ひとりおもふ
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シルエット・ロマンス

 流れ星を見つけ、見えなくなるまでの間に願いごとを三回唱えれば、その願いはかなうという。

 ほんとうにそうなのであろうかと思いつつも、この世に生まれてから流れ星というものを目撃したことがないので、未だにナゾである。

 だが、流れ星を見つけて、とっさに願いごとが脳裏をかけめぐり、その言葉が音声となって口から出てくることは、果たして可能なのだろうか。

 おそらくは、『あっ! 流れ星だ!』と、指を差してそうして終わってしまうのではないだろうか。

 それで、急に思い出したように、『あ〜、願いごとをすればよかった〜』と、次の瞬間、残念がるのがオチだと思う。

 それが人生というもの。

 一生のうち、そういう場面に果たしてめぐりあえることができるのだろうか。

平均寿命まであと20年以上あるので、まだまだチャンスはあると思うが、このトシになって夜に散歩という場面はほとんどなく、仮に外へ出るとしたらネオン街を千鳥足で徘徊することしか用はないだろうから、そういう環境のなかで神様がその機会を与えてくださるとは到底思えない。

流れ星を見つけることは、宝くじに当たるよりはその確率は低いのではないだろうか。

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 「見上げてごらん、夜の星を・・・」

 今は亡き坂本九が歌ったこの曲は、永六輔と中村八大との名コンビによる永遠の名曲であり、特に中村八大作曲の数々のメロディは、日本人ばなれしたほとんどアメリカン・ミュージックであると表現してもいいと思う。

 演歌が主流を占めていた60年代の日本においても、「進駐軍」のダンスホールなどで演奏して実力をつけていた日本人プレイヤーが、次世代のためにちゃんとレールを敷いていたのだと思うと、彼らのその功績は計り知れなく、賞賛に値するであろう。

 また、六輔・八大コンビの曲は、この他に例の「上を向いて歩こう」という名曲もあり、ほんとに日本人が作った曲なのかと思うほどすばらしいメロディである。

 ちなみにこの曲は、作詞した永六輔が告白したなかでは、当時想いをよせていた中村メイコから婚約したことを告げられて、それでショックのあまり泣きながら家まで帰ったときのことを詩にした失恋ソングだと。詩のフレーズをたとれば、なるほどと思った。

 夜空や星たちをテーマにした曲は数あるが、その少し後にヒットした荒木一郎の「空に星があるように」という名曲もあるし、永遠の若大将こと加山雄三のご存知「夜空の星」「夜空を仰いで」などがある。

 加山雄三は今でも現役でご活躍されているから、ここでどうのこうのと言うべきものではないものの、テレビから姿を消した荒木一郎は独特の雰囲気があって、強烈なインパクトがあったように記憶する。

 函館に住んでいたころ、カラオケへ義兄一家とよく行ったが、そのときに義兄が荒木一郎の「いとしのマックス」なんぞを歌ったりしたものだから、やっぱり団塊の世代なんだなと思ったりしたが、正直「しびれた」。

 そのころの音楽は、日本にしろアメリカにしろ、夜空をテーマにした曲がけっこう流行っていたのではなかったろうかと考えた。

 具体的には、日本では前述のとおりであり、アメリカではアンディ・ウィリアムスの「ムーン・リバー」、ディズニーはピノキオの「星に願いを」などの名曲が目白押し。

 また、夜空が見えなくとも、石原裕次郎の「夜霧よ今夜もありがとう」やフランク永井の「夜霧の第三国道」、洋画では「夜霧のしのびあい」なんかがすぐ上げられるが、いずれも年配の方でないとわからないタイトルばかり。

 でも、やっぱり、ムードがあっていいんだろうなあ。

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 さいはてに、札幌や旭川などの都会から仕事でやってきた人たちの間では、ここの夜空がものすごく評判が良いらしい。

 というのは、夜空をさえぎる建物がないこともあるだろうが、排気ガス等の影響もなく、空に澱みがなく澄みわたっているので、都会ではあまり見ることができない小さな星まできれいに見えるからなのだろうと思う。

 また、四季のなかで条件が最も良いのはおそらく冬だと思うが、何か用事でもない限り、冬の夜空を見上げることはまずないだろう。

極寒のさいはてで、冬の夜にロマンを求めることは、よほどの好条件がそろわないかぎり無茶だと思うので、夏か秋がベターではないだろうか。

あとからあとから降ってきそうなくらい夜空に大小たくさんの星たちが輝いている光景を見上げ、そして物思いにふけるだけで、良いひとときを過ごしているといった満足感に浸ることができるだろう。

そして、ここ稚内よりももっと眺めの良いところがあると聞かされた。

礼文島。

お隣の利尻島は利尻富士がある分、夜空を360度見渡すことができないらしい。

360度見上げることができる礼文島の高台からの夜空が日本では一番美しいという。

「花の浮島礼文島へ」をホームページへ写真掲載する際に、いろいろとアドバイスをいただいた礼文島在住の「くるくるレブンクル」主宰者である宮本さんのホームページのトップに、利尻富士と満月の写真がしばらくの間飾られていたが、すごく絵になると感動した。

また、あのロケーションで夜空を見上げたら、もっともっと素敵だろうなと想像してしまった。

だから、好きな彼女とふたりきりで、そんなロケーションのなかで愛の告白をしようものなら絶対にうまく行くにちがいない。おそらく、百人力だろう。

そのとき、おそらく「見上げてごらん、夜空の星を」なんかがバックに流れていたら、こりゃあ千人力になるだろう。間違いない。

 さいはてに2年も住んでいて、そういえば「まじまじ」と夜空を見上げたことがなかった。今夜でも見てみるかな。