シルエット・ロマンス
ひとりおもふ
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 飽食時代が生んだ悲劇というのであろうか、「BSE」「鳥インフルエンザ」から始まって、「偽装牛肉」「偽装原産うなぎ」「汚染米」という言葉がニュースで取り上げられ、食の安全性が問われている。

 その言葉に、「中国製」という言葉もからんでいて、

 「中国」「偽装」

というだけで、ニュースソースが確立される世の中になってしまった。

 「中国産」は、もともとはあの「長ネギ」騒動に端を発していると記憶するが、食に関しては、「中国」という言葉はどうもイメージが良くないようである。

 「長ネギ」については、農薬が規定以上に使用されていたということなのだが、それ以降、「長ネギ」以外の「中国産」も敬遠される風潮となったのかもしれない。

 その中国では、「乳児用粉ミルク」でかなり大変なことになっており、それが我が国にまで飛び火していることから、最悪の場合、中国産食品の不買がかなりシビアな状態となっていく可能性も否定できない。

 事実、スーパーに並ぶ食品類のラップに、原産国や製造場所が「中国」と記載されているだけで、敬遠する空気が流れている。

 食に関してはこれだけにとどまらず、「船場吉兆」から古くは「雪印」まで、「不信」は「どうにもとまらない」状況なので、ほんとうに「リンダ、こまっちゃう」の世界になりつつある。

 「中国産」以外のこれら「国内の事件」は、モラルの低下がその最大の理由なのだろうと思うのだが、これに関しては僕が思うには、例の故田中角栄氏の「日本列島改造論」が引き金となっていると思われ、あのころから、日本人のモラルというものが崩壊してきたのではないのかと考えている。

 なんでもそうだが、悪いことをやってゼニ儲けしようと考えるヤツは、「ワル」の程度にもよるが、流通経路を複雑にして絶対に「バレない」ように手当している。

 だが、その多くは「内部告発」・・・いわゆる「チクリ」から暴かれているようである。

 チクった人は、会社から冷たい仕打ちをされたか、あるいは正義感からかのいずれかの理由によるものであろうが、内部告発することによって勤めている会社が倒れるご時世であるということを考慮すれば、正義感という理由からではなく、むしろ「仕返し」のほうが強いのではないかと思う。

★★★★★

 昔、テレビ朝日系で、同じ素材の食べ物を2つ食べさせて、どちらが高価でどちらが安価なものかを芸能人の「味覚」で判断させ、その結果でその芸能人を格付けするというユニークな番組があった。

 その芸能人が、どのような食生活をしているのかがわかるので、毎週楽しみにしていたのだが、アイマスクで目隠しをされた状態でほんとうに判断可能なのか疑問に思った。

 正解数によっては、最悪は「映す価値なし」なんていう処遇もあったが、おそらく半分以上は「ヤマ勘」だったにちがいないと思う。

 たしかに、例えば、普段から「松阪牛」とかの高級肉を食しているのであれば、それなりに味はわかるのだろうが、庶民の身分では、牛肉は「松阪牛」しか食べないというぜいたくは敵だ!状態だと思う。

 だから、逆に、普段はせいぜいグラム200円くらいの牛肉を食べている庶民が、生まれてはじめて「松阪牛」を食べたとき、いったいどんなリアクションをするのか興味がつきない。

 おそらくは、ほとんどの人たちが素直に「おいしい」と絶賛するだろうが、ごく一部の人たちは、「普段食べている肉のほうがクチに合っている。」と敬遠することも予想される。

 だが、それは、「これは松阪牛である。」とPRしたからわかるわけであって、全然PRしなかった場合、「おいしい」と絶賛した比率はおそらくは低下するだろうと思う。

 故に、食に対する「クチ」のいいかげんさが、実は前述の「偽装牛肉」事件へつながっていったのではないかと、僕は推察する。

 それから、「船場吉兆」は高級料亭ということで世間への示しがつかないのだろうが、庶民が利用するレストランでさえ昔から、「皿に添えられたパセリは食べるな」という「うわさ」があった。

 今はどうかわからないが、要するにその「再利用」は庶民の間では、ほぼ常識に近い「うわさ」だったわけであり、その「再利用」を高級料亭がやってしまった時点で自ら「のれん」にキズをつけたわけだから、信用失墜行為イコール廃業は当然の結果だったと思う。

 モラルの欠如というか、「品格」のウラに隠された「ゼニ儲け主義」がなんとも情けなく感じた。

★★★★★

 グルメ番組のなかで、僕が一番キライなのは、20代の女性リポーターがおいしい店を訪れ、実際に食する番組。

 理由は、普段はどんな食べ物を食しているのか全くどうでもいいような感じのする女性リポーターによる取材だからである。

 普段は、コンビニやファーストフード程度の「都会食」か、わけのわからない「ダイエット食」しかおそらく食べていないだろうと思われる彼女らに、その味や素材、鮮度の何がわかるというのだろう。

 そして、とどのつまりは、ありきたりの

 『おいしい〜!』

の連発か、グルメ番組で研究してきたような

 『お口に入れた瞬間に広がる食感が、なんとも言えなくて、・・・おいしい。』

のコメント。

 『普段、食ってもいねえのに、よくもまあそんなことが言えらあ〜!』

 「お嬢サマ」ならともかく、そんな感じには全然見えない人間のコメントを、いったい誰が本気にするかっつうの。

 それから、そういうグルメ番組のリポーターをやるのなら、そのまえに、

 『ハシの持ち方くらい、ちゃんとやれよ! ちゃんと!』

と、怒鳴る姿は、「テレビに因縁をつけるオヤジ」にしか見えない・・・