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ひとりおもふ
幻の「キラク」

  5月31日の早朝、「寝ぼけまなこ」でドイツ戦をテレビ観戦した。

 サッカー・ワールドカップ・ドイツ大会直前の親善試合の相手ドイツは、開催国であるとともに優勝候補にも掲げられている強豪。現在の日本の戦力を確かめるうえで、このあとのマルタ戦も含めて非常に重要な試合である。

 ジーコは、選手へ自信を植え付けるために「勝利」にこだわるのか、それともあくまでも調整ということでオフェンス・ディフェンスを最終確認するのか、それが注目される一戦でもあった。

 結果は、2対2のドロー。

 たしかに勝てた試合だったかもしれないが、ジーコは「勝利」よりも戦術のチェックを重要視したように僕は思えた。

 試合後にヒデが話していたが、収穫がかなりあった反面、セットプレーから2点も失った展開が反省材料となったことも見逃すことはできないだろう。

 たしかに2点目の失点は、ゴール前での空中接近戦でのポジション取りのほかに、相手のパワープレイを食い止められない「体型のひ弱さ」が大きな要因だったであろうが、このウィークポイントは今始まったことではなく、サッカー以外のスポーツでも見受けられる日本人を含めた東洋人の悲しい「性(さが)」なのであろう。

 だが、日本代表の体格は昔から比べればたしかに大柄になっているし、「しゅんすけ」(中村俊輔)を例にとれば、Jリーグでプレイしていたころとヨーロッパへ渡った現在とでは「当たり負け度」は全然違っている。これは、「ヒデ」(中田英寿)ら「海外組」にも言えることである。

 有能な選手が海外のクラブチームへ挑戦することで、東洋人のウィークポイントである「体型のひ弱さ」が徐々に解消されつつあると思うので、彼らの努力に惜しみない拍手を送りたいと思う。

 昨年、アジア地区予選を突破したときにヒデは、「1対1での場面で、その競い合いで負けないタフさや能力を身につけなければならない。」というようなことを話していたが、今回のドイツ戦を見た限り、それはほぼ達成されたのではないかと僕は思った。

 それにしても、高原はすごい! シュートがゴールに2度も突き刺さる光景に2度も興奮した。ちゃんと、「枠」を捉える日本人離れした力強いシュートだった。ドイツのブンデス・リーガで武者修行している成果が如実に表れたシーンであった。頼りにしているよ!

 そして、それをアシストした柳澤やしゅんすけのキラーパスも見逃せない。ちゃんと仕事しているんだなあと、これも感動ものだった。

 そういうことから、試合内容は誰が見ても濃いものであったと思うし、サッカー独特の目が離せないスリルからくる「ドキドキ・ワクワク感」というものを僕は久々に味わってしまった。

★★★★★

 今春、アメリカで開催された「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」では日本チームが優勝し、堂々の世界一となった。

 その余勢をかって、ワールドカップでも好成績をと、マスコミが騒ぎはじめた。

たしかに本大会予選リーグでは波に乗れず、かろうじて決勝トーナメントへ進んだ経緯があるので、決して楽な優勝ではなかったことは十分承知している。

が、ワールドカップもそんなに生易しいものではない。

 サッカーと野球の世界レベルの違いを、ここであえて言うものではないし、スポーツ通であればそれは「常識の範囲」なので、披露するつもりもない。

 昨年行われたアジア地区最終予選で、日本代表は同じグループのイランに苦戦し、本大会(ドイツ大会のこと)行きに黄色信号が点滅した経緯がある。

 2002年の日韓共同開催の大会はホスト国だったので、予選免除であったが、その前の大会、つまり、1998年のフランス大会への出場をかけたアジア地区最終予選でも切符を手に入れることができず、最後に残った切符1枚をやっとのことでゲットした経緯がある。これが「初出場」の切符だった。

 ワールドカップの本大会出場ということがいかに苦難の道であるかは、サッカーファンであればだれもが認識していることであり、言い換えれば、本大会に出場するということがどんなに名誉なことなのかも十分理解している。

 そのことを前提にすれば、本大会に出場してくる各国代表チームがいずれ劣らぬ世界レベルであることは言うまでもない。

 そして、選び抜かれた各国代表チームが4チームづつに分かれて戦う予選リーグで2位以内に入らないと、決勝トーナメントに進めない。

 日本代表チームが予選リーグで戦うのは、ブラジル、クロアチア、オーストラリアであり、勝負ごとは対戦してみなければわからないとは言え、ブラジルが抜き出ていて、そのあとにクロアチア、日本、オーストラリアの順に可能性があるだろう。

 日本代表チームが決勝トーナメントへ出場するための2位以内に残るには、最低条件である2勝が必要で、そのためにはオーストラリアとクロアチアに勝たなければならない図式が当てはまる。

 マスコミは、オーストラリアには勝てるが、クロアチアは良くて引き分けだろうと予想をしているようだ。
 が、これはとんでもない予想であると僕は思う。

 昨年のコンフェデ杯で、ブラジルと対戦して2対2で分けた経緯があるが、僕の性格からして、最悪のシナリオをいつも考えているので、予選リーグは次のとおり予想している。

 @オーストラリア  引き分け

 Aクロアチア    負け

 Bブラジル     負け

 従って、日本代表チームは決勝トーナメントへ進めず、ブラジルとクロアチアが進むことになるだろう。大胆かもしれないが、冷静に考えた結果である。

 しかし、この最悪の予想をくつがえしてほしい。僕はそう望んでいる。

★★★★★

 今回の日本代表チームは、今までのなかで一番強いことは間違いない事実である。だから、日本国中で応援が激しくなるだろう。それも初戦のオーストラリアに勝った場合は、もっとボルテージが上がるに違いない。

 6月は、すごい月になりそうな予感がする。

 4年前の日韓大会で国内が沸きに湧いて、ミーハーのおばちゃんたちまでがジャパンブルーのユニフォームを購入して着用して、そして、テレビの前で発狂した光景が、また、よみがえりそうな気がする。

 サッカーのおもしろさを、また、日本国中で堪能してほしい。

 そのために、がんばれ! サムライ・ブルーの戦士たち!