受けとめる相手の気持ちに関係なく、自分の思っていることをストレートに表現するのは非常に易しいことだが、逆にストレートに表現しないで、相手にそれとなく諭すのは非常に難しいことだ。
それとなく諭すことで、相手が理解してくれればそれにこしたことはないのだが、世の中、そんなにうまく行かないこともある。
特に、「わがまま」「身勝手」「ナルシスト」な相手であれば、諭すだけ骨折り損のくたびれもうけということになるだろう。
だったら、何も言わないほうがむしろ賢明なのかもしれないが、ただ、言ってくれなかった相手には非常にお気の毒な結果がその先で待ちうけている可能性が大きい。
さて、ここまで書いて僕が何を言いたいのだろうと、クビをかしげる方もおられるだろうが、要するに、それとなく諭しても相手がピンとこない場合は、むしろストレートに言ったほうがいいのだろうか、それともそれ以上言うのをやめるべきなのだろうかと、その分岐点のお話をこれからしたいのである。
ただ、こういった場合に、当事者であるその相手も傷つかずに円満に解決できる手立てがあるのであれば、それにこしたことはないと思うのだが。
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そのHPへ流れついたのは、去年の7月のこと。
構成されているテーマやその掲載写真を観て、かなりグラッとこころを動かされた。肩書きもかなり持っておられるようで、これは良識ある方なのだな、いい方にめぐり会えたなあと思った。
それで、迷わずBBSへ投稿した。
が、そのBBSは、BBSというよりはチャットにほとんど近かった。
新入りが書き込みしても、それを常連らしき者が無視して書き込んでくるので、新入りの僕は「蚊帳の外」へ追いやられるという苦い経験をいきなり味わうことになった。
つまり、僕の書き込みに主宰者の書き込みはあったものの連鎖書き込みはなく、新たに発生する主宰者や常連者の書き込みがだんだんとチャット化して、それに連鎖書き込みがどんどんされていくので、僕の書き込みは「孤島」のように取り残されていくというかたちとなって消滅していった。
僕は、自分が浮いていると感じた。
BBSに投稿して、初めて味わう「屈辱」だった。
で、僕はこの「屈辱」をこころにしまい込んで、主宰者に対してHPを観て素直に感銘を受けたこと、サロベツの自然をこれからも教えてほしい旨の「外交辞令的」な内容をメールして、BBSへの投稿をやめることにした。
その僕のメールに対して主宰者は、『忙しい身であり、メールでのやりとりはできないので、BBSへ直接書き込みしてほしい。また、サロベツの自然を貴方に手取り足取り教える時間がないので、私のHPを参考にして活動してほしい。』との回答だった。
おいおい、外交辞令なのに、そこまで言うか。
相手の気持ちを考えない身勝手な人なんだなと思うと、それまでの「屈辱」が一気に「怒り」へと変わった。同時に、自分が情けなくなった。
チェーンメール的な会話が延々とつながるので、主宰者あるいは常連者が手を差し伸べない限り、そのチャットに入り込むことはおそらく至難のわざであろう。
チャットをしたいのならBBSを止めて、いっそチャットにすればいいのに思った。
しかし、大人げないので、しばらく様子をみることにした。
9月に入って、怒りも少しは静まったというか、冷静を取り戻したので、久々にそのHPを覗いてみた。
すると、屈辱のはじまりであるそのBBSに、僕と同じように掲載写真に感銘を受けた方が、僕と同じような書き込みをしているのを見つけた。
だが、その書き込みも今度は無視された僕の場合と違って、常連者からおちょくられていたのだ。
つまり、すごくいい話なのに、それをある常連者がお笑いを誘う別の話へとすり替えてしまったのだ。
そして、一番悪いことに、主宰者がその「おちゃらけ」に乗っかってしまって、その美談が隅へとおいやられていたのだ。
僕は怒りをとおりこして、そのBBSへ参加している常連者と主宰者の人格を疑ったし、同時に、書き込んだ方の心情を察すると、とてもやるせない気持ちになってしまった。
HPでは中傷・誹謗は許されないことであり、それがあった場合は当然非難されることになるが、今回のこのようなケースはその中傷・誹謗にあてはまらないことだと思うので、非難の対象とはならないだろう。
しかしである。
HPを中傷・誹謗はしていないものの、少なくとも書き込みをした人のこころを傷つけていることは間違いないことだと思うのだ。
よっぽど、抗議の書き込みをしようかと思ったが、それはまがりなりにもHPを運営する主宰者に対して失礼であるし、僕が抗議しなくとも、主宰者も常連者も大人なんだから、それくらいのことはわかっていることだと怒りを静めた。
どんなにすばらしい肩書きがある方でも、人を傷つける行為をしてはいけないのは当然のことであるし、人を傷つけているのだと認識されているのであれば、それは直ちに正すべきである。主宰者として当然のことであるし、人間としてやってはいけないことだと誰もが思うはずである。
その後、僕は気になって、毎日のようにそのBBSを覗いてみたが、その美談を書き込みした方の書き込みはとうとうなかった。当たり前だと思った。
月日は流れて、11月になった。
僕は、したためていたあるテーマのエッセイを掲載するにあたり、書くきっかけとなったその主宰者へメールすることにした。
で、その前に、しばらくぶりでその方のHPへアクセスし、BBSを覗いてみた。
不愉快な思いをさせる常連者たちが、いつものようにああでもない、こうでもないと書き込みをしていた。新規参加者らしき方の書き込みは、当然のごとく見当たらなかった。当たり前だと思った。
このHP自体は、そのときもとても素晴らしいと思っていたので、「これからも素晴らしいサロベツを紹介してください。」と、全く義理の世界での内容だけにしようと思ったが、この間の「おちょくり」の皮肉を少し込めてメール送信した。「あれでは、投稿者がかわいそうです。」と。
メールが返信されてきた。
HPとは全然違う冷たい感じのする無機質なものだった。
そして、あきれたというか、本人がまだ気づいていないのかと情けなくなってしまうことが書かれていたし、僕が指摘した問題のBBSについては都合のいいように「無視」された。
『私が突き放したようなメールを書いたので、お怒りになって、それでBBSへ書き込みをしなくなったのだろうと思った。それから、貴方に言われるまでもなく、サロベツを紹介するのは私の務めだと思っています。』
それとなく諭そうとしたはずなのに、逆効果だったし、相手に対してこんなに失礼な言葉を並べたメールを送りつけてくるその人格にさらにあきれた。
そして、その程度の人間が主宰するHPだったのかと、自分のBBSが第三者的立場の方たちにどういうふうに映っているのか全然理解していない主宰者なのだなと思うと、何だかバカらしくなってしまった。
僕はそのメールを読んで、迷った。
『あなたのBBSへは、投稿したくても投稿できない雰囲気があります。それを主宰者であるあなたご自身が感じておられるとはとうてい思えない気がいたします。仮に感じておられるのであれば、すでに改善されているはずであります。あなたのHPへたどりつき、その掲載内容と掲載写真を拝見して、思わずそのBBSへ書き込みしたいと思っても、ごく一部の方かもしれませんが、その方たちの新規参入者に対する冷たい態度が改められない限り、僕のような思いをもって断念する方が、これからもけっこういらっしゃると思います。そういう方たちのためにも、BBSの運営を再考されてみてはいかがでしょうか。ただ、現状の同じ仲間とだけこれからもBBSをしていくのだということであれば、僕からは何も申し上げることはありませんし、仮にそういうお考えであれば、むしろ「新規参入者お断り」などの表示をされることが親切かと思われます。HPの内容がとても充実しておられるのに、非常に残念です。』
言いたかったことをはっきりと書くべきなのか、それともこのまま無視してシャットアウトすべきなのかと。
それで、僕は後者を選択した。
つまり、無視してシャットアウトした。
数あるHPのなかでも、こういうHPも現実に存在する。
僕は、このHPを「反面教師」として、僕のHPへネットサーフされる方々に対して、「優しいこころ」をもって接しようと決めた。
また、幸いかな、僕のBBSには「羽村ばぁばさん」や「かやぶきおじさん」をはじめとする「優しいこころ」の方々が書き込みしてくださっているので、非常にこころ強く思っている。