ひとりおもふ
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シルエット・ロマンス

 「さいはて稚内」のさわやかな夏を二度も体験したので、僕の身体は「極寒冷地仕様」となってしまったのであろう。

 北海道の人は本州の人よりも「毛穴」が小さいらしく、それは夏の気候がダントツに違うという理由かららしい。

 その北海道でも最北に位置する稚内だから、その「毛穴」がさらにもっと小さいのではないかと思えてくる。

 なにせ、最北の稚内から南端の函館までは距離にして約600キロあるわけだから、そんな感じがしてならない。

 今年のGW明けに、稚内市内のスーパーへ食料を買出しに行ったら、若い人たちが半そでで買い物をしていた。外の気温は、15℃もなかったはずだ。

 僕は決して寒がりでないが、長そでのトレーナーにジャンパースタイルだった。

 2年過ごした夏だって、気温が25℃を超える日はあんまりなかったと記憶するし、夏場の自動車運転では、エアコンのスイッチは「OFF」で、窓を開けて走行すればそれで足りていた。

 ただし、冬場は、釣り以外では着用しなかった「ももひき」の愛好者となってしまったように、極端な厚着をして、それで乗り切った。

 そういった2年を過ごしたので、函館へ戻ることとなったとき、若干の不安が脳裏を横切った。

 つまり、函館の夏を知っていたため、稚内での2年間の「極寒冷地仕様」体質で、その暑い夏を乗り切れるかどうかほんとうに心配だったのである。

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 75日に稚内を発って、2泊を女房殿の実家のある苫小牧で過ごし、7日夜に函館入りした。その夜は市内のビジネスホテルに投宿した。

 引越しの荷解きをしているときは、身体を常に動かしていたため、汗びっしょりになっていたので、やっぱり函館は暑いと思った。

 が、2日目くらいになると、いつもより寒いのではないかと思うようになった。

 今年6月の函館は猛暑だったそうで、7月になってから急に寒くなったとのこと。

職場では『誰かが稚内から寒さを手土産にしてきた。』といううわさが飛び交った。

『誰かって、このオレしかいないじゃん。』

 結局、7月は雨と寒さの連続だったので、「極寒冷地仕様」の僕にとっては「ありがたい気候」であったことは言うまでもない。

 8月に入ると、青空が広がらない曇り空の、今度は湿度が高いムシムシした日々が続いた。

 『もう夏は過ぎた。』という話が聞こえてくるようになり、1日から始まった「函館港まつり」も雨に降られなかったけど、ムシムシした気候のなかで無事終了した。

 『おいおい、もう8月も10日だぜ。ほんとにこのまま秋がきてしまうんだろうかなあ。』

 『いや、絶対に暑い夏はやってくる。このままで終わるなんて、絶対にありえない。』

 そういう会話をしていた週末の日曜日。つまり、12日に突然異変が起きた。

朝から急に青空が広がり、ガンガンと太陽が照りつける「待望の夏」がやってきたのである。

僕はちょうどその日曜日は、エアコンの効いた室内に夕方6時まで仕事をしていたので、外がどれだけ暑かったのかわからなかった。

ただ、仕事を終えて、一歩外へ出たときに感じた暑さで、30℃は超えただろうと直感した。

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 今日は814日。

 3日連続して、30℃を超えた。

 札幌も帯広も旭川も連続して34℃くらいまで水銀柱が上昇しっぱなしだそうだ。

 特に昨日13日は、競走馬の産地である苫小牧からえりも岬方向へ南下したところにある「新冠(にいかっぷ)」という町で36℃を記録したそうだ。

 『せっかく避暑にきたのに、これじゃあ相模原と変わんない。』

 娘も女房殿も北海道の夏を期待してきたのに、アゴが出てきたようだった。

 だが、夜になると25℃以下に気温が落ちるので、寝やすいことは寝やすいようである。

 問題は、「極寒冷地仕様」の僕である。

 スポーツジムで鍛えている分、そんなに夏バテしたという実感はないが、正直言って、ちょっと身体が負けそうになってきている。

 明日も30℃を超える予報が出ているが、木曜あたりから気温が26℃くらいまで落ちるようなので、その予報を「こころの支え」にしている。そうでないと、くじけそうになってしまう気がした。

 昼休みに、テレビのニュースを見ていると、本州では連日35℃くらいまで気温が上昇しているとのこと。

 そういう状況の「本家本元」と比較すれば、北海道は灼熱地獄とは決して言えないが、急激な気温の上昇に、身体がついていけない人たちが多いのは事実であると思う。

 暑さが徐々に上昇するのであれば身体もついていけるだろうが、急激な変化に対応できるような「ゆとり」はないはずだ。

 夏はやっぱり暑いほうがいいと思うけど、ほどよい北海道の暑さはどこへ行ってしまったんだろうか。

 暖かくなればなったで、「地球温暖化」が原因だと語る学者さんやテレビコメンテーターがいるけれど、逆に寒くなれば「エルニーニョ現象」の影響だと、そんな理由で片付けることができるんだろうかと、テレビを見ていて首をかしげてしまう。

 僕は学者でないし、それでメシを食っているわけでないから、そんな理由を、分析したいとは決して思わない。

ただ、現実的に「ほど良い暑さ」が欲しいだけのことだから、そんなどうでもいいようなことで、蓄えたエナジーを無駄に消費したくはない。

 やっぱり、夏だけは稚内に戻ろうかなと、真剣に考えてしまうほど、今夏は間違いなく確実に暑いのは確かだ。