オフコースは5人の頃がいちばん良かった。
 …などと言うと「当たり前やろ」とツッコまれそうだが、多くのグルーピーたちと同じように、私もオフコースの最高傑作は"Three and Two"と"We are"だったと思っている。
 とにかく全盛期のオフコースには、比類なきカリスマ性があった。清水や松尾でさえ後光が差していた。
 では、ガロのD-45、アリスのモーリス、チューリップのES-335のように、その当時の彼等を象徴するアイテムと言えば何だろう。
 松尾のB.C.Rich、小田のタンバリン、または相撲部屋の新弟子みたいな富樫のフリューゲル、などと回答されるような極度にアブノーマルな方を除けば、誰もが次の3本を挙げるのではないだろうか。

  ・Ibanez AR550CS
  ・Ibanez AR550PW
  ・Ibanez AM205AV

 コアなフリークスたちは、この3本を「三種の神器」または「斧琴菊」と呼び、崇め奉っている、と思う。
 今でも映像で確認することが出来るが、伝説の「1982・6・30」ライブで、やっさんは前半AR550CS、後半AR550PW、アンコールでAM205AVを弾いておられる。
 (他、「愛の中へ」でダブルネックのARを使用している)
 AR550CSは21世紀の今なおやっさん愛用の1本であり、ソロライブ等で実物をご覧になった方も多いのではないだろうか。

AR550CS AR550PW


 ARというギターは実に美しい。レス・ポールのようにガキっぽくなく、ストラトキャスターのように無粋でもない。
 エレキギターとしては珍しい左右対称のフォルム、優美な曲線を描くソリッドボディに輝く三角オーナメント、チェリー・サンバーストとポーラー・ホワイトという上品極まりない美しい彩色…。
 世界で最も美しいギターと言っても過言ではないだろう。
 そして、細身で長身なやっさんの、その知的な面差しと静かな佇まいに、この美しいギターは身震いするほどよくキマっていた。


AM205AV


 やっさんの代名詞といえるAR550に較べれば、多くの人にとってAM205AVの印象はけっして強くないのかも知れない。
 しかしながら、「1982・6・30」の最後に超重量級のARから持ち替えて、ステージを軽快に動き回るやっさんのオフコース最後の姿は、今なお胸を熱くするものがあると思いませんか、お客さん。

 と、いうわけで、ここに紹介する3本のギターは、もちろんあの日にやっさんが弾いていた現物ではありません。
 しかし、たとえ燃えカスの燻りであっても、まだ熱い心が残っているのなら…
 ネックに手を伸ばして静かに3弦14Fをチョーキングすれば、オフコースのレコードにそっと針を落として目を閉じた4半世紀前のあの日々に、いつでも戻っていくことが出来るのです。