ひとりおもふ
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シルエット・ロマンス

 タイトルのとおり、今回は「いも」の話である。

 北海道人であれば、別に興味をひくような題材でもないが、

『それって、おもしろいじゃない。そういう話ってどんどん広げなきゃあ。』

と、ある女性から言われた。誰とはここで告白はしないが・・・。

 いもは、「さつまいも」と「じゃがいも」とに大別されるが、その「じゃがいも」も「男爵」と「メークイン」とに分けられ、品種改良が進み、「北あかり」や「インカのめざめ」などという種類も店頭に出回るようになった。

 「じゃがいも」は、正式には「ジャガタラいも」と言い、インドネシアのジャカルタの古名が「ジャガタラ」で、慶長年間にそのジャカルタより渡来したことから、ジャガタラいも・・・ジャガいもと呼ばれているらしい。

 『へえ〜、すごいじゃん。さすが、なんでも知っているエジちゃんなんだねえ。』

 「男爵いも」は、じゃがいもの代表的な品種であり、1908年にアイリッシュ・コブラーという品種を導入・栽培した川田男爵にちなんで命名された。

 その川田男爵がこの男爵いもを普及させたことはあまり知られていないが、函館市のお隣りのマチ「北斗(ほくと)市」の当別には、その「男爵記念館」が建立されている。

 というのも、高知県出身の川田龍吉男爵は、函館船渠会社の重役として横浜から函館(船に乗ってきたのかは知らない)に赴任し、郊外にある当別農場で、男爵いもを生産化させた張本人なので、函館ではチョー有名な男爵である。

ちなみに、そのすぐ近くには、ご存知「トラピスト男子修道院」がある。

 だが、北海道のどこででも生産されている男爵いものなかでの有名ブランドは、地元には残念であるが、羊蹄山(ようていざん)の麓にある「真狩村(まっかりむら)」産もの。

 真狩村と言えば、演歌歌手「細川たかし」の生まれたところで、冬は雪がたっぷり降るので、それでおいしい水を吸っておいしい男爵いもができあがるのだろう。

 一方、「メークイン」は、イギリスで作出、日本へは大正時代に導入・栽培されたが、煮くずれが少ないので料理用として最適だそうだ。

 このメークインの名産地が、「江差追分」で有名な江差(えさし)町へ向かう途中のマチ「厚沢部(あっさぶ)」というところ。

 厚沢部町産のメークインが何故有名ブランドなのかはわからないが、地元の方たちが言うには、それは「土」と「気候」なのだそうである。

 たしかに、火山帯からはずれているため「土」が黒いので、見た目は栄養がぎっしりと詰まっているようにも思える。

また、日本海に面する江差町からちょっとばかり引っ込んだところにある内陸部のマチなので、気候も適しているのだろう。

 カレーやシチューを作るとき、スーパーのじゃがいもコーナーで「厚沢部産」という表示が目に映ると、条件反射的に手が伸びて買い物かごにゲットされるくらいのおいしさがある。

 厚沢部のメークインは、北海道ではブランド品なのである。

 さて、男爵とメークインのどちらがおいしいかという究極の選択へストーリーが展開しそうになるが、そんなやぼったい話は、ここではあえて触れない。

 つまり、用途に応じて使い分けるのが一番であるという理由があるから。

 男爵は、どちらかと言えば「ふかして」バターや塩からをのせて食べたり、「肉じゃが」が一番似合っているし、メークインは、さきほども簡単に触れたカレーやシチューなどの「煮込み料理」にピッタリである。

 ただ、僕の好みを言えば、断然メークインであり、カレーやシチューにも使用するが、魚介類をベースとした「三平汁」「すりみ汁」にもピッタリなのである。

 「インカのめざめ」というすごいネイミングの品種もあるが、これは近年開発されたもので、黄色がかなり濃く、さつまいもに近い甘さが特色であるが、栽培がかなり難しく、生産量が少ないため、かなり「高価ないも」となっている。

 日本人の主食は「米」であるが、ヨーロッパ、特にゲルマンやスラブ民族は「じゃがいも」が主食である。

 いも料理というほどでもないが、ゲルマン国家であるドイツではスパイスやバターなどで食べているのだろうが、醤油などの調味料で味付けした料理を食させてみたら、いったいどう感じるのだろうかと興味が深い。

 つまり、日本での代表的いも料理の「肉じゃが」のことなのであるが、これを本場ドイツの人たちに食べさせてみたい。

 おまけに、函館人が好む「いかのしおから」を、あつあつのじゃがいもにのっけて食べさせてみたい。

 が、欧米では「しおから」は敬遠されるだろうから、実現は困難であろう。

 でも、日本的なじゃがいも料理にドイツ人がどういったリアクションをするのか、ほんとうに楽しみである。

★★★★★

 『うんうん、おもしろかったよ〜。エジちゃん、ありがとう! 次は「りんご」だねえ。西洋りんごの発祥地も函館なんだってね。これも広めなきゃあ。』

『・・・わかったよ。』