〜2003・冬、門司港〜




 関門トンネルを自転車で通る場合、20円払わねばならない。
 この料金箱は下関側にだけあって、門司から来る場合は出るときに払うのだが、つい忘れてしまう。
 忘れると門番のオヤジに大罪を犯したかの如くどやしつけられるので、極力忘れないようにしなければならない。


  
関門トンネル下関側入口 関門トンネル門司側入口


 トンネルの長さ自体は1キロにも満たない(人道部分)。
 中ではジョギングをしている人などもいる。
 当然、外は何も見えないので、てこてこ歩いていくだけである。


昔の壁画 九州の風景


 かつてこのトンネルの壁面にはりんご並木が描かれていた。というより、りんごのシールがべたべたと貼られていた。
 もうすっかり忘れていたが、門司側の入口にこの壁画がモニュメントとして残されている。
 なんで海底トンネルの壁画がりんご並木なのだろうかというのはともかく、「皆様に愛されてきた林檎並木をいつまでも美しい思い出としてここに残します」 などと書かれると、なんだかとても素晴らしいものだったような気がするから不思議なものである。


Backstreets of Mojiko 東本町商店街


 「和布刈神事」で有名な和布刈神社の前を通り、ノーフォーク広場を抜けて町へ降りていく。
 雨の門司港はもの悲しい。
 ひとりとぼとぼと自転車を押して歩く。すれ違う人もない。


空家が目立つ レトロな駅舎
草陰の鉄路 街角の風景@
街角の風景A 街角の風景B


 写真を撮りながらうろうろしているうちに、門司港レトロの象徴である門司港駅に出る。
 駅前ロータリーはつぶされて広場になり、駅舎自体がすっかり観光地と化している。
 しかし駅前の商業ビルにはテナント募集の張り紙が目立ち、九州の玄関として栄えた昔日の面影はない。


門司港駅舎 門司港駅舎内


 かつてはこの町の中心であったと思われる百貨店はシャッターが閉まっていた。


DEAD or ALIVE? DEAD??


 正月で閉まっているのかと思ったが、どうやら死んでしまっているようだった…。
 それでも、賑わっていたであろう頃の名残をまだ微かに留めていて、胸が痛んだ。


DEAD… 路地裏
商店街 閉まり続けるシャッター
商店街の隙間 門司信用金庫
閉まり続ける店舗群 追憶


 門司港駅の左手は「門司港レトロ」で整備され、小奇麗な観光地に変わってしまった。
 しかし、本当の門司港のレトロな魅力は何気ない街角の風景にある。
 自分だけの門司港を探しに、再び自転車に跨って出かけることにする。


銀天街 レトロな建物@
レトロな建物A 門司港犬
門司港犬 レトロな建物B-1
レトロな建物B-2 レトロな建物C
レトロな建物D レトロな建物E


 降り始めた雨が次第に強くなる。
 この町を去る時が来たようである。
 再訪の日は来るだろうか。いずれにせよ、今のままいつまでも変わらないことを願わずにはいられない。


春の名残り 新門司港





<ご案内> 鹿児島本線「門司港」下車。 もしくは、山陽本線「下関」下車後、徒歩またはバス。