「鞭打ち損傷」と、同様の受傷状況で発生する事について
交通事故における傷害と言いますと、先ず「鞭打ち損傷」と言う言葉を、思い浮かべる方が多い様に思われます。しかしながらその実体は、現在でも全て解明されている訳ではありません。 過去から現在までの「鞭打ち損傷」の取り扱われ方は、
しかしながら、この数十年の間の交通事故被害者の取り扱われ方を考えますと、被害者の知識の貧困、不充分な情報公開、実験等に対しての助成金の拠出不足などから、事故処理の当事者である警察、損害保険会社、司法関係者を含め被害者の周囲の交通事故被害者に対しての視線は、かなり差別的であった様に思います。(損害保険会社においては、「鞭打ち損傷」及び関連損傷の存在が認められれば、より大幅な支出を余儀なくされる訳ですから、「当初は『無し』→『有り得ない』→『有るかもしれない』→『有っても条件がある』→『特定の条件でなくてもあり得る』→『頸部だけでなく起こりうる』事を了解している筈なのですが。」認めたくない、あるいは知らない事にしておく。被害者には実態が判ってしまうまで知らせないでおく時期になっております。… 1995年の阪神淡路大震災の際、英国の保険引受シンジケートであるロイズは、その支払いによって破綻するかもしれないとの覚悟をしたそうですが、日本の損害保険会社各社が、火災保険と地震保険を使い分けていた事によって破綻を回避できたと聞いています。しかし、災害現地の被災した方々のおかれた状況等を考えますと、なんと日本の損害保険会社はえげつないのだろうとの思いがしたのは私だけでしょうか。(この件でも国民の多くは、火災保険と地震保険が別物で、火災保険での賠償は殆ど行われない事を知らされたのです。) 胸椎と腰椎にも傷害が発生することは、中学校の理科、高等学校の物理程度の知識でほとんど説明ができます。ただ、原告を含め交通事故被害者も気づかなかっただけです。 資料としましては、 その発生機序に関しては、むちうち症入門 林洋著 且ゥ動車公論社1986年発行に、胸椎部分への影響に関しての記述が既に有ります。 また、最新機器を使用した様々な条件での実験結果は、検証 むち打ち損傷 医・工・法学の総合研究 羽成守・藤村和夫著 鰍ャょうせい1999年発行に、腰椎部分への影響に関しての記述が既に有ります。 しかしながら、これらの発生機序はシートベルト着用義務化によって、更に顕著になりました。 シートベルトを2区画に分けてシートベルト腰・下腹部とシートベルト胸部として説明しますと、交通事故の衝撃によってシートベルトはロックされます。この時傷病者の上体は、鞭打ち様運動によって過前屈すると同時に前方放出様の運動を加えられます。従ってシートベルト腰・下腹部で押さえつけられた腰椎部分にはこの内容だけで、強大な引っ張りの力が加えられます。 また、胸部では、シートベルト胸部のロックによって一方の肩口から反対側の腰部へ胸を横切るように装着されている為、あたかもその部分に堅いパイプでも置いてある様にシートベルトを中心に上体を斜めにねじる様な動きになります。(当然、運転席側と助手席側では捻転方向は逆になります。)ここに、腰部での説明と同様の鞭打ち様運動によって過前屈すると同時に前方放出様の運動が加えられます。これによって胸椎部分には捻転と同時に屈曲という強大な衝撃が加わります。(シートベルト着装時に正面衝突すると、シートベルトに沿って皮下出血痕が形成されることは既に周知の事実ですが、胸椎への影響までは解析されていないようです。…前胸部の強圧によって、肋骨・胸骨は下方に移動し、胸の厚さは大きく減少し、胸椎の捻転と屈曲をより容易にします。) |
ただし、これだけを原因にするには無理があります。中学校の理科、高等学校の物理に有る『波動学』『振動学』での説明を加えれば、その複雑性も有る程度理解できます。 |