沖縄の離島を舞台にしたドラマは、この他に日本テレビ系で昨年春に放映された「瑠璃の島」があり、これも毎回泣いた。
この二つのドラマに共通するのは、沖縄の離島を舞台にしたということ、脇役がいずれも主役級クラスであったこと、そして、主題歌がヒットしたということが揚げられるだろう。前者は、中島みゆきの「銀の龍の背に乗って」、後者は、コブクロの「ここにしか咲かない花」。
それともうひとつ共通している大事なものがあった。
住んでいる島の人々の「素朴さ」と、都会人が失いつつある「人情味」である。
いずれの主人公も、島に住む人々の「素朴さ」と「人情味」に触れることによって、次第に自分の「こころ」を取り戻していくというストーリーなのだが、これが沖縄の、しかも離島が舞台だけにジャストフィットしていたようである。
これが、例えば北海道の離島が舞台であれば、冬の厳しさが全面に出てしまって、テーマがかすんでしまい、おそらくは「絵」にはならないだろうし、離島でなくとも、富良野を舞台にした「北の国から」のイメージが今でもあまりにも強すぎて、「二の舞」となる懸念もあったのだろう。
「瑠璃の島」はともかく、「Dr.コトー診療所」にノンフィクション性があるかどうか・・・おそらくは「ノー」という答えになるだろうが。
でも、人間が人間を信じるという信頼関係について、あらためて考えさせられるドラマだった。
★★★★★
「花の浮島礼文島」へ渡ったあと、右肩に痛みを覚える日が続いた。
最初は、パソコンによる「腱鞘炎」かなと思ったが、「家庭の医学」を参考にした限り、その症状はどうやら「五十肩」という結論に達した。
仕事の忙しさを理由に病院へ行くのをためらっていたが、本音としては、市立病院をはじめとする市内の整形外科医院を含めて整骨院や整体院に対する「不安感」からであった。
市内には市立稚内病院という総合病院があるものの、ここでの初診はどこの診療科目でも、例えば午前9時に受付をしても、医師の往診は、午後2時すぎとなるそうだ。ただし、2回目からは予約制となるので、待ち時間が大幅に短縮されるとのこと。
だが、午前9時の受付が何故に午後2時過ぎの診療となるのだろうか。
そして、そのとてつもない待ち時間に対して、何故、患者さんは不満を言わないのだろうか。いくら「我慢強い」「辛抱強い」と言われたとしても、これはあんまりではないだろうか。
こうした待ち時間があるという前提に立って、医者との信頼関係の話をしても無理だろうし、逆に市立病院としてはあまりにもおそまつな運営なのではないだろうか。
そんなに患者はヒマ人ではないのだということを考えていただきたいし、診察まで5時間も待たされるなんて絶対におかしい。だから、診察を受けようとは全く思わなかった。
しかし、今週の日曜の朝、今度は右首付近が痛く、「寝違い」かなと思っていたのだが、だんだんとその痛さがひどくなって、頭痛を伴ってきたため、ついに水曜日に病院へ行くことを決意した。
その病院は、俗に言う「マチ医者」であった。
定期的にお世話になっている内科医に、
『「五十肩」になってしまって、整形のお世話になろうと思うんですが、市内で評判の良い整形か整骨院を教えてください。』
と、診療の際に尋ねたら、
『市内の病院は、どこがいいとか悪いとかのレベルではないよ。どこも同じです。良くもなければ悪くもない。心配だったら、旭川か札幌へ行くことをおすすめしますよ。』
整形のマチ医者は2つしかない。
ひとつは先代は腕がよかったが、今の二代目は?のS医院で、もうひとつはまあまあだと評判のF医院。あとは、整骨院と整体院のみ。
なかばあきらめ状態でF医院に決めた。
玄関を通過して、待合室に入る・・・。
タイムスリップしたようないかにも昭和40年代という古い造り・・・。
診察を待っている人は3名で、いずれもご年配・・・。
待合室の長いす・・・、木製にビニル張りだが、クッションがほとんどなくなっている・・・。
受付が木枠のガラス・・・。
正直、逃げ出しそうになった。
が、ここまできたのだからと自分に言い聞かせて、受付の60くらいの女性に、『初診です。』と告げた。
『保険証はもってきましたか?』
と言われたので保険証を渡すと、
『そこの椅子でお待ちください。』
と、アゴで指図された。
少しむかつきながら、そのクッションがすっかり磨耗した?長いすに腰掛ける。普通、受付ではどこが痛いのか等の症状を尋ねるのではないだろうか。いやな予感がしてきた。
待合室から「処置室」が丸見えで、60すぎの看護師さんと50代の看護師さんの姿が見えるが、緊張感はなく、ただ、ぶらぶら、先生が来るのを待っているようだった。
それから5分たっただろうか、腰の曲がった白髪の白衣のご老人が現れた。
70前後だろうか・・・。
今ある不安にさらに別の不安が追い討ちをかける。
帰りたくなった・・・。
10分後に、僕の名前が呼ばれたので、診察室に入る。
ここの医者は、やっぱりあの白衣のご老人だった・・・。
症状と経過を説明すると、レントゲン写真を撮ることになった。
『これは、「五十肩」だね。それが悪化してきて、頚椎を圧迫しているからクビが痛くなったんだ。大丈夫。今日はちょっと痛い注射と、シップと痛み止めの飲み薬を出します。』
見事な診断だと僕は思った。注射はおそらく「ブロック注射」だろう。
それから、仰向けになって、とてつもなく痛い注射を右肩に打たれたあと、
『今日はお風呂に入っちゃダメだよ。それから、明日はもう1本注射を打ちますから。』
目からウロコが出た。
不安は、どこかへ吹っ飛んだようだった。
医者を信頼するとまでは行かないけれど、それに近かった。
僕の予想どおりの結果だし、ちゃんとブロック注射の処置とシップの配布がされた。
そのときの心境は、おそらく「Dr.コトー診療所」の医者と患者との関係だったろうと、僕は思った。
★★★★★
さて、市民の多くが市立病院へ通院治療するのは当たり前だと思うが、さきほど説明したように、初診はものすごく長い待ち時間があるという現実があるにもかかわらず、何故、「マチ医者」のお世話にならないのだろうかという疑問もある。
たしかに、市内のマチ医者の多くは高齢者であるという事実も起因しているのだろうが、それにしてもである。
ちょっとしたカゼくらいで混雑する市立病院の診察待ちの長い時間を過ごせば、なおさら重くなりそうな気もするのだが。
医者にかかるなら市立病院という「至上主義」なのだろうか。「信頼関係」より「先端技術」を選択しているのだろうか。
どこの医者にかかるかはもちろん好き好きであろうが、それにしても寂しい現象のような気がする。