▲見どころ、読みどころ▼
この詩の舞台になっているのは、江戸川区に住んでいたときのアパートです。あの部屋からは、ディズニーランドで打ち上げる花火が見えました。風呂からあがったあとで、花火を眺めて就寝するのがあの頃のわが家のスケジュールでした。花火があがる様子が子供にはバンバシュウと聞こえ、もぞもぞと指を動かしながら腕をあげるのがその真似です。
花火が終わって、さあ寝ようと電気を消すのですが、まだ眠くない子供は本を持ってきて読んでもらおうとするのです。かまっているといつまでも寝ないものですから、わたしたちはさっそく寝たふりををするという親子の火花を散らすもうひとつの花火合戦がここに飛び火しているわけです。子供はまだ《かきくけこ》がはっきりいえなくて、こじかのバンビがとじたのバンジとわたしたちには聞こえました。発音の蒙古斑とでもいうのでしようか。一歳と五ヶ月くらいのことでしょう。音楽ではおもに8ビートのロックでビートルズとサザンオールスターズ、民謡ではシャッフル系のものを好んでいたころです。うんうん、なかなかいい趣味をしているぞ、がんばって耳を澄ませよと思っていました。では、どうぞ。