BLUEIII ロックンロール ジー・クン・ドー |
第2の部屋・・・byベイビー佐々木
『 燃えよドラゴン』
’73年公開当時のポスター |
全てがここから始まった。そう断言できる。 それまでの日本では、香港や中国の映画が公開されたことは、殆どなかったが、このハリウッドと香港の合作映画である「燃えよドラゴン」が、全ての国境と壁をもブチ破ったのだ。 しかも、日本でこの映画が公開されたとき、主演のブルース・リーは、既にこの世の人ではなかったと言うのもまた、センセーショナルであった。 そして、この1本のお陰で、香港映画は見直され、日本でも香港製功夫映画が続々と公開され、一大ドラゴン映画ブームが巻き起こる。 俺もそんなさなか、10歳年上のいとこに、「すげーカッコイイ映画がある!」と、無理やり連れて行かれたのが、この「燃えよドラゴン」!!だ。しかも、同時上映は、何と 「ドラゴン危機一発」!そう、あの頃大ブームのお陰で特に地方なんかでは、何回も何回も再上映されていたんだね。 つまり、幸運なことに、俺は、ブルース・リー念願のハリウッド主演第1作映画と、そのきっかけを作ったともいえる記念すべき香港での主演第1作映画を同時に観てしまったのだ。 そして、そのカッコよさに現在まで打ちのめされ、人生までも変えさせられてしまうのだった。 |
’73年公開当時のパンフレット |
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表紙は同じでも、初公開時とリバイバル時では若干内容が異なる。最も違う点は、後ろから3ページ目、初公開時では、写真がジョン・サクソンに殴られるヤン・スエと、宴会場で会話するジョン・サクソンとジム・ケリー。 内容は、なんと大山倍達や、千葉真一の映画の感想収録。一方、リバイバル版の方は、それら日本の著名人の感想をバッサリカット。代わりにブルース・リーの日本での公開作品の興行成績や、動員数(ちなみに「燃えよドラゴン」の観客動員数は77万人)などが書いてある。 その他、変わった点と言えば、ロバート・クローズ監督のプロフィールや、ブルース・リーのプロフィール後ろから7ページ目のシー・キエンの写真が、自著を持ったブルース・リーの写真(死亡の塔で後で使われるシーン)になっていたり、後ろから4ページ目の題名が違っていたりしている。 これは、初公開時、ブルース・リーはまだ無名だった為で、リバイバル時には、日本でのブルース・リー大ブレイクに応じて、ブルース・リーの記事がよりクローズアップされていると思われる。 |
ケイブンシャの小説本 |
台詞入りサントラ |
音楽だけのサントラ |
70年代当時は、まだビデオやDVDおまけにCDなんてものが存在していなくて、ブルース・リーに出会えるのは、映画館の中だけだった。 だから、ファンは(もちろん俺も)、映画館に何回も通って、ブルース・リーを堪能するしかなかった。そして日本人である俺たちは、肌の色、髪の色など、果てしなく日本人と同じ香港の東洋人ヒーローブルース・リーと、よく自分を重ねたりしたものだった。そう、スティーヴ・マックィーンや、クリント・イーストウッドら白人スターは、手の届かないような存在だったけど、ブルース・リーは、ちょっと容姿が似ているだけで、自己満足に浸れたのだ! そして、映画館だけでなく、自分の家でもブルース・リーを満喫したくて、手を出すのがやはり映画雑誌「ロードショー」や「スクリーン」などなど。そしてこの燃えよドラゴン。上半身ハダカに、黒ズボンのピンナップを眺めては、ブルース・リーのポーズをとってみたり、顔真似したりと、自宅でブルース・リーになりきっていたのだった(ボンクラのはじまり)。 そして次に手にするのはレコードだった。映画の中で、カッコよくかかってたあの音楽だ。本当はアルバムが欲しかったんだけど、当時のオイルショックのせいで、アルバムは売り切れ。やむなくシングル盤を買った。ラロ・シフリンのハード・ジャズが、メチャクチャカッコイイ! このテーマ曲は、今でもそうだが、当時から、ラーメン屋や、レストランでもよくかかっていたのを思い出す。B面は、ラストの大乱闘の時かかる「ザ・ビッグバトル!」。当時、部屋でこの曲をかけながら、鏡の前でひとり大乱闘をしていた記憶がある。 続いて、やっと買ったアルバムは、全編ラロ・シフリンのファンキーなジャズ大会で、今もCDで購入できるが、一家に一枚の名盤だ。 続いて、映画の中の台詞を、カッコイイとこだけレコードに収録した、台詞入りサントラが出た。これはもう、まるで部屋の中が映画館になった気分で楽しかった。もちろん、ブルース・リーのアチョーっていう怪鳥音も入っていて、これを聴いて良く真似したものだ。ブルース・リーの声は、この「燃えよドラゴン」でしか聞くことが出来ず、他の映画の声は、他の人の吹き替え版である。とにかくブルース・リーの声はカッコイイ! 最近日本でも発売になった「ロスト・インタビュー」でも、ブルース・リー本人の声が聴けるが、とにかく特徴的で、インパクトがある声だ。ビデオ、DVD全盛の今では、前時代的なものだが、今でもこのレコードは、とても愛着がある。 そして、映画の内容をより深く知りたくて、小説本にも手を出した。しかし、この本は、映画と若干内容が異なり、特にラスト、宿敵のハンを倒す場面、なんとリーが跳び蹴りでハンの義手を蹴り、刃の付いた義手は、ハンの胸に突き刺さるのだ。そしてその後、おなじみのローパーとガッツポーズをするシーン(映画では二人とも重い表情だが)なんとリーは、勝利のVサインをローパーに送り、ローパーもにっこり笑いながらサインを返すのだ。 当時子供の俺でも、このシーンは、映画の方が一千倍くらいカッコイイと思った。 |