ひとりおもふ
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シルエット・ロマンス

 函館に住んでいたころ、関西空港まで飛行機を利用したことが一度あった。

 函館空港のターミナルはけっこう混んでおり、それに輪をかけた感じで、函館観光を終えたと思われる「関西のおかん」集団が大声で話しまくっていた。

 いやな予感が的中した。
 やっぱり、一緒の便だった。

 その大声の渦はフライト中のおよそ2時間弱、満席の機内でも存分に披露されたし、おかんだけでなく、連れの20歳前後の娘さんたちも同じくにぎやかだった。

 だから、おかんになって急に大声で話をするのではなくて、歳を上乗せしていくに連れて、徐々にボルテージも上がるんだと、自分なりに納得した。

「関西のおかん」がすべてそうではなくて、もちろん例外はいるだろうと思うが、なにせキャラが強烈だということがその印象を狂わせているのだ。

仕方ないので、搭乗中はイヤホンを両耳にあてて音楽を聴くことにしたものの、僕の周りを囲んで座ったかたちのおかんらの話し声が、そのイヤホンをろ過して聞こえてきたのには驚いた。

そして、まさかも的中した。
 
やっぱり、神戸・三宮行きの接続バスも一緒だった。

場所を選ばずに大声で会話するのは、こてこての「浪花のおかん」だけだと僕は思っていたので、正直「うんざり」したし、バスを下車しても耳鳴りのようにしばらくの間、残影した。

関西の方々にとっては日常的なごく普通の見慣れた光景だと思われるだろうが、「免疫」のない人たちにとっては、あれは「騒音」だとしか言いようがない。

デシベルにしてどのくらいの音量となるのかわからないが、よくまあ口がまわるものだと、感心の部類に入るか、天然記念物・・・いや国宝に指定したほうがいいかもしれないと思った。

「関西のおかん」と表現すべきなのか、それとも「浪花のおかん」と特定すべきなのかどうかを、当事者?であるネット友だちの「ゆきこさん」に尋ねてみた。

彼女曰く、『「浪花のおかん」が適切ではないでしょうか。』とのこと。

感覚的に「浪花」のほうが、バイタリティと優しさ、そして強さとを兼ね備えているようなイメージを思い浮かべることができる。

★★★★★

 『関西の人とお話するときは、「オチ」を用意しておいたほうがいいよ。話の最後で「落とされる」のを待っているからねえ。「で、で、それから、どないしたん」「で、で、」とオチを催促させられてしまうし、オチがないとわかると、「なんやそれ」ってそっぽを向かれるからねえ。』

 『逆に、関西人同士だと「あうん」の呼吸っていうんだろうか、漫才の「ボケ」と「ツッコミ」状態で会話しているんで、そのやりとりを聞いているだけで楽しくなるよね。上方文化って、いいところがいっぱいあるから最高だね。』

『徳川家康が天下統一したんで、江戸が日本の首都となったけど、もし、関が原の戦いで石田光成が勝っていたら、太閤さんの大阪が日本の中心となって、標準語が「関西弁」になっていたんだよねえ。』

『あれっ、日本の首都って今でも京都じゃないの。東京が首都って、誰が決めたの? いつから首都になったの? だって、遷都したって聞いていないよ。たしかに国会や皇居は東京にあるけどさあ。』

 『そうだよねえ。奈良を平城京、京都を平安京と歴史上ではそう呼んでいるから、遷都ではなくて、明治天皇が京都から江戸に住まいを移されたという既成事実をもって東京を首都にしているんだろうね。そうでないと、京都の位置付けがわからなくなる。』

 『あんまり、大声で言わないほうがいいよ。こういうことって、うるさい人がけっこういるからさ。この話はこれでおしまい。』

★★★★★

 「こてこての関西人」という表現があるが、この「こてこて」という意味はどうとらえたらいいのだろうと、いつもそう考えては悩んでいる。

 広辞苑で引いてみると、「(嫌けがさすほど)濃厚なさま。こってり。」とあるので、きっと「正真正銘の関西人」ということなのだろうと思うが、であれば何故「正真正銘の・・・」と言わないのだろうかと疑問に思う。

 ただ言えることは、「こてこて」のほうが関西らしいので、それで、この「こてこて」を用いているのかもしれないということ。

 その「こてこての関西人」を芸能人で例えたら、いったい誰なんだろう。

全然予想がつかないし、名前も顔も思い浮かばないが、この場合、吉本興業所属の芸能人が無難なのだろうか。

しかも、関西生まれの関西育ちという条件が付くだろうから、高知出身の西川きよし師匠は除外と見るべき事例が生ずるであろう。

このあたりも問題となるだろうし、さらには「関西」=「浪花」で範囲を狭めてみてもいいと思うのだが、この考えはいかがだろうか。

でも、全然思い浮かばない。

それとも、芸能人で例えることが想像力の障害となっているのだろうか。

 この問題は、おそらく地元の方でないと解決できないと思われるので、これもゆきこさんへ聞いてみた。

 彼女は嫌いだと注釈していたが、和歌山生まれの奈良育ちの全国区である「明石家さんま」がイメージに近いのではないかとのこと。

 僕は「さんま」と同年だが、彼にはその「こてこて」のイメージよりは「垢抜けた関西人」という感じがしてならない。

 だが、そう答えてくれた彼女こそが意外と「こてこての浪花のおかん」だったりして。

 ごめん。