シルエット・ロマンス
ひとりおもふ
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 アメリカの証券会社破綻から始まった経済恐慌の嵐が、日本へ押し寄せてくることは時間の問題だったが、円高の加速も最悪の状況を招き、派遣社員の大幅削減から正社員の解雇に至るまで、12月は大荒れ状態だった。

 ニュース報道では、首相がハローワークを電撃訪問し、職探しの若者と対話している映像が配信されたが、彼が置かれている状況を全く察知していないのではないかと思われる首相の問いかけに唖然としてしまったのは僕だけだったろうか。

 『どういう仕事をしたいか、その目的をちゃんと持って仕事を決めないと。』

 案の定、職探し中の女性がバッサリと切り捨てた「言い分」のほうが燦然と輝いていた。

 『わたしたちは、何でもいいから仕事が欲しいのよ。食べていくために、だから、こうして足を運んでいるんじゃないの。首相がこんなんじゃ、この先どうなるのかしら。』

 ローカル番組のテレビでは、某コメンテーターが、首相がボーナスを400万円ももらっているのなら、リストラされた派遣社員へ還元すべきではないか旨のわけのわからない発言を繰り返していたが、「そういう次元のことかよ。」と、僕は不快感を覚えた。

 仮に、回収したカネをどのような手順でそのリストラされた派遣社員へ還元するのか。

 また、首相以外の閣僚、公務員のどこまでを対象とするのか。

 すでに支給されているボーナスは、ローン等の返済に振替されるケースが多いので、それをどのように回収するのか。

 回収される側に対して、ちゃんとした説明ができるのか。

 感情論ではなくて、そもそも論として、そういうやり方がはたして正しいのだろうか。

 そういったいろんな問題をちゃんと整理したうえでコメントしてほしい。

 リップサービスなら、サルにでもできるぞ。

 コメントするなら、もっと勉強してくれないと。

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 少し前に「姉歯事件」があった。

 事件が明るみとなるにつれて、建設業界に激震が走った。

 そして、規制緩和されてすっかりスリム化された住宅工事許認可のお役所仕事がセオリーどおりの姿に戻されたとたん、住宅着工の遅延がクローズアップされるかたちとなった。

 規制緩和してお役人を削減したはずなのに、それを再びお役人がすることとなったので、絶対数が不足してしまい、着工できないという皮肉な結果となってしまったらしい。

 だから、今年は建設業界でバタバタ倒れる会社が多いと予測された。

 実際、僕の知人である岐阜の建設関係の会社社長が、昨年11月に社員旅行で函館を訪れたときに、こう漏らした。

『社員旅行もこれで最後だよ。来年はどなることやら。・・・姉歯さえなかったらこういうことにならなかったんだよなあ。』

彼が言うには、建設業界というのは「裾野」が広いので、いろんな職種に波及すると。

 考えてみれば、そのとおりだと思った。

 「家」を造るには「器」だけでなく、設備機器から電化製品、水回り・ガス関連機器、家具、カーペット等が調達されることになるから、そこまで影響が及んでくる。

 それから、あの小麦価格の暴騰が発端で、パンやめん類等の「製品」が一斉に値上げされたときも、何でこんなものがまで値上げになるのという思いも記憶に新しいし、あの異常とも思えた原油価格の極端な暴騰では、クルマ業界のほかにレジャー業界までが大打撃を受けることとなった。

 だが、今回のこの経済恐慌は、これからが本番だと言われており、年明けからものすごいことが起きそうな気配がしはじめている。

 トヨタをはじめとする自動車業界からソニーの家電業界は、いわば「輸出産業の花形」であるから、貿易立国のニッポンはお客のアメリカに買ってもらうことでドル稼ぎをしていた。

 そのアメリカが大恐慌となり、失業者があふれている状況にあるという。

 もっと詳しく言えば、アメリカでクルマが売れていた理由は、住宅バブルが影響していたとのこと。

 つまり、偉い先生がおっしゃるには、購入した住宅を担保に自動車ローンを組むという構図であるとのこと。

 アメリカの経済の仕組みが良くわからないが、住宅価格が値上がりして金利が低下すると、住宅ローンを借り替えることによって「利ざや」が発生するということになるらしい。

 その「利ざや」でクルマを購入していたということ。

 これが住宅バブルということらしいが、失業者があふれることにより、住宅需要が大幅に減少する。

 当然、住宅価格が下落していくわけだから、「利ざや」が発生しなくなる。

 そうなると、クルマを購入するカネが存在しなくなる。

 故障が少なく、アフターサービスが売り物の日本車でさえも売れなくなる時代に突入すれば、ご当地の「ビッグ3」のクルマはほとんど売れなくなるはずで、だから、高常生産をストップせざると得ない状況に追い込まれるわけである。

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 やがて、2009年が始まるが、いったいどんな年になるのだろう。

 湘南マリリンさんいわく、

 『なんだか、ホームレスが増えているような気がする。』

 戦後、オイルショックやバブル崩壊という修羅場をくぐってきた日本経済が、また立ち向かわなければならない3度目の正念場がやってくることだろう。

 ただ、オイルショックやバブル崩壊時とは流通や雇用形態もかなり違っているので、困難さの度合いは全然違うだろうが、知恵を結集して是非とも回復してほしい願っている。