=国立図書館保管書物=「魔術読本」より
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◆魔術を使うということ◆ ここでは、人間が扱うことのできる黒魔術について読み解いていきましょう。 黒魔術は言葉を使って精霊と契約を交わし、その力を発動させるものです。 発動にはそれ相応のキャパシティと精霊や世界の理に対する知識が必要となります。 |
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◆キャパシティについて◆ まず、キャパシティとは何か。 それはひとが魔術を使うにあたって必要となる”容量”のことを指します。 人にはそれぞれの大きさのキャパシティがあり、一度に使える魔術も異なってきます。 わかりやすいように図を使って説明していきましょう。 下図に大きさの違う水槽とコップがあります。この水槽の中の水を魔力とします。 「魔術を発動させる」には、 この水槽の中からコップを使って魔力をくみ出す必要があります。 Aの水槽は大きいですが、コップが小さいために一度に大きな魔術は使えません。 反対にBは、コップが大きく一度に大きな魔術を使えることになりますが、 もともとの魔力の量が少ないために回数がもちません。 |
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水槽とコップ、このふたつを合わせて考えた量がその人のキャパシティとなります。 *水槽の大きさは生まれてから死ぬまで、ほぼ変わりません。 しかし、コップの大きさは年月を重ねるごとに小さくなっていきます。 それだけ純粋な力が失われていくということなのです。 コップのもとの大きさも小さくなる速度も人によって異なります。 |
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◆知識について◆ 上述したキャパシティに加えて魔術を扱う上で重要なもの、それが”知識”です。 水槽とコップのふたつがキャパシティとすると、 そのコップを持ち上げる力のことを知識と言います。 例えば水槽の大きさが同じ大人と子供がいます。 |
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子供の方は、コップが大きいために一度に多量の魔力がくみ出せるものの、 持ち上げる力(知識)がないためにとっても不安定になります。 このような状態では、うまく魔術を発動させることは出来ないでしょう。 これに対して大人の方は、力(知識)があるために安定しています。 しかし年月とともに小さくなったコップでは一度に少量の魔力しかくみ出すことは出来ません。 大きな魔術は使えないでしょう。 あくまでもこれは例です。 同じ年齢の人でも、もともとの水槽やコップの大きさに違いがあり、 必ずしも大人の方が安定しているとか子供の方がたくさん魔術が使えるとか、そういったことはありません。 要は 『魔術がとても使えるひと=もともとのキャパシティが大きく、 精霊や世界に対する知識の豊富な子供』 『魔術がとても使えないひと=もともとのキャパシティが小さく、 精霊や世界に対する知識が豊富でない老人』 となるワケです。 魔術のトップである宮廷魔道士に若い人が極端に多いのは、これらが原因なのです。 |
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◆魔術発動に際しての言葉のつむぎ方◆ 黒魔術を発動させるには精霊と契約を交わさなければならない、ということは前述しました。 ではどのように言葉をつむげば良いのでしょうか。 まず、契約に使われる言葉は一般的に以下のように構成されます。 「契約相手(つまり精霊のこと)」「魔術の効果」 例: 炎の精霊サラマンダーよ お前の吐き出すその息吹 無数の矢となりて降りそそげ 上記のものでも十分発動しますが、言葉には知識の浅さが表れています。 炎の精霊に対して名前しか示すことが出来ず、呼びかけには少し弱いと言えます。 例えば、呼びかけの部分を「すべての力の源よ 深淵より燃ゆる赤き炎よ」とした場合、 ある程度はランクアップするでしょう。 呼びかけはより詳しくなり術者の精霊に対する見解もわかります。 炎がサラマンダーから生まれるものではなく、炎そのものがサラマンダーであるという考えが この呼びかけには込められているわけです。 契約の言葉が正確であれば術はそれだけ安定します。 なるべく正確につむぐように心がけましょう。 ただ、言葉が増えればそれだけ正確に表現できるものの、魔術を使う場面になって あまりにも長い言葉をつむぐわけにもいきません。 ですので、 「どれだけ短い時間で簡潔に言葉をつむぎ出せるか」 これが術者の能力やセンスに依存してくるのです。 |
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◆属性について◆ 最後に、魔術を使う上で少なからず影響を与える「属性」について説明しましょう。 生きているものには全て属性があります。 それは人にも当てはまり、一般的に「〜の加護を持つ」と言い表わされます。 加護があればその属性への適性や耐性が生まれ、魔術もぐっと使いやすくなります。 例えば火の加護を持つ人は火の魔術が得意になり、 火に対しての耐性も少し強くなるというわけです。 しかし、人間においてはこの加護に片寄りが見られます。 まず圧倒的に火の加護を持つ人が多く、次に少し減って地の加護、さらに減って水の加護、 風の加護、といった様子です。 またこの他にも、聖と闇の加護を持つ人もまれに見られます。 しかし一生のうちで聖と闇の加護を持つ人と出会う確率は限りなくゼロに近いとされています。 なぜこのような片寄りを見せるのか、詳しいことは分かっていません。 魔術学者のロズウェル氏によれば「数ある動物の中でも火を扱うことのできる動物は 人間くらいであろう。火を利用し、大地に根づいた生活を選択したことが 加護の片寄りを生んだとも言える。/著書『精霊へのいざない』より抜粋」 と説明しています。 まだまだ謎の多い分野、これからの研究に期待がかかっています。 |
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