「古本屋は生き残れるか」シンポジウムの後半は、土屋俊先生(千葉大)の「本を取り巻くデジタル化の波について」。自分の認識が甘くて知らなかったのですが、例の「事業仕分け」の難関をくぐりぬけて100億円を超える予算が認められ、(日本の出版物を網羅して持っている)国会図書館の本がすべてデジタル化される作業が進行中だそうです。これが完成すると、日本の出版物はすべてアーカイブデータとして読めることになります。

しかも本の著作権を乗り越えてデータをダウンロードできる法改正がなされているという。従って、読者はアーカイブ利用料を払うだけで、すべての本をダウンロードできることになります(いわゆる長尾構想)。土屋先生によれば、出版社、国会図書館以外の図書館、取次、本屋、古本屋、目録など、すべてが不要になるということでした。

本というパラダイムが、「紙」から「電子媒体」に移行するということで、雑誌とか漫画、文庫のような消費本はみんな電子本になるでしょう。音楽配信と同じです。本は、紙で残そうと思って作らないと残らないウィリアム・モリスが作ったような芸術作品となる。そうなるとブラッドベリの「華氏451度」の世界の一歩手前という感じで、古本屋は秘密結社のように本を隠し持つ場所として生き残りをはかるしかないですネ。

ともかく土屋先生の話は衝撃的でした。今はどうしてよいかわかりませんが、電子本の世界に変わるのにはあと数年はかかるでしょうから、それまでに対策を練ろう。