『高度医療』と言われている医療と『低度医療』と思われている医療の、錯覚と誤解

　最近『高度医療』という言葉が頻繁に使われる様になりました。それと言いますのも、健康保険で、それらが認められ条件さえ整えば、それらの治療の恩恵に一般の国民も浴することが出来る様になったからです。
　一台数千万円の医療機材など『朝飯前』です。当方が認知している範囲でも数億円の医療機材があります。これらの医療機材を駆使して治療なり手術なりをする事を高度医療という様です。
　しかしよく考えてみますと、体に電磁波を不必要に浴びせ、体を切り刻むことが本当に『高度医療』であるのかということには大いに疑問があります。診断法には問診･視診･打診･聴診･触診等があり、初歩的な診断法が沢山あります。そして、切り刻まない治療法も多々ある場合があります。現に、整形外科領域での腰椎椎間板ﾍﾙﾆｱの手術件数は、１５年前の１／１０に減少していることが新聞報道されております。(すなわち、１５年前に腰椎椎間板ﾍﾙﾆｱと診断されて手術された方々のうち９／１０が手術は不必要であったと言うことなのです。)耳鼻咽喉科領域では、かつて扁桃腺炎に対して切除術を頻繁に行っておりましたが、現在ではほとんど行われておりません。
　本来、『高度医療』とはどのようなものであるべきかを考えますと、可能であれば患者さんに触れる事もなく、患者さんの病態を健康時と同様な状態に出来ることを言う様に思います。患者さんが知らないうちに元気に成るのが、本来の『高度医療』であって、患者さんをいじくり回してようやく元気にすると言うのは、『低度医療』と言うほかありません。
　仮に、ご自身が疾病に罹患したとして、薬も飲まず手術もしないのに元気になる方法と、薬も飲まされ検査もされて、挙げ句の果てに手術をしてかろうじて元気を取り戻す方法とでは、どちらを高度医療と呼ぶかと言うことです。『錯覚』と『誤解』とはこの事でしょう。…手術せずに済むものをなぜ手術しなければならないのかよく考えてみましょう。…手術する覚悟をしてからでも遅くない場合も多々あります。手術は最後の手段です。覚悟は出来ているのですから、『賭』をしてみてください、手術しないで軽快する場合が多々あります。