正月を久々に女房殿の実家で過ごし、一人、札幌から稚内へ向かうJRからの車窓を眺めて、ふと思った。
『いつまで続くかわからないが、酒を断ってみようかな。』
と。
そう思ったきっかけも何も見当たらない。
ただ単純に僕の意志がどれほど強固なのかどうかということを確認してみたかっただけのこと。
別に酒でなくてもよかったのだが、たばこをやめて1年と半年が過ぎ、なんとなく好きなもののうち、どれか一つをやめてみることに挑戦したい気持ちになった。
パチンコ、競輪、競馬、マージャンなどのギャンブルは一切やらないし、たばこも吸わないし、あとは禁酒しかないだろう。
だが、禁酒はつきあいのうえではまず不可能に近いし、自他共に認める「のん兵衛」がいきなり禁酒したらどんな災いが降りかかってくるかわからない。
また、ストレス解消としての飲酒はある程度必要だと思うので、それであれば、惰性やわびしさからくる飲酒は極力控えていこうと考えた。
逆に言えば、控えることによって飲む酒はかなりおいしくなるのではないかと思ったことも事実。
やがて暮れ行く冬景色が車窓を流れていくのをぼんやり眺めながら、飲酒を極力控えて行こうと戸惑いもなく決めた。
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稚内へ戻ったのは、その日の午後6時ころ。
水道の元栓を「開」に戻し、冷え切った部屋のストーブを「ON」にする。
バッグ内の荷物整理をあとまわしにして、とりあえず夕食用の弁当調達のため、近くのコンビニへ向かう。
と、ここまではいつもと同じパターンで、缶ビールか缶チューハイを一緒に調達するのだが、今回はそれをやめた。
ガラスケースに陳列されたいつものアルミ缶に、意識的に目を向けることなく弁当を買ってレジをすます。
『今日は飲むのをやめよう。』
と、心のなかで言い聞かせると、なんだか気持ちが楽になった。
夕食をすませ、フロを沸かして入浴する。
ここでも誘惑が待ち構えている。
〜フロ上がりのビールがまた格別にうまい!〜
『今日はビールはありませんぜ、ダンナ。』
と、バスタオルで身体を拭きながら、これも独り言のように自分に言い聞かせると、やっぱり気持ちが楽になった。
不在中の受信メールをチェックしていても、やっぱり口というかノドが寂しくなるので、お茶を飲むことにした。
そして、早めに就寝した。
そういう夜が延々と続き、まずは20日間の禁酒を達成した。
はっきり言わせてもらえば、たばこをやめたときより楽だと思った。
というのも、たばこは起きているあいだじゅう誘惑がやってくるのに比べて、酒は夜しかそれがない。
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さきほど「20日間の禁酒を達成した」と述べたが、それは仕事の付き合い上どうしても避けてとおれない「懇談会」というものが定期的に開催され、それで飲食しなければならなくなるというやっかいな行事があるからである。
その「懇談会」は市内の郷土料理店などで開催されるし、メンバーも固定された10名なので、当初からこの会合だけは飲もうと決めていた。
会が始まり、乾杯のビールを飲みほしたとたん、顔が赤くなってポーッとなった。でも、久々のビールはうまかったし、禁酒していた甲斐があったと思った。
案の定、最初から最後までガンガンとビールだけ飲んだ。が、どういうわけか全然酔わなかった。
「懇談会」が終了したら、すぐに帰ろうと考えていたのだが、メンバーのひとりで気心知れている「チョーワルおやじ」に誘われた。
強固な意志も「ちょいワル」が復活して見事に吹っ飛び、結局、午前4時まで飲んでしまった。このことは、「季節限定」で紹介したとおり証拠写真をお見せした。
だが、そのあとはまた禁酒生活が再開されて、2月22日の函館での飲み会までの長期にわたって強固な意志が復活した。
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『いいかげんなヤツらと口をあわせて、オレは歩いていたい。いいかげんなヤツらも口をあわせて、オレと歩くだろう。』(吉田拓郎「イメージの詩」)
僕は酒を飲むことは好きであり、健康上の理由で医者から酒を飲むのをやめなさいと通告されない限りやめる気は毛頭ない。
冒頭でも述べたように、僕はパチンコ、競輪、競馬、マージャンなどのギャンブルは一切やらないし、たばこも吸わないので、これで酒をやめたら、「聖人」となってしまうではないか。
「聖人」となってしまった「ちょいワルおやじ」に何の魅力もないだろうし、僕自身も自分が絶対にいやになるだろうと想像する。
禁酒を始めた理由は、そういうことからではないことをこれまでくどくどと述べてきたが、スナックなどの飲食店にボトルはキープしないとか、コンビニやスーパーなどで、ふらっとアルコール飲料に手を出さないとか、できることから始めていこうと思ったので、今ではそれが定着してきて、まさに順調である。
また、今までストックしてきた「酒蔵」のアルコール(ウイスキー1本と焼酎2本)は、そのうち一晩1本ペースで飲みつくしてしまおうと計画している。
この強固な意志で禁酒が恒常化されたら、最後に残るのは・・・「女性」ですか。・・・う〜ん、これだけは困難だろうな。