憲法第一問
 以下の場合に含まれる憲法上の問題点について論ぜよ。
 再婚を希望する女性が,民法の再婚禁止期間規定を理由として婚姻届の受理を拒否された場合
 女性のみに入学を認める公立高等学校の受験を希望する者が,男性であることを理由として願書の受理を拒否された場合


 小問1について
 本問では、再婚を希望する女性の婚姻届の受理が、民法733条1項の規定する女性の再婚禁止期間規定により拒否されている。そこでかかる規定は性別を理由とする不当な差別であって、憲法14条に違反し違憲では無いかが問題となる。
(1)  この点、まず14条は法適用の平等のみならず、法内容の平等まで要求しており、立法者をも拘束するものというべきである。なぜならいくら法適用が平等でも、そもそも法内容が不平等では無意味だからである。
(2)  もっとも、かかる法の下の平等とは言っても絶対的形式的平等を意味するものではなく、合理的区別を許容する相対的平等を意味するというべきである。なぜなら個人の差異を無視した形式的平等では、かえって個人の尊厳が害される結果となるからである。
(3)  では、憲法の許容する合理的区別か否かはいかに判断すべきか。合憲性審査・判定基準が問題となる。
 思うに法の下の平等は、それ自体で問題となるものではなく、常に他の権利との関連でその差別的取扱いが問題となるものであるから、その権利制約の合憲性審査・判定基準に従って判断すべきである。もっとも、14条後段に列挙された事由に基づく差別については、それが歴史的に差別されやすい事由であり、同時に不合理な差別でもあることから、厳格に審査すべきである。
 本問の場合、婚姻の自由という自己決定権(13条)についてなされている、性別という後段列挙事由に基づく差別的取扱いであるからその合憲性は厳格に審査すべきであり、合憲性は推定されず、@立法目的が必要不可欠であり、かつA目的達成のための手段が必要最小限度である必要があるというべきである。
 これを本問で問題となっている民法733条1項についてみると、@立法目的は嫡出推定の重複を回避するというものであり、目的の必要不可欠性が認められるとも考えられる。しかしながら目的の必要性はそれにより損なわれる他の価値も含めて考慮すべき問題であるところ、本問の待婚規定により損なわれるのは女性の結婚の自由である。そして誰と何時結婚するか、しないかといった事由は本来個人の自由な意思に委ねられるべきものであり、又個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して定められなければならないものである(24条)。とすれば、嫡出推定の重複の回避という目的は、婚姻の自由を制限してまで達成すべきものであるとは言えず、そもそも立法目的の必要不可欠性を欠くというべきである。
 また、仮にこれを認めたとしても現代ではDNA鑑定などにより、容易・迅速かつ確実に誰が親かを明らかにすることができるのであるから、A手段の必要最小限度性も認められない。
 従って、民法733条1項は違憲であると考える。
 小問2について
 本問では、女子高に願書を出した者が男性であることを理由に受理を拒否されている。そこで、かかる取扱いはやはり14条違反として違憲では無いかが問題となる。
(1)  この点、本問で問題となっているのは高校で教育を受ける権利(26条)という重要なものであり、かつ性別を理由とする差別であるから、小問1と同様に厳格にその合憲性を審査すべきものとも考えられる。
 しかし、女子高が設けられたのは歴史的に家庭に閉じ込められ高等教育を受ける機会を奪われてきた女性に、教育を受ける機会を与えることを目的とする積極的差別是正措置によるものであるのに、これを厳格に審査し安易に違憲としてしまうのではかえって差別の解消の機会・手段を失わせる。そこで、このような場合には審査・判定基準を緩めて検討すべきである。
 もっとも、これを広く認めすぎるとかえって逆差別となり、また差別の固定化を招き、偏見をもたらすなどの危険もある。
 そこで@立法目的が重要であり、かつAその目的達成のために手段が必要最小限度であることが必要というべきである。
(2)  本問の場合、前述のように@立法目的は女性に高等教育を受ける機会を提供することにあり、歴史的経緯を考えればその重要性は認められる。
 そして、その目的達成のために女子高を設置することは、その数・程度などにもよるが、A一応最小限度のものであると認めることができる。
(3)  従って、女子高の設置は14条に違反するものではなく、本問の取扱いは合憲である。
以上


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