医師(内科医)と柔道整復師の問診の比較

医師(内科医)と柔道整復師の問診の比較

 熱があって風邪を引いた様な症状で内科に受診するあなたを思い浮かべてください。
@ 内科医が、『どうしました。』と聞いたとします。
A あなたが、『昨日お腹を出して寝ていたので、それで風邪を引いたようです。』と答えたとします。
B すると内科医は続けて『何故お腹を出していたのですか。』と聞いてきたとします。
C あなたは、『いい加減にしろよ、この馬鹿医者め。』と思いませんか。
 現実には、前記の様な内科での問診はないと思います。しかしながら、柔道整復師には、そのレベルより更に一段深いレベル迄の原因の記載が求められているのです。
  怪我をしたあなたが、柔道整復師のもとに受診するあなたを思い浮かべてください。
@ 柔道整復師が、『どうしました』と聞いたとします。
A あなたは、『ぎっくり腰になってしまった様です。』と答えたとします。
B すると柔道整復師は続けて『何故ぎっくり腰になったのですか。』と聞いてきます。
C あなたは、『原因はハッキリしませんが、前屈の姿勢で長時間居たからでしょうか。』と答えたとします。
D すると柔道整復師は更に続けて『何故、前屈の姿勢で長時間いたのですか。』と聞いてきたとします。
E 此処に至ってあなたは、『いい加減にしろよ、この馬鹿者め。』となる訳です。
 この会話では原因記載に関して、別にもう一つの問題があります。『原因はハッキリしませんが、…。』の部分です。自傷事故、労災事故、交通事故、第三者行為によるものの区別は必要かもしれません。(現在の制度では絶対的に必要です。)しかし、それより更に細部まで聞いても、患者さん自身ががわからない場合が多々あります。その典型が、『寝くじき』です。起床したら首が動かなかった経験は、一度や二度は誰しも経験している筈です。このような場合に、前記の様な原因の記載を要求している健康保険等の担当者は、原因をどのように記載処理すべきなのか、発表すべきです。恐らく不可能でしょう。ご本人が覚醒していれば別ですが、それは寝くじきの定義に反しています。ご本人が寝ていないのですから。
  先の会話の続きですが、内科医は、『あなたは、お腹を出して寝ていて、それで風邪を引いたのですから、自己責任があります。』『自傷事故と同じですから、健康保険は使えません。』などとは言わない筈です。
 整形外科医師のもとに来院する患者さんと同様で、柔道整復師のもとに来院する患者さんだけが、好んで怪我をする訳はないのです。中には、『あの接骨院の美人の事務員と親しくなりたいから、怪我をする。』と言う輩は別ですが、一般的には、『怪我はしたくなかったのに、怪我をしてしまった。』という方がほとんどの筈です。原因の如何によって加療するしないの判断をすることはありません。怪我をしている方に対して、柔道整復師の適応症であり、加療の希望があれば対応するのが普通の柔道整復師です。
 接骨院に大切な時間を潰して来院し、治療にも時間を要し、治療費を請求され、暇つぶしに来る者は居ません。それならもっと楽しい場所、おいしいものを食べさせてくれる場所がいくらでもあるのですから。
  この様に、本来不必要とも思われる原因の記載を楯に不正診療等の罵声を浴びせることが、本当の意味での国民医療の為であるのか大いに疑問です。
 この様な無理難題を過去から現在まで、柔道整復師は科せられてきたのです。その結果が、某新聞記事の発端です。本当の意味での国民医療として、その在り方を熟考熟慮して御教授戴きたいものです。

2004.01.11