ひとりおもふ
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シルエット・ロマンス

 「298円」「冬季限定」「北海道限定」「微糖」「カロリーオフ」「100%使用」「18年度産新米」・・・。

 消費者のふところをさりげなく誘惑するフレーズはたくさんあって、そのフレーズにとても弱い僕は、ついつい買ってしまう。単身赴任者の宿命か。

 特に「冬季限定」とかの季節限定品と、「北海道限定」という地域限定品に敏感に反応してしまう。

消費者心理をうまくついているなあと感心する。

 このなかで一番長くつきあっているのが、「北海道限定」のサッポロ・クラシック・ビールである。

 もう、かれこれ20年ちかくのつきあいだが、キリン・ラガー・ビールにこだわる人と同じで、自分でお金を出して買うときはこの銘柄しか買わない。

 このクラシックを買うことになったきっかけは、「北海道限定」「麦芽100%」というフレーズである。

 通常の「黒ラベル」などの普及品の原料表示をよ〜く見てみると、「米」が明記されている。

 つまり、「米」がブレンドされているのである。

 それで、この「麦芽100%」というフレーズにひかれて、つい購入してしまったのだが、これが正解だった。実にうまいし、北海道でなければ手に入らないということも魅力だった。

 北海道をこよなく愛する僕としては、「サッポロ・クラシック、ばんざ〜い!」だし、コンサドーレ札幌のサブ・スポンサーでもあるから、「道民」としてはごく当然の「義務」であろうと思う。エヘン!

 しかし、インターネットが普及している現在では、北海道内の酒屋さんが開設するサイトへ行けば宅配されるし、関東・関西のデパ地下でも販売されているという。

 道外のビール・ファンが、北海道で知ったクラシックを手にして飛行機で帰る姿も珍しくないご時勢だから、サービスという観点からは、これでいいのかもしれないが、「北海道限定」なのだから、道外であんまり派手に販売してほしくないなあと願っている。

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 さて、「北海道名産」と「北海名産」とでは全然違うことをご存知だろうか。

 よ〜く考えてみると、違うんだよねえ、これが。

 「北海道名産」は、その名のとおり北海道で生産または採捕された産品であるが、「北海名産」は、必ずしも北海道ブランドではない。

 「北海」とは、北の海・・・だよね。

 気になって広辞苑で調べてみると、「北方のうみ」となっている。

 じゃあ、「北方」って。

 「北の方」「北国」だとさ。

 ついでに「北国」とは、「北方の国」「北の地方」と定義付けされており、「北海道」という固有名詞にしばられていないという結論となる。

 ということは、「北海名産」とは、北の地方の海で生産または採捕された産品ということになる。

 つまり、ロシア、アラスカ、カナダ、ノルウェー、アイスランドなどなど、いちおう「北方圏」諸国の海産なのである。

 この場合、北海道はおそらく入っていないと思う。だって、「北海道名産」という固有名詞がちゃんと存在しているので、わざわざ「北海名産」で販売することないじゃん。

 それでは、何故、まぎらわしい表現を用いるのかということなんだけど、「北海道名産」をまず名乗れないわけだから、それじゃあ「ロシア産」と明記すればと思いがちだが、消費者は「なんだあ、ロシア産かあ、おいしくなさそうだね。」と敬遠する可能性がある。

 以前、中国産「長ねぎ」や「しいたけ」が話題となったことがあったが、消費者の間では、安いにこしたことはないが、中国産と聞いただけでおいしくないと敬遠される方もいた。

 つまり、「北海」という言葉を使うだけで、「北海道」と勘違いして購入してしまう消費者心理を見事についたものなのだと思う。

 でなけりゃあ、「ロシア産」とか国名をちゃんと明記するよね。

 全然、話が違うけど、根室で仕事をしていたとき、魚屋さんへ行くと、「近海モノ」とか「前浜モノ」そして「国内モノ」という表示がされたカニ、エビなどの魚介類が並べられていた。が、ほとんどが北方四島からの輸入モノらしい。

 「近海モノ」と「前浜モノ」は、拡大解釈すればそういうことになるかもしれないが、北方四島がいくら日本の固有領土だからといって「国内モノ」はないでしょと思った。

 ただ、10年も前の話だから、今はちゃんと「ロシア産」と明記されていると思いますが。

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 ついでに言っちゃうけど、「子持ちシシャモ」ってほんとうに「シシャモ」なの?

 「シシャモ」は、北海道の「鵡川(むかわ)町」がブランドなんだけど、漁獲量が少ないので、ほとんどが「輸入モノ」なのだそう。

 でも、それはシシャモはシシャモでも、「カラフトシシャモ」というちょっと違う種類なんだって。

 それじゃあ、「カラフトシシャモ」って販売すればいいじゃないと言うけれど、では、消費者は「カラフトシシャモ」で購買意欲が湧くのかなあと、素直な疑問が残る。まさか、居酒屋で「カラフトシシャモあります」なんて書けないよねえ。

 だったら、いっそ「子持ちシシャモ」名で販売したほうが売れるよね。

 シシャモは子持ちのメスを好む人たちが多いので、「子持ちシシャモ」イコール「カラフトシシャモ」はノルウェー、カナダ、アイスランドなどの国々から輸入されている。

 でも、「子持ちシシャモ」名で日本人の胃の中に入る「アラスカシシャモ」の気持ちって、ほんとうにかわいそうだと僕は思うんだけどね。

 ついでのついでで披露しちゃうけど、「糊付け牛肉」と「カニ風味かまぼこ」はどう思いますか?

 まず、「糊付け牛肉」とは、クズ肉を食用糊でくっつけて「肉片」あるいは「ステーキ」ふうにしているわけだから、通常のものより安いに決まっていて値段も手ごろなんだけど、要するに「偽造品」でしょ。

 で、つなげた肉の色が微妙に違うから、味付けにしてごまかしているんだよね。

 パッと見ただけではわからないけど、よ〜く観察すると「れれれのれ〜」ってカンジでわかるし、食してみれば、かじったときにすぐ噛み切れるし。ここまできちゃったか、日本人!っていうカンジ?

 これに比べたら、「カニ風味かまぼこ」は、まだ許せるか。ちゃんと「かまぼこ」って表記しているし、野菜サラダに混ぜて使えばけっこうおいしいんだよね。でも、うっかり「カニ」だと思って買う人もいるみたい。

 最後は、ためになるもっともポピュラーな「味の素」の遠い昔のお話。

 どうしたら、味の素がもっともっと売れるかという戦略を練っているのだが、誰も良いアイディアが浮かばない。

 そうこうしているうちに、社長は思い切って社員全員からアイディアを募集した。

 「優秀作」が1つだけあった。

 「味の素の赤いキャップの穴を大きくする」

 つまり、穴を大きくすれば、一度にたくさんの量がふりかけられることになるので、消費が早くなるという原理。

 このアイディアで、味の素の売り上げが伸びたそうだ。

 で、この知恵の持ち主は駐車場の係員だったそうで、いきなり部長になったとか。

学校の先生から聞いた話だけど、ほんまかいな。