ひとりおもふ
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シルエット・ロマンス

 41歳のとき、人間ドックで「糖尿の疑いあり」と診断された。

 空腹時の血糖値が180あったので、一度医者の診察を受けるよう「しょうよう」された。

 医者からは、定期的に血液検査を受けること、血糖値が「正常値」に下がるまで投薬治療すること、加えて適度な運動と食事療法での減量をするよう指導を受けた。

 しかし、当時は、毎晩午後10時・11時まで残業を余儀なくされたセクションで働いていたので、直ちに投薬治療と食事療法は行ったものの、適度な運動に関しては皆無で、休みの土・日は休養を兼ねて家でゴロゴロしていた。

要するに、休日は一日中、横になってテレビを見たり昼寝したりの「粗大ゴミ」を実践していたのである。

 それは、セクションが変わるまでの4年間続いた。

 投薬治療と食事療法は実践していたものの、飲酒と運動不足が致命的となって、血糖値は270くらいまで上昇した。

 『300を超えたら「インスリン」投与になります。』

 医者からそう言われて、これはヤバいとあせった。

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 苫小牧で仕事をしていた33歳のとき、3歳になった娘が市内のアスレチック・クラブのスイミング・スクールに通いはじめたのがきっかけで、僕ら家族3名はここのファリミー会員となった。

 それから、札幌・函館と転勤したが、娘も女房殿もスイミング・スクールに通っていて、僕もアスレチック・クラブで運動をしていたので、健康にはかなりの自信はあったつもりだった。

 だが、37歳のときに「右アキレス腱断裂」の不幸に遭遇した。

 『右を切ったら、左も切りますよ。』

と、担当医に言われたのもつかの間、僕は根室へ転勤することになった。それも単身で。

 根室には市民プールがあったので、週1回ペースで泳ぎに行ったものの、右アキレス腱断裂のときに医者から言われた言葉が残っていて、水泳以外の運動は自粛した。

 『根室では病気しないほうがいいわよ。カゼひいても薬局で市販されている薬を飲んで、治るまでひたすら寝ているしかないから。まちがっても市立病院にかからないようにね。』

 仕事場の掃除をしてくれるおばちゃんがいつもそう言っていた。何故かはここでは割愛させていただくが、その実態を取材しようとした知人であるNHK記者が、出入り禁止になりかかった。

 とにかく、根室での2年間の単身を無事終えて函館へ戻ったが、今度は残業続きのセクションが待ち構えていた。

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 45歳になって僕は、悲壮な決意を持って再びスポーツ・ジムの門をたたいた。

 が、8年間のブランクは大きく、コーチからは、まず「水中歩行」と「軽度な水泳」を行うよう指導を受けた。

 いくら若いときにラグビーをやっていたからと言っても、8年間のブランクは大きく、運動できる体質へ徐々に変えていくことが先決と言われた。

 そのメニューを半年続け、「心拍数」も安定してきたので、トレッド・ミル(ベルトコンベア)での急ぎ足と筋力トレーニングが加わった。もちろん、水泳は通常の泳ぎのOKが出た。

 トレッド・ミル(ベルトコンベア)で本格的に走りだしたのはそれから半年後のことで、足掛け2年後の47歳になって自分でメニューを組み立てることができるようになった。

 そのころになると、投薬治療をしていたものの血糖値は160くらいにまで落ちていたので、医者からもそのまま運動を続けるよう指導を受けた。

 スポーツ・ジムでの運動が軌道に乗り、職場で行われるサッカーにも加わるようになり、48歳には水泳中に左肩がずれるという不幸もあったが、どうにか健康を維持していた。

 49歳になると、痛めた左肩が7割程度戻ってきたので、ジムのコーチの勧めもあって、彼女がインストラクターを務める「アクアビクス」のスクールにも通うようになった(動機が不純と職場の先輩に言われた。)。

 このアクアビクスは、「メンズ・アクア」(毎週土曜日午後)というスクールで、男性を対象とした「異色モノ」であったが、受講者も40代から60代で13名にも及び、僕自身もなかなかおもしろくてハマってしまった。

 「アクアビクス」は「エアロビクス」の水中版であり、エアロと比較して身体に負担がかからず、身体が常時「水」で冷やされるため、心拍数もさほど上昇しないことから、ご年配の方にもお勧めの脂肪燃焼効果バツグンのフィットネスなのである。

 ちなみに、インストラクターの説明では、格差はあるものの、運動をはじめてから20分経過後の心拍数120から130程度で脂肪が燃焼されはじめ、これ以後が一番良い状態での燃焼効果時間となるということである。

 つまり、平均的に、心拍数が120から130の間が一番良い脂肪燃焼時期ということらしい。

 故に、散歩時やジムでのトレッド・ミル(ベルトコンベア)は、早足程度で最低でも20分以上歩き続けることが効果的ということであり、これとは違って、ただ黙々と走るのは「持久力」をつけるという目的として捉えたほうが良いとも話してくれた。

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 昨年の7月に稚内へ転勤が決まったとき、真っ先にスポーツ・ジムの心配をしたが、幸いにも第3セクターの施設があり、HPで紹介されていたので、その内容を確認してひとまず安心した。

 どちらかというと、プールに重点を置いた施設の造りであり、水泳スクールのプログラムが中心だった。

プールとは別に、1周約80メートルくらいの「流水ウォーキング」のコースが併設されていたので、今はこれに「ハマっている」。

 この「流水ウォーキング」は、競泳用のプールと違い、深さ1メートルくらいの「だ円形」コースに常時水が流れていて、泳げない子供たちが遊んだりしているほかに、この流れに沿って色々なスタイルでウォーキングする熟年男女の姿もけっこう見受けられる。

僕の場合は「流れに沿って」ではなく、「流れに逆らって」ウォーキングしている。要するに「逆流」なのであるが、これがけっこう効く。おかげで下半身がかなり安定してきた。

 この「逆流ウォーキング」を含めたトレーニング・メニューは現在のところ、

 @準備運動とストレッチ(トレーニング時の事故防止)

 Aエアロバイク(ウォーミングアップと心拍数を120以上に引き上げることと有酸素運動の開始が目的)

 B腹筋を含む筋トレ各種(筋力強化と関節部の保全が主目的)

 Cトレッドミル(脂肪燃焼と持久力向上が主目的)

 D逆流ウォーキング(足腰の強化と運動後の筋力マッサージを兼ねる目的)

となっていて、これくらいのメニューが50代男性としてはちょうどいいのかもしれないと自分で設定した。

 
もちろん、これ以上のことをしようとは今のところ全然思っていない。というのも、僕くらいの年齢ともなると、レベルアップと年齢とは反比例していくので、衰えていく身体にさらに負担をかけないという考え方からである。

人間、いくら努力しても体力は確実に衰えてくる。故に、年齢に見合ったメニュー設定で「現状維持」を心がけたほうがいいと思うが、聞いた話では、地元のトライアスロン愛好者は、年齢を重ねるにつれて自分の体力が衰えてきているのは運動量が少ないからだと考え、年々運動量を増加させて維持しているらしいとのこと。

これは40代後半に差しかかった方が、活字が見えにくくなったのは単に目が悪くなったからだと自分に言い聞かせて、決して老眼であることを認めないということと同じように思える。

 さて、僕はこのメニューを土曜と日曜にこなすほか、週2回のアクアビクス講習に積極的に参加している。

 アクアビクスは、40代から60代の女性に混じって受講しているが、おおよそ10名から15名のうち男性が3〜4名という内訳。

 スポーツ・ジムへ通う目的のほとんどは、「減量」と「シェイプアップ」とに分かれていると前述の函館のインストラクターが話していたことがあった。

「減量」と「シェイプアップ」とではメニューが全然違うので、それぞれのメニューに沿って実践していくわけであるが、ここのアクアビクスに通う方たちは、どちらかというと「シェイプアップ」目的が多いような「体型」の受講生ばかりである。

 と書けば、僕自身、「腹まわり」がさぞかしシェイプアップされているのだろうと思われがちだが、実際は痩せもせずに「現状維持」しているだけのこと。

 アクアビクスにハマってから、かれこれ1年半となるが、正直、楽しいし、おもしろい。

 プールのなかでリズミカルな音楽に合わせて身体を動かすことが、ストレス発散も兼ねた健全な運動だと思ってくれば、それはそれで長続きするのではないかと思える。

 運動不足かなと思ったら、まず、ジムのドアをたたくことからはじめてほしいと思う。通いだせば、朝起きて洗顔するのと同じ「日課」となっていく。そうなればしめたものである。