往年の名グループ「ザ・ベンチャーズ」が作曲してヒットした「北国の青い空」という名曲がある。
英語での曲名は、たしか「HOKKAIDO SKY」だったと思う。
ヒットしたのは、今から40年くらい前になるだろうか。
ベンチャーズが国内公演で北海道を訪れたとき、その青い空に感動して作曲したと言われている。
この曲に歌詞をつけて歌ったのが奥村チヨで、今は作曲家「浜圭介」夫人として、彼の故郷札幌に永住している。
北海道人からすれば、いつもの見慣れた青い空かもしれないが、北海道を訪れる人たちには、そのどこまでも澄んだ感動的な青い空なのかもしれない。
その北海道の青い空も、春夏秋冬の四季を通じてそれぞれ個性的な鮮やかさを増すのだが、やはり何と言っても夏の季節が一番似合うのではないかと、僕は思っている。
夏の北海道で、見上げればどこまでも広がる青い空。
その青い空を見上げるたび、北海道で生まれ育ったことに感謝している。
北海道人は、気持ちがおおらかで、少しくらいのことにクヨクヨしない。
純朴すぎる傾向があるので、どちらかというと騙されやすい。
でも、そんなことがどうでもよくなるような青い空。
騙すヤツは、騙せばいい。
そういうヤツは、北海道を訪れて、緑が広がる大地に寝転んで、澄み切った青い空を見上げたら、浅はかだったということを知り、きっと後悔するに違いないし、根っからの「ワル」であれば、北海道の神様がきっと天罰を下すであろう。
★★★★★
ふと、思うことがある。
空を見上げて、東西南北、そのどの方角が一番青いのだろうかと。
稚内に住んでいたころ、Kさんと電話でこういうやりとりをした。
『海ってさ、稚内に来て、南と北とでは青さが全然違うことに気付いたんだ。』
『それって、どういうこと?』
『つまり、南に面した海っていうのは、太陽の真下に位置しているから、日中はキラキラ光っているように見えて、その分、青さが少し薄いような気がするんだ。』
『なるほど。』
『つまり、太平洋側に面している海岸線の多くは南に海があるから、キラキラ光っているように見えるのがあたりまえだけど、日本海側やオホーツク海側では、逆に北に海があるから、太陽を背にしているような感じで見るから、光があまり反射していない。ということは、北に面しているほうが海の青さが一層濃いような気がするんだよ。』
『へえ〜、すごい発見じゃん。』
『稚内から眺める海って、青さが映える理由がそこにあるのかもしれないよね。』
では、空はどうなのだろうか。
空もやっぱり、北の方角が一番青いのではないだろうか。
空がやたら青いものだから、海もその青さを吸収して、それで果てしなく青いのだろう。
そんなこと思いながら、ふと見上げれば、ここ函館もやっぱり空は青かった。
良く晴れ渡った日曜の昼下がり。
僕は、例のキャンピング・チェアーに腰掛けて、缶ビールを片手に、そうして青い空を見上げている。
ギラギラと光り輝く太陽に目を細めながら、心地よいハマかぜに吹かれる。
『このまま、時が止まっていてほしい。』
ふと、そう思う。
現実を忘れられるようなこのひとときに、いつまでも浸っていたい。
見上げれば青い空。
北海道の青い空。
何だか、僕は、先を急ぎすぎているのかもしれない。