「追分コロニー」が3年前に軽井沢町の追分に古本屋を開店したときは、追分を知る人にとっては驚きだったと思います。というのは追分を知る人はご存じのとおり商売をするほどの人の交通量がないのです。追分は華やかな軽井沢町にありながら過疎の村であり、日本の他の過疎の村と同じように平均年齢が70歳を超える廃村寸前の村なのです。私自身は、今年を振り返る(1)で書いたように、売上の不足はネット販売でカバーできると思って開業したわけですが、いろいろな方から忠告をいただきました。

一方、軽井沢町では町内の地域間の発展に大きな格差が生じていて無視できないほどの問題になっています。旧軽井沢の商店街は軽井沢駅前のプリンスのショッピング・モールに人の流れを取られて衰退が激しいですし、もっとも人口が集中する中軽井沢地区も、信越線が廃止されて以降、特急が止まらなくなり一気に町がすたれてしまいました。

そんな危機に対応すべく軽井沢町が「町づくり事業」を発表したのが昨年。「中軽井沢駅の新図書館建設」と「追分地区の景観整備」です。追分は旧中山道の宿場場町で江戸時代の建物がかろうじて残っています。また堀辰雄文学記念館があり、文人・学者が多く滞在したという歴史があります。その追分に下水道の敷設・電柱の地中化・そして旧中山道を石畳にして、景観を守っていこうという計画が発表されたわけです。

この計画は追分地区を含む軽井沢西地区の人たちが長年温めてきた「西地区を遊歩道で結ぶ」という計画案をベースにしていて、追分が廃村になること回避するための最後のチャンスといってよいでしょう。もちろん「追分コロニー」もこの計画は大歓迎であったのですが、なんと軽井沢の他の地区から計画反対の運動がおこりました。この人たちは「考える会」というのを立ち上げ役場に抗議運動などを開始したのですが、追分地区でも残念ながら下水道の負担金を払いたくないという一部の人がこの反対の動きに同調したのでした。

そうなるとこちらもだまっているわけにはいきません。軽井沢新聞など公のメディアで論戦を張る一方、「考える会」に対して異議を申しこむなどの活動をしました。幸いなことに「考える会」の人が、地域エゴのような議論しか展開できなかったためか、反対運動に賛同する人は少なく夏以降は反対運動はまったくなくなりました。

「追分地区」ではこの冬に旧中山道の測量も始まり「町づくり」計画は予定通りに実施される状況です。ということでこの「町づくり事業」は追分地区にとっては今年の最大の良いニュースだと思います。しかしながら、景観の改善がなされても自然に人がやってくるわけではありません。やはり「追分の文化遺産」を活用して、さまざまの活動をしていく必要があると思います。追分コロニーでしてきているようなイベント活動などもその意味で頑張っていく必要があります。「町づくり事業」が完了するのが3年後、追分コロニーの浮沈だけではなく、追分地区の「町づくり」のためにも来年は大事な年になると思います。頑張りたいと思います。