日本は、安全と水は「タダ」と言われていた時代があった。
安全保障については今さら書くことはないので、今回は「水」について書いてみることにしたい。
函館に住んでいると、水道水をそのまま飲んでも、全然苦にならない。
過去に、函館の水道水を缶詰にして販売されてほどで、そのおいしさは折り紙付きである。
北海道各都市の水道水は、それぞれに特色があるものの、地形的にもやはりおいしい条件がそろっているのではないかと思う。
「地形的」とはずいぶんと抽象的な表現であるが、要は「雪解け水の恩恵」とでも言うのだろうか、そういった自然の地下水のミネラルが含まれているからなのだろうと思う。
室蘭に住んでいたころだから、娘が生まれた1986年前後、僕は時間を見つけては「蝦夷富士」と呼ばれる「羊締山(ようていざん)」の麓にある「京極(きょうごく)町」というところの「吹き出し公園」へ水を汲みに行った。
その公園には、羊締山から流れてくる雪解け水を汲める施設があって、ポリタンクを2つくらい用意して持ち帰っていた。
当時から、かなり有名な天然水だったので、時間によっては行列までできるほどの知名度があった。
どれだけその水質が良かったのかどうかわからないが、そのそばにはあの「森下仁丹」の水を汲む施設があったことから、きっと良質だったのだろうと思う。
たしかにおいしかった。
その汲んできた水でコーヒーを沸かすと最高においしかったし、氷にしてウィスキーなんぞ飲んでみると、また格別だった。
その後、僕は北海道内をジプシーのように転勤することになり、苫小牧、札幌、函館、根室、そして稚内と「旅の人」状態となった。
その転勤した場所のなかで、一番不思議だったのが根室だった。
何が不思議かというと、根室というマチの周辺には山がないので、水道水をいったいどこから供給しているのだろうという疑問があったからだ。
それまでの転勤人生で得た知識によれば、水道水は近くの山麓にダムがあって、そこから水道管を通して蛇口に供給されるという「しくみ」であるから、根室での疑問が全く発生していなかった。
函 館 ・・・ 赤川水源地と新中野ダム
室 蘭 ・・・ 室蘭岳水源地
苫小牧 ・・・ 支笏湖水源地
札 幌 ・・・ 豊平峡ダム
根室に住んでから知り合った地元の人に、その疑問をぶつけてみた。
『納沙布(のさっぷ)岬へ行く途中によ、沼みたいなところあるべ。それが根室の水ガメなんだよ。』
『それじゃあ、ダムはないの。』
『山がねえもの、どうやってダムつくるんだよ。』
さっそく、その「沼みたいな」ところへ行ってみた。
あった。これが根室の水ガメか。
でも、次の瞬間、おそろしくなった。
カラスから渡り鳥まで水浴びしているじゃないか!
『大丈夫ですよ。ちゃんと飲料水として手を加えて供給していますから。』
飲み屋で仲良しとなった市役所の知人が、そう説明してくれたものの、不気味さは住んでいた2年間隣り合わせだった。
そんなことがあってから、地方へ出張するたびに、そのマチの水道水がどのようなかたちで供給されているのか興味を持つようになった。
それと、そのマチの水道水の「おいしさ度」というか、まともに飲めるかどうかについても興味を持つようになり、ビジネスホテルなどで必ず口に含ませてみたいりすることもした。
北海道は水質やおいしさでは群を抜いていると思う。
娘が住んでいた相模原も、関東では比較的おいしい水道水に恵まれていると思う。
もちろん浄水器を利用していたので、それなりのおいしさが保証されているのだろうが、加えて、都内や横浜と比較すれば相模原は、断然、田舎の部類に入るはずだからかもしれない。
でも、もしかしたら、札幌の水道水よりもおいしいのではないだろうか。
都内に住んでいる親戚や知人が口をそろえて言うことは、とにかく水道水は「ストレート」では飲まれないということ。
炊飯用にも適さないということなので、やっぱり浄水器がフル活動することになるのだろうが、ペットボトルで水を買うというのがいっそう身近になるのかなと思ったりする。
だが、僕にしてみれば、根本的に水道水がそのまま飲まれないということに対して何故疑問を持たないのだろうかという疑問がある。
★★★★★
「麦飯石(ばくはんせき)」という「石薬」がある。
正式には、「花崗斑岩(かこうはんがん)」という鉱物だそうで、その形状が麦飯のおにぎりに似ていることから「麦飯石」と呼ばれるようになったとのこと。
中国で漢方薬として古くから使用されていて、皮膚病や解毒などに薬効があるとされていることから、飲み薬や塗り薬として用いられているらしい。
水道水の中に、その「麦飯石」を入れて飲用している後輩がいる。
仕事机にその「飲み水」がサーバーに入れられ、置かれているのを偶然見つけた。
はじめは飲用だとは思わず、金魚でも飼っているのかと思い、
『金魚を飼うにしては、変な容器だね。』
『違いますよぉ、これは「麦飯石」の入った飲料水ですよ。』
『ナニ、その「バクハンセキ」って。』
「麦飯石」は、岐阜山中で偶然に発見されたそうで、岐阜の大学教授が分析した結果を世に出したところ大反響となったそうだ。
麦飯石を入れた水を何年もほったらかした状態で、その教授自ら「試飲」したが何も異常はなかったとのことであったが、その「麦飯石」が入った飲料水を僕はとてもじゃないが飲んでみようという「勇気」は、残念ながらなかったことは言うまでもない。
関東ならまだしも、北海道ではほとんど不要だろう。
後輩には悪いが、水はフレッシュなものほどうまいに決まっている。