シルエット・ロマンス
ひとりおもふ
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 『温泉付きマンションっていいですよね。蛇口ひねると温泉がでてくるんでしょ。』

 『いやいや、温泉は1階に共同であるんですよ。各部屋には普通のユニットバスとシャワーのみ。もちろん、水道水です。』

 温泉付きというイメージが、どうも部屋単位に温泉が供給されているようなものになっているようだ。

 『ああ、そうでしたか。その共同温泉の浴槽は広いんですか。』

 『足を伸ばした状態で10人は入れますね。』

 『湯加減はちょうどいいんですか。』

 『かなり熱めですね。45度から46度かな。』

 『へえ、普通は熱くても43度だから、やけどしそうですね。』

 『慣れますよ。』

 各部屋の風呂設備はガスで湯を沸かす当たり前のシステムなのだが、入居している方々の多くというかほとんどがその共同温泉を利用しているので、各部屋で入浴するというのはごく稀れのケースだろうと想像できる。

 今年の4月下旬に入居したのだが、半年経過して一度も自分のユニットバスとシャワーを使用したことがない。浴室は、いわば「物置状態」となっているのだ。

 それはそうだ。

 エレベータで1階へ降りれば、そこには24時間営業の天然温泉があるのだから、いちいちお湯を浴槽に張ることはナンセンスというもの。

 24時間営業の天然温泉は、午前中の清掃時間帯を除き、基本的にはいつでも利用可能であり、ユニットバスの足が伸ばせないストレスがたまりそうな状況の自分の風呂をあえて利用する理由が見当たらない。

 それに、自分の風呂を使用するということになれば、湯沸かしのガス代や水道料がかかる。

 共同温泉は「供用費」という名目に、施設維持・清掃料などの料金が組み入れられていて、それも定額料金なので全然気にならない。

 むしろ、共同温泉を利用したほうがお得という感がある。

 だから、7月のガス代がわずかの2,000円台に、思わず「シメシメ」と。

 また、6月に入って、「朝ぶろ」というのを覚えた。

 朝5時半に起床して、温泉に入る。

 う〜ん、これこそストレスのたまらない一日のはじまりなのだ。

 もちろん、就寝前も温泉に入ることは、いうもでもない。

                          ★★★★★

 対アルゼンチン、対韓国との国際親善試合をテレビ観戦して、サッカー日本代表は確実に強くなっていると感じた。

 今年の6月に南アフリカで開催されたワールドカップでは、グループ戦で準優勝のオランダには負けたものの、カメルーンとデンマークに快勝し、決勝トーナメントの「ベスト16」にまで進出したが、特にデンマークkに勝ったということに、今回は大きな意義があったと思う。

 10回試合して、良くて2勝8敗と思わる強豪デンマークに、それもワールドカップで勝ったということは歴史的快挙と、僕なりに思っている。

 デンマークだって、日本に勝てば決勝トーナメントに進出できるわけだから「消化試合」でなく、国の威信をかけた試合でもあったろうから、負けたときのショックは計り知れないものがあったと察する。

 ベスト8をかけたパラグライ戦は、これも勝ち目はほとんどないほどの「古豪」だったものの、結局は延長でも決着がつかず、PK戦までもつれこみ、残念ながら負けてしまったが、監督をはじめ選手・スタッフは胸を張って帰国できたことは言うまでもない。

 ワールドカップでの戦績が自信につながったのかどうかはわからないが、イタリアから新しい監督を招へいして、4年後のワールドカップを目指した新生ジャパンは船出した。

 その初戦がアルゼンチンで、2〜3年前の日本の実力であれば、「お願いします。ぜひ、対戦してください。」の世界だったろうが、やっぱりデンマークやカメルーンを撃破したという実績がものを言ったのであろう。

 アルゼンチンも決して「手を抜いた」わけではないが、新監督が決まっていない暫定スタッフであることから攻守がちぐはぐであったことは、素人目からもよ〜く理解することができた。

 もう一方の韓国も今までの日本とは違う戦術に戸惑い、最後まで安定性を欠いた試合内容だった。

 もちろん、新監督の「ザック」ことザッケローニの指導が適切だったのかもしれないが、一番の理由はワールドカップ後にヨーロッパのリーグ戦へ挑戦した若きジャパンの存在であろうと、僕は思う。

 松井や本田はともかく、香川と長友がたくましく見えた。

 4年前のドイツ大会の予選グループで1勝もできずに惨敗し、試合後にピッチから起き上がらなかった中田の姿が脳裏をかすめる。

 『問題は1対1の局面です。この局面で対等になれないと・・・。これが日本の課題です。』

 組織で守る、組織で攻めるということは団体競技の基本だが、マクロで観た場合の1対1の局面で、どういう守りができるのか、どういう攻めができるのか。

 ずっと観ていて、しまいにはテレビ画面に怒鳴ってしまったあの「どうぞシュートしてくださいパス」が死後となっている。

 本田、香川、そして松井や長友が相手守備をくずして突破する姿に、今は楽しく酔うことができる。

 すごい収穫だと、僕は思う。

 世界へ挑戦することによって、日々たくましくなっていく日本代表の今後が非常に楽しみである。