地上波テレビで、今の日本を象徴するようなニュースが二つ放送され、そのあまりにも違う環境に、現代社会の縮図を見たような気がした。
ひとつは、福田新首相が打ち出した「高齢者の医療費負担を凍結」。
もうひとつは、神田うののどうでもいい「6億円の結婚披露宴」。
ひとつめの高齢者の医療費負担が来年度から2割となる政策は、実のところ興味がなかった。
ほんとうは、ミャンマーで取材中、凶弾に倒れたジャーナリスト長井健司さんの葬儀の模様を見入っていたわけで、そのあとにこのニュースが流れたので、そのまま引き続き見入ることにしただけのことだった。
大阪に住む70すぎの女性が、国民年金で細々と暮らしているのだが、持病で4つの病院へ通院しているため、その医療費負担が1割から2割へ増となった場合、さらに現在2万円でやりくりしている食費を切り詰めるしかないという内容だった。
その女性が昼食を調理している光景が写されていた。
ワンルーム式公営住宅の薄暗い台所で調理をしているのだが、電気代節約のため蛍光灯をつけていないので、包丁さばきもぎこちなく見えた。
食費とガス代節約のため、いもとわかめの味噌汁を3日分まとめて作っているという。
昼食は、ごはんにその味噌汁のみ。
この質素な昼食を、さらにどうやって切り詰めるというのだろうか。
来年4月から実施される予定の負担増を凍結すると打ち出したものの、凍結という措置は、いずれは解凍されるわけで、時間の問題であることにまちがいはない、とニュース解説者が語っていた。
そんな社会の一面である悲しい現実を見入っていたら、とてもやりきれなくなってしまった。
こうやってその日その日を暮らしているお年寄りが、この国にいったいどのくらい住んでいるのだろうか。
そんないたたまれないニュースのあとに、もうひとつの「6億円の結婚披露宴」が報道された。
神田うのが結婚するのは別にどうってことないし、いつもなら、そのまま見過ごすようなニュースであるのだが、やりきれなさがまだ残っていた僕に、なおさら「油」を注いでしまった。
出席者777名には、6万円のフルコースのフレンチが供されたというし、ウェディングケーキから、ファッションショー、そして引き出物まで、豪華と表現するしかない内容だった。
この2つのニュースは、日本での出来事であり、現実である。
日本の貧富の差は、とうとうここまできてしまったのか、と思った。
子供の給食費を納入しないで、平気で暮らしている親たちがいる。
大学へ通う子息の小遣いが、月30万円という家庭が存在する。
郵政民営化で、年金をおろすのに隣の町までバスで行かなければならない老婆がいる。
セレブだとかと騒がれて、いっそう拍車をかけている「成金」たちがいる。
都会では、ホームレスの数が増加傾向にあるという。
いつから、日本はこうなってしまったのだろう。
発展途上国であれば、軍事クーデターが発生しても不思議でない状況だと思う。
日々生きていて、日本という国のたどり着く先が見えてきたような気がする。