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ひとりおもふ
幻の「キラク」
  勝利の女神は、ニッポンに微笑んでくれなかった。

 
ワールドカップで勝つことの難しさをあらためて教えさせられた試合だったのかもしれない。

 くよくよしてもはじまらない。
 
「たら」「れば」を論じてみても、勝負ごとは結果がすべてである。

 サムライブルーの戦士たちは、ほとんどの選手がヨーロッパの各リーグでプレーするオーストラリア相手によくやったと思う。
 当然のごとく、次のクロアチア戦は全力でぶつかるしかない。そう信じて、スイッチを切り替えなければいけない。

 負けたという悔しさを味わうのは今はじまったことではない。
 
スタンドで、あるいはテレビで観戦した我々日本国民がうなだれて落胆している以上に、サムライブルーは精神的に落ち込んでいると思う。
 今、選手やジーコ監督をはじめとするコーチングスタッフをヤジるよりは、次の試合に向けて前向きにフォローしていくべきだと思う。
 
「次は絶対に勝つ」と、信じるしかない。

 また、朝からマスコミはうるさすぎるほど騒ぐことだろう。
 誰が悪かったとか、何故シュートしないんだとか、出すぎじゃないのかとか、挙句の果ては、監督の采配が悪いとか、選手交替のタイミングが悪いとか。

 そんな話はもう聞きあきたし、「じゃあ、おまえがプレーしてみろよ!」と、テレビに向かって言いたくなる。
 オリンピックにしろ、何にしろ、ちょっと加熱すぎるのではないだろうか。

 この試合を観て、マスコミ以上に言いたいことはたくさんある。
 でも、それは試合した選手たちが一番わかっていることだと思うから、今はあえて言わないことにしたい。

 試合後の深夜、「湘南マリリン」さんと電話でお話しした。
 母の日に、息子さんからサムライブルーの背番号「22」のユニフォームをプレゼントされて、それを着用してのテレビ応援。

 1−0で前半を終了して、ハーフタイムにメールが入った。

 「大丈夫、勝つから、絶対に!」

 そして、最後の最後に逆転されて、試合終了。

 「すごいショック、放心状態・・・」

 この短いメールがすべてだった。
 
応援していた日本国民のほとんどがそう思ったにちがいない。

 「しかたねえよ、いつものパターンなんだから。だから、チャンスのときに確実に点を取っておかないと、このパターンはいつまでも続くよ。ゴン(中山雅史)のように泥臭くてもいいんだ。かっこつけなくてもいいんだ。1点は1点なんだから。巻を出してほしかった。ゴンの後継者だからね。でもさ、中澤や宮本はよくやったよ。世界レベルのディフェンスだった。それだけが救いだったような気がするよ。」

 「あたしも同感。ディフェンスは良かったと思う。川口は出すぎかなあ。でも、すごいショック。このままじゃ寝られないよ。」

 「川口は、調子いいときはいつも前にでるからしかたねえよ。彼のクセだからね。でも、彼の好セーブがなかったら、5−0くらいで完敗だったよ。だから、いちがいに責められないよ。」

 「明日の仕事に影響しそうだから、はやく気持ちを切り替えなきゃと思うんだけどねえ・・・」

 「一番ゆるせねえヤツがいる。試合が終わって、ユニフォーム交換したヤツら。誰とは言わねえけど、何、考えてんだよ! 悔しくねえのかよ。ったく。、そんなことすんなって!」

 この調子で、延々30分くらい続いた。
 そのあと、これを書いている。
 もう寝よう。

 明日起きるのが非常につらい。
 それは睡眠不足ということからではなく、「負けた」という現実を再確認しなければならないという自分の気持ちに対して整理をつけたくないだけのこと。

 次は勝つ! 絶対に勝つ!
 がんばれ! サムライブルーの戦士たち!