損害保険会社の対応次第で、加害者が知らない間に、加害者の刑事処分がより重くなる。

損害保険会社の対応次第で、加害者が知らない間に、加害者の刑事処分がより重くなる。

 交通事故は、起こさないに越したことはありません。被害者の立場に立っても、加害者の立場に立っても、決して愉快なことはありませんし、特に被害加害関係が明らかでない場合(すでに停車中の車輌に追突するという様な場合には100%対0%で、追突した側に責任がありますが。交差点での出会い頭の場合などでは、関係者が二者の場合両交通事故当事者(以降この文書の中では『当事者』とする。)ともに被害者としての意識が強いようです。)には、特にその傾向が強い様です。さらに、警察による検証、損害保険会社との折衝等煩雑な手続きを踏まねばなりません。被害者になった場合、お気の毒である事は間違いないのですが、場合によっては、加害者も相当気の毒な状況に立たされる場合があります。
 交通事故(人身事故)処理の一般的な形態は、3つの処理を終了して初めて解決します。
1. 行政上の責任。…公安委員会…行政処分
2. 刑事上の責任。…警察署…捜査
3. 民事上の責任。…当事者間…示談・和解等
の3つです。
  更に、3'.として損害保険会社…保険会社…保険金請求との関係があります。
  
 1.に関しては、外部からの影響は有りませんが、2.には、被害者の感情が大きくものを言います。飲酒運転の大型トラックに追突され、子供2名を失った交通事故がありましたが、遺族である両親の心情によって、それまでの交通事故の量刑まで大きく変化しました。しかしながら、その様な事例に達しない迄も、上記の3.、3'.での加害者の対応、或いは、加害者の加入していた損害保険会社或いは、損害保険会社の担当者の対応次第で、大きく変化します。
 すなわち、被害者への対応の悪い損害保険会社に加害者が加入していた場合、加害者自身が関知していないにもかかわらず、被害者の心証を損ね、加害者自身の刑事処分が重くなる可能性が有るのです。
 信じられない方もおいででしょうが、被害者に警察から『加害者に対して、どの様な事を望みますか。』等の心情心証の問い合わせがあります。この時、加害者の加入していた損害保険会社は、既に加害者からの委任状によって交渉権等を加害者より受任している場合がほとんどで、被害者が直接加害者と交渉する事は無くなっています。ところが、 加害者の加入していた損害保険会社と、被害者は相対している訳です。そこでの加害者の加入していた損害保険会社の対応が、充分でない場合、被害者側の心証は極めて悪いものになります。『あんないい加減な損害保険会社に加入している加害者にも責任がある。』と言う事になり、前出の警察からの問い合わせに対して、被害者に『対応が不充分であるので、できる限り重い量刑にしてください。』と言われますと、加害者に対しての刑事処分は、被害者の意向を反映させると言う枠内で『できる限り重い量刑』が言い渡されてしまう事になります。

被害者側当事者には
本人
近親者
扶養権利者
相続人
代位請求者
が居ります。

加害者側には
加害運転者
監督義務者
使用者
代理監督者
自動車運行供用者
が居ります。

 いずれにせよ充分注意しなければならない事は、
 1. 警察への届け出については、どんな事故であろうと届けるべきです。(事故の軽重によって判断しない事です。…任意保険の等級が下がり保険料が高くなるからとか、この程度なら実費分を自己負担して、免許証の点数を温存した方がよい。との考えも有りましょうが。)…警察では現場検証を行いますが、直ちには事故扱いにはしません。(明らかな人身事故の場合でなく、軽度の物損事故として処理できそうな場合。)保留期間を『当事者』同士で相談して、その間の処理を留保しておいてもらう事が出来ます。この間に、『当事者』同士で円満に解決できる可能性があります。又、後日けしからぬ輩から『自動車の後ろのトランクに積んでいた100万円の壺が壊れていた。』とか、1ヶ月も経ってから『体の調子が悪いので休業補償が欲しい。』等と言うような事態も回避できます。さらに、警察に届け出をしていない場合、事故証明書が発行されないので、後日、自動車関連の保険だけでなく、その他の傷害保険の請求も困難になる場合があります。
2. 交通事故で人身事故を起こしてしまった場合、行政処分、民事、刑事の3つの処理が終了しない限り、全てが終わった事にはなりません。行政処分は行政庁が行うものですから量刑の加重に変化はありません。しかしながら、民事、刑事に関しては、被害者の意向が大きく影響するという事です。加害者の対応が悪いか或いは悪質であった場合、被害者は加害者に対して量刑を重くしてくれる様に申し入れできるという事も知っておく必要があります。(これが、加害者に対しての情状酌量の場面で引用されるわけです。)



2004.01.11