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ひとりおもふ
雪無し正月
 北のさいはて稚内市のとなりまちである「豊富町(とよとみちょう)」には、有名なサロベツ原野をはじめとした北海道らしい壮大な風景が広がっている。また、そのおとなりの「幌延町(ほろのべちょう)」にもトナカイ観光牧場をはじめ、豊富町同様に壮大な風景が広がっている。

 
豊富町にあるサロベツ原野の見ごろは、例年6月から7月にかけてということであり、今年はその時期に利尻・礼文島にも足を延ばす計画なので、週末は「猫の手も借りたい」状況のような気がする。うれしい悲鳴が聞こえそうである。

 
さて、サロベツ原野は、同町が出しているパンフレットでは次のように紹介されている。

 
「利尻礼文サロベツ国立公園に指定されているサロベツ湿原は、豊富町、幌延町、稚内市の3市町にまたがる広大な湿原。視界を妨げるものが何もない開放感のある風景がどこまでも続き、その広さは23,000ヘクタールにも及びます。春から秋にかけサロベツ湿原にのみ生息する固有種の植物を始め100種以上の花が咲き誇り、特に6月から7月にかけ黄色の花をつけるエゾカンゾウやワタスゲ、ヒメシャクナゲなどが咲き誇り湿原を埋め尽くす姿は絶景です。湿原は枯れた植物が泥炭化し、4〜7メートルの層を形成していますが、200万年というとてつもなく長い歴史をかけて積み重ねられた湿原で、その成長は1年間に1ミリメートルとごくわずかです。貴重な自然を傷つけないようマナーを守ってサロベツ湿原の魅力を堪能してください。」(豊富町役場商工観光課、豊富町観光協会発行「サロベツ」から)

 
サロベツ原野は、僕のホームページでも再三紹介しているものの、いずれも夏から秋にかけての光景であるため、湿原に咲く花は紹介することができなかった。そのすばらしさは、これからお届けできると思う。やっぱり、何といっても国立公園だからね。

                  
★★★
 
 この緑豊かな酪農のまちには、是非訪れてみたいもうひとつの風景がある。

 「大規模草地(おおきぼくさち)牧場」がそれである。


 「総面積1,400ヘクタールと日本一の規模を誇る大規模草地牧場。見渡す限り牧場が続くなだらかな丘陵地帯には、約1,500頭の乳牛が放牧され、畜産のまちならではの牧歌的風景が広がっています。牧場内のレストハウスでは牧場を眺めながらジンギスカンや山菜ラーメン、豊富牛乳の飲み放題(100円)など豊富の味覚を味わうことができます。また、牧場入り口には昭和43年に天皇・皇后陛下が牧場の開発状況を視察に見えられた際の行幸記念碑が建っています。」(豊富町役場商工観光課、豊富町観光協会発行「サロベツ」から)


 この牧場の存在を知ったのは昨年10月末のことであり、早速、カーナビとパンフレットの地図を頼りに足を向けた。

 が、牧場へ続く道路は「冬期間閉鎖」となっていて、ゲートが閉められていた。4月中旬まで閉鎖と書かれた看板の向こうには、緑色の大地が地平線まで延びていた。(まだ大丈夫じゃねえかよ。)

 
きっと、北海道らしい広大な草地が青空の下にどこまでも続いているのだろう。パンフレットで見る限り、日本一の牧場だけあってそのイメージは大きく膨らむ。今年一番の「おすすめほっかいどう」だと開通日をこころまちにしている。

 
また、豊富町では、チーズとアイスクリーム、ソーセージなどの製造体験もできるので、酒の肴を自分で製造してみようかなとも思っている。でも、パンフレットに「100円で豊富牛乳飲み放題」ってあるけど、いくら飲み放題だからといってそんなに飲んでアイスクリームなんか食べたら・・・。

 
そうそう、全然話が変わるけど、相模原で飲んだ1リットルパックの牛乳なんだけど、すごく薄くて水っぽかった。豊富牛乳はふだんから「愛飲」しているけど、この濃さが北海道では普通だと思っている。だから、この100円飲み放題の牛乳は、きっと搾りたてのように、市販品以上に濃いんだろうなあと想像した。

                              ★★★

 「『ブルーポピー』っていう花を見たことがありますか。」

 「ふつうのポピーじゃないの? それって、珍しいの?」


 「幌延町は日本最大のトナカイ観光牧場で有名な町。牧場でかわいいトナカイたちとふれあうことができます。牧場の花畑では6月から7月に、ヒマラヤ山脈など高山に咲く『幻の青いケシ』ブルーポピーの美しい花が咲くのを見ることができます。」(豊富町役場商工観光課、豊富町観光協会発行「サロベツ」から)


 ブルーポピーとあらためて言われると見たことがあるかどうか自信がなくなった。しかし、この説明のように「ヒマラヤ山脈など高山に咲く」と言われると、ブルーポピーっていうのは、ものすごく希少価値のあるポピーなんだなと思ってしまった。実際そうなんだろうけど。


 でも、こういう「くだり」が口コミで全国に広まると、花好きな人たちが「幻の青いケシ」を探しに、はるばると幌延町へやってくるのかもしれない。


 稚内で仕事を一緒にしている後輩がこのようなことを言っていた。


 「ノシャップ岬へ行く道路沿いに町内会単位でプランターに季節の花を飾って並べているでしょ。去年の夏だったんですけど、朝、ジョギングしていたら、そのプランターに植えられている花をスーパーの買物袋に土ごと盗んでいるおばさんたちを目撃したんですよ。格好から観光客だと人目でわかったんですが、決定的だったのは『関西弁』だったんですね。よくやりますわ。立派な犯罪ですよ。」


 また、咋秋、礼文島へ渡ったとき、駐在する警察の人と話す機会があり、こういうことを話してくれた。

 「『島』では殺人とか交通事故とか事件らしいことはほとんどないですね。ただ、観光客が渡ってくると忙しくなるんです。『高山植物の盗み』なんですよ。それ目当てにやってくる人の多いこと。俗に言う『バレもと』の感覚ですから、捕まるのも『常連客』ばっかりです。」


 マナーの問題ということではなく、「窃盗」という立派な犯罪なのだ。それも国立公園内であれば、なおさら人格を疑ってしまう。


                             ★★★

 自然を満喫するのは誰にでも権利はあるだろう。でも、自然に手を入れたり加えたりするのは許されないことだ。まして自生している貴重な花を持って帰るという人たちの気が知れない。

 
こんな当たり前のことを自覚できない『大人』が多くなってきているような気がする。「記念」だとか「これくらいいいだろ」の世界ではないだろう。

 
日本のほぼ最北の、人知れぬ自然の草地に自生する「ブルーポピー」をここにあえて紹介するのは、僕のサイトへアクセスする人たちを信じている証でもある。

 
時期になったら絶対にカメラに収めようと思っているので、それまでちょっとばかり辛抱してほしいと思う。(失敗したらどうしよう・・・)

 
やっぱり、6〜7月は猫の手も借りたいほど忙しくなりそうである。

 
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