居酒屋メニューで毎回お世話になるのが、
「料理3,500円ポッキリ、プラス1,500円で2時間飲み放題!!!」
の「宴会コース」である。
職場の部下たちとの飲み会は最低10名以上の規模となるので、この「宴会コース」だと幹事側からすれば、料金が一律に決まっているのだから、これほど楽なものはない。
この「料理3,500円」と「飲み放題1,500円」は基本的なスタイルであり、給料日前とか出張者との一杯飲みとかいろんな状況に応じて、「料理」の設定料金を変えていく。
なかには、「飲み放題980円」という居酒屋もあるが、これは「ビール」ではなくて「発泡酒」にランクが下がるし、ケチな居酒屋になると店員が『お客さま、もうしわけありませんが、ジョッキのビールを全部飲んでいただかないと次のジョッキはお持ちできません。』と言ったのん兵衛泣かせの「殺し文句」を突きつけてくるところもある。
ジョッキのビールが無くなるころにおかわりを頼んでおけば、飲み干したころにちょうど新しいジョッキが到着する構図があっさりとこの「殺し文句」で否定されるのは、のん兵衛として許せない。でも、2時間980円なんだから文句は言えないか。
客が飲みすぎて健康を害するといった心配をしてくれていると、この際、善意に解釈するしかない。
しかしである。
こういった「発泡酒」と表示している居酒屋はともかく、
「ビール、日本酒、焼酎、ウイスキーなんでも飲み放題」
を確実に履行している居酒屋は、実際のところどのくらいあるのだろうか。
まず、乾杯のビールをゴクゴクと胃に流した瞬間、『??? これ、ビールかよ。』の疑問。
スーパーかコンビニでビールを購入して、風呂上りに家で飲むビールとどこか違う。要するに、「キレ」がない。
ビールは、サントリー、キリン、アサヒ、サッポロの4社がメジャーで、ほとんどの居酒屋がこの4社ブランドのビールを扱っているのだろう。
でも、のん兵衛はおそらく、こんな「キレ」のないビールは飲んだことがないと、いったいこれはどこのビールだと、いつも思う瞬間だろう。
そういった疑問が全然生じないのは、ホテルでの飲み放題プランである。
ホテルでは、飲みごろサインがでているギンギンに冷えた「びんビール(中瓶)」が惜しみなく出されてくるので、間違いなく正真正銘のビールである。
これがもし「ブレンド」であれば、そのホテルの信用問題にもなるので、発泡酒であれば、パンフレットにそれなりに表記されるはずである。
ちなみに、僕が家族と居酒屋や焼肉店へ行く場合、ビールはジョッキで絶対に注文せずに、びんビールを注文する。これが確実だと思っている。
とはいえ、そんなこともすぐに忘れて酒盛りが始まる。
『○○さん、そろそろ熱燗にしますか?』
『おお、いいねえ、いいねえ。』
『××さんも熱燗でいいですか?』
『いやあ、オレは単価の高いビールにするわ。』
『オレは糖尿だから、焼酎をお願い、セニョリータ。』
コース料理とはいえ、中味は「質より量」なので、けっこう満腹感となるものが多い。
なかには、時代を反映してかどうかわからないが、大きな「おにぎり」が最初から出されている居酒屋もある。
まず、腹ごしらえなのだろう。
そろそろ、エンジンが全開となってくるころ。
で、熱燗がきて、コップ酒となる。
クーッと飲んだ瞬間。
『この「ぽんしゅ(日本酒)」、水っぽくない?』
ウイスキーの水割りを頼んだ人は、
『うわ〜、やけにアルコール臭いなあ。これ、ウイスキーじゃなくて「スピリッツ」じゃないの。』
が、次の瞬間にそんな疑問はすっかり忘れて、
『サケは、楽しく飲まなくちゃね。』
と、絶好調宣言が発布される。
『お客サマ、飲み放題の時間が終わりになりますので、ラストオーダーをお伺いにきました。(おい、そこののん兵衛おやじ、いいだけ飲みやがって、もう、時間だからさっさと帰れよ。)』
『・・・、そうか、じゃあ、熱燗5〜6本頼むわ。』
『はい、かしこまりました。(おいおい、まだ飲むのかよ。しょうがねえおやじだなあ。)』
『ありゃあ、ぜったいに「発泡酒」だって。でねえきゃ、ビール6割・発泡酒4割だべさ。』
『んだ、んだ。ぽんしゅは2割くらい水で薄めているっけさあ。間違いねえ。』
『んだ、んだ。で、二次会は、○○ビルのスナック「○×△」にするべ。』
『しゃあねえなあ。せば、その「動物園」にいくべ。』
『おお、うまいこと言うなあ。座布団1枚!』
『んだ。んだ。ちいママは「トド」だし、ママは「トトロ」だしな。』
『でも、2時間飲み放題・歌い放題で3,000円だからな、「トド」と「トトロ」で我慢するしかねえべ。』
『「入園料」は、オレが立て替えておくから、明日、清算するべ。』
『「入園料」かあ。おめえも、うまいこと言うなあ。座布団、もう1枚!』
『せば、「動物園」へレッツ・ゴー! ひろみ、なんちゃって。』
『ぼくたち、おとこのこ』
『ゴー、ゴー!』
のん兵衛おやじたちの場末は、こんなノリである。