胸椎の偏位(位置異常等)に伴う肋間神経痛と、間違われる心臓疾患

胸椎の偏位(位置異常等)に伴う肋間神経痛と、間違われる心臓疾患

 
 
発痛部位 病名
心臓から 狭心症
心筋梗塞
心膜炎
胸腔内臓器(心臓以外)から 解離性大動脈瘤
肺塞栓
肺高血圧症
胸膜炎(肋膜炎)
自然気胸
腹部臓器からの放散痛 横隔膜ヘルニア
消化性潰瘍
胆道疾患
急性膵炎
胸壁から 帯状疱疹
骨痛
その他 肋間神経痛
心臓神経症
 品行方正な日常生活を送っていても、長島茂雄元読売巨人軍監督のように(平成16年3月4日脳卒中の疑いで)疾病に侵されてしまう場合があります。まして、節制に心掛けていない日常生活を送っている者にとって、突然の胸痛に見舞われますと『これは、ダメかな。』と言う様な思いが頭をよぎるのは当然のことです。
 ここで、『家庭の医学』等での胸痛を発する主な疾患を挙げてみますと左の表のようになります。
 いずれにしてもありがたくない病名ばかりで、前述しました様に『これは、ダメかな。』と言う様な思いを抱くのは当然である様に思えます。
 ところで、この様な病名を気にして病院の診察を受けますと、『異常なし。』で済まされてしまう場合がしばしばあります。胸痛を患者さん自身が認識しているにもかかわらず、医師は『異常なし。』という訳です。この様な場合に胸椎の偏位(位置異常等)に伴う肋間神経痛を疑ってみる必要があります。
その発生機序の一例としては(前後方向への偏位)、次の様なことが考えられます。
1.  脊柱の過後(前)弯による胸椎の後(前)方突出を主因とする、関連肋骨・胸骨の水平方向での後(前)方偏位
2. 脊柱の過後(前)弯による胸椎の後(前)方突出を主因とする、当該胸椎の上又は下の胸椎とのズレ(偏位)に伴う、関連肋骨と胸骨との関節面での歪み。(下図の様に胸椎、肋骨、胸骨はループを描いており、各骨は数種の関節面で接続している為、胸椎だけが勝手に動くことはできない構造になっています。…長時間の荷重(脊柱側弯症など)によっては、一般的に考えられない様な変形を引き起こす場合はあります。)
3. 上記の1.、2.によって当該胸椎の直近の知覚神経が何らかの影響を受けて、肋間神経痛を発生させる。

 この様な機序による肋間神経痛は、胸椎の偏位という物理的な事柄により発生するものですから、『注射』や『投薬』で、偏位(位置異常等)した胸椎が、正常位置に戻るというようなことは、誰が考えても有り得ません。整形外科での物理的な治療方法は、主に『牽引療法』ですが、それ以外は『外科手術』だけのようです。(一部の若い整形外科医が、この事実に気付き、徒手整復法を学んでいるとの話は耳にしますが、日常の診療に利用しているかとの話になりますと、まず聞こえてまいりません。…保険制度の関係から、今までどうりの診療の方がリスクも少なく自信を持って診療できるし、所得(利益)も上がるからと言う事のようです。)垂直方向に短縮している脊椎に関しては『牽引療法』が有効であろうとは誰もが考えます。(例えば、高所から飛び降りた場合の時の様に)しかし、水平方向の偏位に対しては、垂直方向(上下方向)に相当の牽引力を加えてもなかなか目的を達成できません。(針金を完全に屈曲してから、両端を牽引しましても、なかなか針金はまっすぐになりません。牽引力が強すぎた場合には、切断してしまいます。…医療用牽引機器が国内で使用され始めた頃、『60sで30分間の頚部牽引』したという例があり、両上肢のシビレ感が増加したとして、来院された患者さんが居りました。)この様な場合には、脊柱に対して水平方向の力を加えれば容易に動くであろうことは誰にでも想像できます。これらが、椎骨の偏位に対しての加療方法です。(偏位の形態は多岐にわたります。ここでの説明は一例です。)加療方法は色々ありますが、どれが御自身の現状に対して最適であるか検討して受診致しましょう。加療方法を間違えますと、なかなか好結果を得るのに時間を要す事になります。



2004.01.11