本州や四国、九州では例年、雨が降らないと「水不足」が心配されるが、今冬の日本有数の豪雪地帯では、積雪がほとんどなかったため、年間行事でもある「雪ハネ」をしなくていいと、むしろその重労働から解放されることで、ある意味では歓迎されたのかもしれない。
だが、この気象現象も「水不足」や「冷夏」への影響が心配され、野菜などの作物にも影響が出るのではないかとの予測がされることになる。
「地球温暖化」「エルニーニョ現象」などの理由により、北陸から東北にかけての日本海側のいわゆる雪国地方に、例年の降雪がほとんど見られず、気がついたら青森では100年ぶりの積雪ゼロとかの異常気象となってしまったようで、冬季恒例の行事もことごとく中止せざるを得ない状況に陥ったという。
例外にもれず、北海道でも豪雪地帯である小樽周辺や札幌、そして岩見沢周辺なども例年の半分程度の積雪量であったろうし、函館も30年ぶりとかの積雪なしが3月中ごろまで続いたという。
また、さいはての稚内周辺も、「中頓別(なかとんべつ)」「音威子府(おといねっぷ」などの内陸部を除けば、例年よりは幾分少なめの積雪だったし、名物の強風が吹く日も少なかったようで、こんな年も珍しいと地元の方が言われていたが、僕にしてみれば去年が去年だっただけに、いささか肩透かしをくらった感があった。
日照不足からくる「冷害」が夏の季節に発生することはあるものの、冬の季節に降るべき雪がほとんど降らないということを、「暖冬」という二文字で片付けてしまって良いのだろうか。僕には、夏季の異常気象への「種」がまかれたかもしれないという不安が残っているのだが。
結局は、3月になっても雪国では雪らしい雪が天から舞ってこず、春の訪れを予感させる山野草が次々と芽を息吹きはじめてきたという。
人里では、ひと足早い春を告げる使者たちがいっそう拍車をかけたし、気象庁は予測を誤ったものの、例年より1週間以上も早いサクラの開花予想を発表した。日本じゅうが緩んできたような3月だった。
『もう、春かよ〜。』
だが、そういった春気分をあざ笑うかのように、「季節はずれ」の3月なかばに大雪が天から舞い降りてきて、そして、雪国は荒れ狂った。
僕は、それを「帳尻あわせ」と呼んだが、でも、例年だとこの時期に当たり前のような量の降雪ではないかと思った。
おそらくは、今季の積雪量がなにせ少ないものだから、見慣れているのに「大雪」だと錯覚してしまったのだろう。
北海道に住む人は、僕の故郷である函館や室蘭などのいわゆる北海道南部を「道南(どうなん)」と呼んでおり、この地方では例年、「春分の日」あたりに最後のドカ雪が降り、これをもって「打ち止め」となり、待ちに待った春を迎えることになる。
また、僕が今住んでいる稚内を含めた旭川以北を「道北(どうほく)」と呼んでいるが、ここでは3月いっぱいまでが「冬」であり、4月に入ってやっと春が来るという感覚なのであろう。
北海道は広い。
函館から稚内まではおよそ600キロ、函館から根室までもおよそ700キロ以上あるわけだから、季節の感覚も微妙に違っている。
だからと言ってはなんだが、4月でも5月でも雪が降ることは日常茶飯事だし、そのころに降る雪は午前中にはほとんど融けてしまうので、いまさらどうってことはない量なのだ。
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今年のはじめに僕は、
『雪にロマンなんかないよ。』
と、ホームページに書いた。
ほどほどに降ったり、細雪のようにすぐ融けてなくなる雪にはロマンがあるだろう。
また、雪にあこがれを持つことに、別に苦言を延々と述べる気持ちはさらさら持ち合わせていない。
しかし、雪害や寒波を伴うような降り方をする雪は、そこに暮らしている人たちにとっては、生命や生活を脅かす「悪魔」でもあるのだ。
雪のない都会に住んでいる人のなかでも、「ブリザード」や「ホワイトアウト」の恐怖を一度でも味わったことがある方であれば、そのことをおそらく理解されるのではないかと思う。
ただ、「なごり雪」は別だろう。
当然だが、雪国にもそのなごり雪は降る。
汽車を待つキミの横で、時計を気にしていてなくとも、季節はずれの雪はちゃんと降ることがある。
かぐや姫のメンバーである伊勢正三が作詞作曲し、イルカが歌って大ヒットした永遠の名曲「なごり雪」は、『東京で見る雪はこれが最後ねと、寂しそうにキミがつぶやく。』というフレーズから、この曲は雪があまり降らない都会の「うた」で、この季節はずれの雪に、「恋人との別れ」と「その恋へのなごり」とをオーバーラップさせたその情景にロマンがあるのだろう。
そのなごり雪に、この恋の余韻がもの悲しく漂うのを感じてしまう。
しかし、雪国では、都会のそれとは違い、「なごり雪」にロマンを感じる人は、それほどいないだろう。
逆に、畑作や水田農家の人たちのほとんどは、『降るな!』と言って、天を恨むことだろう。
雪になごりなんか感じていないよ。
どちらかと言えば、それは「春待ち雪」と思いたいよ。
雪国に住む人たちは、おそらくはそう思っているのだろうと思う。
先ほども書いたように、北海道南部では「春分の日」前後にドカ雪がある。これが降らないと春は来ない。本州で言われる「春一番」と同じ格付けだろう。
ドカ雪という表現にロマンは見当たらないかもしれないが、これが「春待ち雪」だと思えば、ロマンがあるのかもしれない。
それは、冬に対する「なごり」ではなく、春に対する「のぞみ」なのだろう。