ひとりおもふ
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シルエット・ロマンス

 なにげなく耳にしたメロディが、ずっとこびりついていて、しばらくのあいだ耳から離れない状態に陥ることがたまにある。

 ほとんどの場合、一部分のメロディだけが何度も繰り返されることが多いのだが、一度そのメロディを耳にすると、何をしていても「耳鳴り」のように何度も何度も「再生」される。

 その「耳から離れないメロディ」が久々に発生した。

小学生高学年の女の子2名「キグルミ」が歌う「たらこ・たらこ・たらこ」がそれである。

 「♪たらこ、たらこ、たっぷり、たらこ♪」

 こういう単純で明快なメロディに、僕は弱い。

 このメロディは、以前から、某マヨネーズ会社のCMに使われているので、「ああ、このうた」とすぐになじんでしまった。が、実はその最初に聴いたときから「耳から離れないメロディ」だったのだった。

 別にCMのメロディだけでなく、それが歌であればジャンルに関係なく「耳から離れない」ものになってしまう。

 そのメロディに強烈なインパクトがあるのかどうかは専門家でないのでよくわからないが、特にCMの場合には聞き手に対してインパクトを与えるということが必要不可欠であると思う。

また、普通の歌の場合は最初のメロディも重要かもしれないが、注目はなんといっても「サビ」からであろう。

 「サビ」というのは理論的には、「曲のなかでインパクトを与える、変化をつける、あるいは曲で一番主張したい、または盛り上げたい部分」ということになるのだろうか。

CMソングの多くは、この「サビ」のフレーズから使用しているものがほとんどであるということから、やっぱり「サビ」が重要なんだと考えてしまう。

 それにしても、この「たらこ♪」は、耳にタコができるくらい聴いていないはずなのに、一発で「耳から離れない」状態になってしまったのだから、やはりインパクトはすごいと思う。

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 旅行や出張で訪れたことのある地名を耳にして、印象に残っている当時の風景を想い浮かべることがあるが、年月が過ぎるにしたがって、その風景はだんだんとおぼろげになっていく。

 同じように、曲の題名を聞いて、すぐそのメロディが想い浮かぶ曲がある。
 そのメロディは、イントロあるいはサビの部分で、詩は風景同様におぼろげな記憶となっていくが、メロディは確実に記憶の中で生きている。

 特に洋楽がその典型的な例であり、英語の歌詞は忘れてしまったけど、メロディだけは記憶にあるといったものが多い。

 洋楽の場合、サビの部分が記憶にあるというものより、イントロが記憶に残っているものが多いと思う。

 僕は、俗に言う60年代(1960年)後半から70年代の洋楽に育ったことから、イントロがいまだに記憶に残っているものが多い。

 昔、「超ウルトラ・イントロクイズ ドン!」と司会者が言う「クイズ・ドレミファ・ドン」だったかそういった曲のイントロを聴いてその題名を当てる番組があったが、洋楽ではかなりの自信はあると僕は思う。

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 最近のCMに、僕がヤングのころに流行した洋楽がけっこう使用されている。
 そのなかで僕が好きなのは、ヘビメタ・グループの「キッス」をパロったカメラ・メーカー「キャノン」のCM。

 子供たちが「キッス」独特のメイクをして、名曲「ラヴィング・ユー・ベイビー(I was made for loving you)」を口ずさんでシャウトするのだが、その姿に愛嬌があって見ていて楽しくなってくる。

このCMを企画した人は、「キッス」と商品名の「EOS KISS」をかけたのだが、それ以上に本人が「キッス」を好きだったんだろうなあと思う。

同時に、曲に強烈なインパクトがないものの、こういったCMでの使われ方もあるんだなと妙に感心してしまった。

 こうしてCMに使用される曲を分析してみると、やっぱりインパクトの強いものが好まれるのだろうとあらためて思ってしまう。

 CM以外でも、NHKの「おかあさんといっしょ」で歌われていた「北風小僧の寒太郎」や「にこにこぷん」、それに「どらえもん」や「おどるポンポコリン」などの曲は、今でも耳にこびりついている。

これらの曲は、娘がその番組をよく観ていたので自然とインプットされたものであるが、それにしても人間の記憶力というものは恐ろしい気がする。

50を過ぎた「ちょいワルおやじ」の耳に今でも「北風小僧の寒太郎」などのメロディがこびりついていて、寒くなると口ずさんでしまうなんて、誰が想像できるだろうか。

でも、今でも歌えるというから、ほんとうに自分が怖くなってくる。

そう考えると、今、耳にこびりつきはじめている「たらこ♪」も、「黒猫のタンゴ」や「およげたいやきくん」同様に、僕の耳にいつまでもこびりつくんだろうなあ。