テレビドラマ「北の国から」の舞台となった富良野は、北海道の「へそ」に位置する。
事実、「へそ踊り」というのが存在する。
その富良野といえばラベンダーに代表されるように、色彩豊かな土地のイメージがある。その広大な風景にあこがれ、道内はもとより本州、台湾から多くの観光客が訪れる。
「北の国から」では、主人公のジュンがレイちゃんに想いをよせる「初恋編」が一番好きだ。
この「初恋編」に出てくる富良野の四季の風景も好きだし、何と言っても自分の思春期の「淡い想い出」というものがそこに交差しているからなおさら好きなのかもしれない。
また、「初恋編」では農業の現実というものもテーマとなっていて、借金の工面がつかず、クリスマスに「夜逃げ」してしまうというその悲惨さが浮き彫りとなっている。
そういう農業の厳しい現実と隣り合わせの富良野と美瑛の風景だが、ある意味においては広大な北海道の広告塔なのかもしれない。
が、一方では世界遺産に登録された知床やラムサール条約の釧路湿原、それに高山植物の宝庫である利尻・礼文といったいわば「手付かずの自然」が北海道らしいのだという方もいる。この話は別の機会へ委ねることとするが、僕はどちらにも言い分があるように思えるし、別にこだわるものでもないと思う。
ネットで知り合った神奈川にお住まいの「湘南マリリンさん」が、先日、富良野と美瑛、それに十勝岳と旅行され、その色彩と広大な風景にいたく感動させられたという。
新千歳空港に降り、レンタカーで周られたそうで、レンタカーを選択したこの行程に、さすがに旅慣れた方だなと感心した。
ツアーだと添乗員がいて、快適なバスの旅が保証されるというおまかせコース的なメリットがあるものの、団体行動であるから時間的な制約が常に存在し、結果、個人的な行動ができないというデメリットも同居する。
要するに、「ちょっとこの道をそれて、左の道を進んでみよう。」とか、「この景色が好きだからもう少し観ていよう。」といった自由行動ができないということであるから、例えば、それらの自由行動によって、ガイドブックやパンフレットにはない自分だけのスポットを発見できるかもしれないといった「わくわく感」的な冒険感覚が存在しないということになる。
実は、僕はまだ富良野や美瑛の風景に埋もれたことがない。過去に二度ほど国道を通過したことがあるのみで、「そのうち行けるさ。」みたいな気持ちがあって、今まで「じっくり滞在」をしたことがなかった。
しかし、「湘南マリリンさん」が撮影した富良野や美瑛の風景をネットで眺めているうちに、どういうわけかどうしてもこの眼で確かめてみたいという衝動にかられた。
特に美瑛の丘は、僕にとっては永遠の恋人のような存在を感じた。もちろん、「片思い」であるが。
美瑛の丘をこの眼で眺めてみたいと思ったきっかけは、7年くらい前に購入したCDアルバムのジャケットを眼にしたときであった。ジョージ・ウィンストンが所属するウィンダムヒル・レーベルのベスト盤だったが、そのジャケット写真が美瑛の丘であった。
紫色と小麦色に染まった丘、並木と青い空と白い雲との光景であるが、そのバランスのとれた美しさに動揺し、いつかこの眼で実際に見てみたいとそのとき思った。しかし、この光景が美瑛のどこにあるのかもわからないので、行き当たりばったりの旅になるような予感がする。
富良野と美瑛の旅は、メインコースとして「湘南マリリンさん」が撮影した被写体を辿ってみたいと思う。「手付かずの自然」ではないけれど、北海道人が北海道らしさを辿る旅もまたおもしろそうな気がしてならない。
稚内から旭川までは約260キロなので、富良野や美瑛までは300キロくらい、クルマで約5時間程度だろう。
今年はもう雪がちらつく時期となったのであきらめたが、来年はと今から頭にその光景を描いている。
片思いだった美瑛の丘を、朝から晩まで、一日じゅう眺めていたい。
「湘南マリリンさん」にそう話したら、
『私も一緒に眺めてみたい。いいよね、エジちゃん。』
もちろん、いいに決まっている。
ただ、僕も彼女も家庭をそれぞれ持っているので、今回のように、ネット上で一緒に眺めることにしよう。
でも、僕のクルマでツアーというのもいいかも。セダンなので5人で巡る旅も洒落ている。旭川空港到着から発生するツアーで、先着4名限定で企画してみようかなと、真剣に思った。
みんなで弁当を広げて、ずっとその風景を眺めていたら、「なんだ、なんだ。」とギャラリーが増えてくるかもしれないしね。
できれば、ジョージ・ウィンストンの曲が一緒だと、なおベターだ。
来年の夏が楽しみだ。
「夏の富良野や美瑛は、クルマが『数珠繋ぎ状態』なんで、運転は大変ですよ。それに、ホテルやペンションもビッシリだから、旭川市内のビジネスホテルのほうが賢明ですよ。」
と、後輩からアドバイスをいただいた。
現実は非常に厳しいようであるが、こちらは急ぐ旅ではないし、時間を気にすることもないので、弁当持参で、朝一番で行くことにしよう。
そう考えていると、なんだかワクワクしてきたぞ。
来年は、行くところがいっぱいあって、楽しみな一年になりそうだ。