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ひとりおもふ
宇宙の法則
 「冬のソナタ」がブレイクして韓国ブームが巻き起こり、韓国へ旅行する日本人女性がうなぎのぼりだそうである。「冬ソナ」に主演した「ヨン様」ことペ・ヨンジュンが来日すると、成田空港は全国から集結した女性ファンで埋め尽くされた。

 来日中はどこへ行っても女性ファンが大勢で追っかけし、それが連日のニュースで大きく取り上げられた。あげくの果てにはケガ人まで出て、ついにここまできたかと、個人的にはただ苦笑するばかりであった。

 「ヨン様」ファンの多くは40代の女性層だそうで、マスコミは彼女らの亭主族がその「追っかけ」ぶりをどう思っているのかと「逆なで」し、それに対して亭主族は「一種の『ヨンフルエンザ』ですので、ご勝手にどうぞ。」と冷ややかというか至極冷静であった。

 幸いなことに我が女房殿は全然興味がなく、「はまった」友人らがやれDVDを買ったとか、再放送を録画したとかのメールや電話がきても、当人は何年も前からSMAPの「キムタク」ファンなので、「何がいいのかさっぱりわからない。」と話す。

 僕にすれば「ヨン様」も「キムタク」も「五十歩百歩」だと思うが、我が家の食卓が韓国ブームでないだけまだ良いのかもしれない。

 ここで整理しておくが、女房殿が説明するには、「ヨン様」ファンと「冬ソナ」ファンとは別なのだそうである。

 「冬ソナ」に「はまった」人はストーリーにはまったそうで、別に「ヨン様」が好きということでもないらしい。

 ただ、「冬ソナ」も「ヨン様」も両方好きになってしまった方も多いというが、「ヨン様」は公式HPがハッカーにやられて閉鎖したとかで、大変な社会現象となっていることを実感させられる事件でもあった。

 さて、何故、「冬ソナ」が大爆発したのだろうかという疑問がある。最近ではBSで「完全版」なるものが放映されているが、実のところ、僕は「冬ソナ」を見たことがない。

 知人の話やコラムなどでは、ストーリーはちょうど25年くらい前に日本で大ヒットとなった山口百恵主演の「赤シリーズ」に似ているという。

 実は、僕はこの「赤シリーズ」なるものも見ていないが、つまり、現実ではまずありえないが、あってほしかったというストーリーなのだそうである。

 恋人が死んでしまうが、そのあとに瓜二つの別人が目の前に突然現れるとかの現実ではありえない衝撃的なストーリーのオンパレードなのだそうである。

 こういうストーリーと言えば思い出すのが三浦綾子原作で旭川を舞台にした「氷点」がある。「実は・・・なのであった。」という内容は、読んでいくうちにいろいろな次の想像シーンが脳裏をかけめぐっていく。

 「冬ソナ」もおそらくそういう展開なのであろう。

 そして、そのパターンをコピーしてプラス韓国の景色の良い場所での叙景と、雪にマッチしたピアノソロの切ない叙情とが、「赤シリーズ」で衝撃を受けた当時20代の女性層に見事によみがえって、火がついたということらしい、のだ。

 そして、日本人男性諸君が忘れてしまった「女性へのやさしさ」と「純愛」とがこのドラマにあるという。

 純粋な愛を映像化しているためキスシーンもほとんどなく、あっても「おでこにチュー」程度だということで、その映像がかえって新鮮に見えるのかもしれない。

 また、日本のドラマは1時間もので12話終了のパターンが多いのにくらべて、「冬ソナ」はその倍近くあるため、ゆっくりと時間をかけてストーリーが展開されたこともプラスになっているようだ。

 なるほど、今の日本のドラマでは考えられない要素がぎっしりとつまっている感じがするので、大ブレイクとなった理由がわかるような気がする。

 ひとつふれてみたいことがある。

 「ヨン様」の笑顔にイチコロの女性陣には大変申し訳ないが、この微笑を一層ひきたてているあの白い歯が僕は気になっていて、ひと昔のCM「芸能人は歯がいのち」をついつい思い出してしまう。

 白い歯は清潔感をひきたてる要素でもあるが、どうもあの白い歯は同性とはいえ、思わずひいてしまう。

 ファンの皆さん、ごめんなさい。

 でも、あの白い歯に匹敵する日本人といえば、プロ野球「北海道日本ハムファイターズ」の「SHINJO」しかいないか。

 ついでと言ったら失礼だが、「ヨン様」ファンの年代層には、昔のいわゆる「御三家」である「郷ひろみ」「西条秀樹」「野口五郎」の「追っかけ」をしていた方も多いらしい。

 だが、その当時アイドルの「追っかけ」をしていなかった「ヨン様」ファンが「追っかけ」のルールもわからないで夢中になった果ての事件だったという分析もなされており、ケガした方々にはお気の毒としか言いようがない。

 「韓流ブーム」は、ある種の社会現象であると受け止められており、最初は「ヨン様」の来日でキャーキャー騒ぐ女性陣を「いじらしい」と思っていたのだが、このごろは「おいおい、気は確かかよ。」と少々気になっている。

 というのは、美顔の「ヨン様」にあこがれて、韓国人男性とお付き合いをしたいとか結婚したいとか熱望する女性が増えているというマスコミ報道を知ってからである。

 究極は、韓国人男性と結婚したい、それも「ヨン様」似の甘いマスクが条件という日本人女性が韓国で開かれた集団お見合いに出席したことが某テレビ番組で取り上げられたこと。

 「ヨン様」似の甘いマスクの韓国人男性をゲットしようと懸命だったものの不発に終わったのだが、その集団お見合いを取材していた韓国テレビ局スタッフに「ヨン様」似の男性がいたため、今度はその彼にお付き合いをアピールしたのである。

 これも結局は不発に終わったのだが、たしかに恋愛は個人の自由であるものの、番組を見ていてなんだか情けないというか彼女が哀れに思えてきた。

 要するに、韓国人男性には日本人男性にない「やさしさとたくましさがある」ということらしいが、韓国では整形があたりまえであり、なかには親同伴で子供が整形しているという話を彼女は知っているのだろうか。

 日本でもアイドルや歌手、一般の人たちもプチ整形している時代なのでとやかくは言えないが、こうして人造された美顔の整形人間が多くなっていることを念頭において、「こんなはずじゃなかった」と後悔のない自由な恋愛をしていただきたいと願っている。

 さて、話は元に戻り、女房殿の周囲では「冬ソナ」にはまったという女性が多いことを冒頭でふれたが、彼女たちが韓国ツアーやDVDや写真集などを購入する費用のことを「ヨンゲル係数」と呼ぶそうだ(育児費用のことを「エンジェル係数」と呼んでいるが)。

 その購買力が経済効果を生んでいることは指標に顕著に示されているという事実は、これこそ「おそろしや、○○パワー」である。

 世の亭主族が、少ない小遣いで居酒屋か焼き鳥屋で安い焼酎や発泡酒でほろ酔いしながら、

 「うちのワイフが、とうとう『ヨン様』の写真集を買ってしまったよ。」
 「そうか、お宅も買ったか。うちなんて、今度韓国旅行するってさ。」
 「はやく、覚めてほしいよな。」
 「・・・ったく。」

というような会話をしているとも知らずに・・・。