ひとりおもふ
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シルエット・ロマンス

 アクアをはじめてから、かれこれもう4年目に突入している。

 アクアとは「アクアビクス」のことで、つまり、スタジオでの「エアロビクス」のプール版と表現したほうがわかりやすいだろう。

 現在、会員となっているスポーツジムでは、「アクアビクス」と「ウォーターエアロ」の使い分けをしているので、インストラクターにどう違うのかとたずねたところ、『おんなじです。』・・・。

 エアロビクスは、正直習いたいとは思わなかったし、今でも思わない。

 第一、あの狭いスタジオ内で、そのムンムンとした熱気と女性の強烈な香水臭のなかでの運動は、中年男性として非常に耐え切れないものがある。

 例えば、ラジオ体操のように青空の下でやるようなものであれば習ってみようと思うだろうが、鏡に囲まれたスタジオは、閉所恐怖症の自分にしてみれば生理的にも受け付けない。

 ストレスを発散しようとして、逆にストレスが倍返しになってきそうな気がする。

 それに、50代としては「まさか」の心配もしなくてならない。

 その「まさか」とは、関節痛や腰痛、それに腱痛のことであり、「昔取った杵柄(きねづか)」は体力の衰えとともに自然消滅している年代である。

 健康診断や人間ドックで「肥満」や「成人病」の指摘を受けて、手軽にできる歩行や軽いランニングを勧められて実行に移す人たちがいる。

 それが日常的な運動となり、本格的にランニングを始めたとたん、膝などの関節をおかしくさせてしまい、結局挫折の道を歩む人たちもなかにはいる。

 だって、それはランニングなどを始める前までは、運動らしい運動もしたことがないのだから、関節痛などになってしまってもおかしくはないことなのだと思う。

 だから、始める前と終わりには必ず準備運動やストレッチを取り入れることをお勧めしたい。

 しかし、アクアビクスの場合は水の中で身体を動かすので、疲労度はエアロビクスよりはあるものの、関節痛などの心配があまりなく、逆に水の抵抗で硬直する筋肉をほぐす「マッサージ効果」が期待できるらしい。

 それらの期待のほかに、最大のメリットがそこに加わる。

 つまり、アクアビクスのインストラクターの説明では、水温が体温や心拍数の上昇を防ぐので安心して運動できるというのだ。

 たしかにあれだけ激しい動きをしているので、プールから上がると疲労感が一気にやってくるものの、充実感はものすごく残る。

 「プールの上からアクアビクスを眺めているけど、すごい動きだよね。僕なんかやったら、5分くらいでギブ・アップだね。」

 「最初は、たしかについていけないかもしれないけど、やっていくうちに慣れてきますよ。」

 「いやあ、ついていけないわ、ぜったいに。それに天性の音楽オンチだし。」

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 運動に限らず何でもそうだと思うが、いわゆる「手抜き」も必要だと思う。

 僕ですら、そのときの体調に応じて「手抜き」をすることもある。反面、体調がベストのときは「完全燃焼」するが。

 また、メニューで「心拍数調整」を取り入れる時間帯を設けるインストラクターもいるし、そうでない場合もある。

 ただ、場数をこなしているインストラクターであれば、レッスン中に参加者を一人一人チェックしながらメニューを組み替えていく「ベテラン」もいるが、新人インストラクターだと、その余裕はない。

 インストラクターが話していたが、レッスンメニューは参加者のレベルに応じてプログラミング化しているそうで、レッスンが上級・中級・初級別に設定されていれば問題はないが、一同にレッスンということになると、そのレベルは一番下のつまり初級に合わせることになるという。

 となれば、初級者は問題ないが、中級・上級者には不満が残るレッスン内容となる。

 このことが一番厳しいようだが、スクール時間とインストラクター数を考慮すれば、ほとんどのスポーツクラブは「一同にレッスン」というかたちが多いらしく、歴史の浅いアクアビクスは特にその傾向にあるらしい。

 では、アクアに関して、上級・中級・初級というのは、どのくらいのレベルで違うのだろうか。

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 アクアビクスは、プール内で足をつけた状態で、音楽に合わせて身体を動かす運動であり、上級者も初級者も同じメニューでもこなせるのが基本だと思う。

 問題は、その動きの俊敏さや過激さであろう。

 室内などで身体を動かしても、自分の思ったとおり動かせるが、水中は水の抵抗があるので、腕ひとつ振ろうとしたって倍以上の力がいる。

だから、歩くことすらもままならない状態なのである。

 プールでウォーキングされている方を見ていて、簡単そうに思われる方がいるかもしれないが、下半身がしっかりしていなければ、まっすぐに歩けない。

室内などで、前に進まない状態での「はや走り」は簡単であるが、プール内では思うように動かないし、もちろん、腕も早く振れない。

 そういうことから、初級者はあまり無理をしない動きをすればいいだろうし、中・上級者は俊敏で指先まで力強い動きをすることによって目的は達成されるはずである。

 そのアクアの魅力にとりつかれると「病み付き」となってしまうので、慣れてくれば、女性のなかに男性が一人ぽつんといても、全然苦にならないし、「引け目」も感じなくなる。

 また、体力消耗度が著しいので、ダイエット目的の運動には最適だと思うし、前述のとおり、身体に負担がかからない。

 シンクロナイズドスイミングの選手たちは体格がよくて、高カロリーな食事をすることによって体力を維持しているという事実は、やっぱり水中での運動がかなりハードなのだという裏づけなのだと思う。

 スポーツはどれも言えることだが、アクアビクスは一度チャレンジしてみたら、きっとそのおもしろさが病み付きとなるだろう。

 僕の言葉を信じなさいって。