer. Meth. Engng., 11(1995), 33.

(8) A. C. Marcela, Commun. in Numer. Meth. Engng., 14(1998), 697.

(9) I. E.. Barton, Int. J. Numer. Meth. Fluids, 26(1998), 459.

(10) D. K. Gartling, Int. J. Numer. Meth. Fluids, 11(1990), 953.

(11) J. E.. Fromm, The Phys. Fluid Suppl. II(1969), II-3.

(12) 松田・三木,機論, 60-577, B(1994), 3032.

(13) 松田・他3名,機論, 64-617, B(1998), 10.

(14) 邵・他2名,機論,66-642, B(2000), 332.

(15) C. L.. Woods, Aeronaut. Q., 5-3(1954), 176.
(16) S. Hermann, Boundary-Layer Theory (1979), 128, McGraw-Hill.

以 上