ひとりおもふ
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シルエット・ロマンス

 七月の

 さわやかなかぜにふかれていると、

可憐なレブンウスユキソウも

ヒマラヤの妖精ブルーポピーも

サロベツのエゾカンゾウも

みんな、みんな

「さようなら」

って 手をふってくれた

だから ぼくも

「それじゃあ、またね」

って 手をふりかえした


長く厳しいあの氷色の冬がやっと終わり

さいはての生命たちは春に芽吹き

そうして このさわやかな夏に大地を染めていく

きみたちの晴れ舞台が

今年もふたたびめぐってきたのだよ


どこまでも はてしなく続くサロベツの緑の地平線

そして その地の果てまで続くであろうさいはての蒼い空

ぼくは たったその二色の絵画的風景に

神さまがお与えくださったこの二年間を

はっきりと想い浮かべることができる

★★★★★

まず、最初は、何と言っても「花の浮島礼文島」から話したい。

 「島へ渡った」1年目も2年目もお天気に恵まれたこと、それに利尻富士が見えたことをまず感謝しなくてはならないと思う。

 人類がどうにもできないことは自然界にいっぱいあるけど、そのなかのひとつである「気象」は、いわば「神だのみ」の世界だろう。

 気の早い話だが、定年退職して、まずしてみたいこと。

 それは、毎年5月下旬から7月下旬までのおよそ2ヶ月間をこの島で暮らすこと。

 そうすれば、毎日のように桃岩展望台や礼文林道へ足を運べるだろうし、レブンアツモリソウに『また来たの』って飽きられるくらいお目にかかれるし、「レブンの女王」クロユリが、もしかしてプロポーズをOKしてくれるかもしれない。

 「花の浮島病」患者の特効薬は、これしかない。

 いとしのサロベツは、年1度、それも7月上旬に訪れることがベターだろう。

 だから、礼文島へ滞在中に、サロベツへ足を運べば問題ない。

 ということは、幌延のブルーポピーも観ることができる。

 それじゃあ、中頓別のシバザクラだって観ることもできる。

 ただ、住もうとは思っていない。

だって、さいはての厳しい冬はもうけっこうだから。

とりあえずは、定年退職まであと10年足らずなので、それまでは可能な限り、足を運ぶことにしよう。

★★★★★

 サロベツの大地よ

 ぼくはキミに感謝している

 花の名前も満足に知らなかった「ど素人」を

 2年のあいだ 辛抱つよく 面倒みてくれて

 ほんとうに ありがとう


 見事に咲き誇るエゾカンゾウも

 鮮やかな色でせまってくれたカキツバタも

 ぼくは

今度 いつ見ることができるのだろう


 「想像を絶する過酷な冬があるからこそ」

 と、ことばでは言えるかもしれないが

 その長くて厳しい自然を 

ともにすごすことによって

 可憐な花たちに涙することができる

 と、ぼくはおもっている


 日本じゅうのみんなが

 サロベツの大地を見に来てくれたらいいね

 そう想って キミの四季を発信してきた


 キミの四季をながめたみんなが

いつか きっと やってくるだろう

そのときは

「ようこそ きてくれたね」

って 微笑んでおくれ


ぼくも また くるから

そのときまで


それじゃあ、またね