読者が目にする加工された世界

■ジョジョに限らず「漫画」というものの「絵」や「ストーリー」は往々にして、「読者」を意識した加工が施されるものである。例えば「正体不明のキャラクターが黒塗りで描かれる」のは読者向けの加工の好例であろう。またキャラクターが物語の始まりや終わりで読者を意識した口調で語り始めるというのも、ストーリー面での読者向けの加工である。

■ただジョジョにおける加工はカラー掲載時の「色」などを見ても分かるとおり、かなり自由かつ大胆に行われている。それはまるでヤドクガエルの警告色のように、「描かれているものをそのまま信じてはいけない」と訴えているかのようである。

■漫画という形で読者が見るジョジョの世界は、その世界内で実際に起こっている現実をそのまま描いているとは限らない。オペラのストーリーが歌とともに語られるように、ファッションショーがこれからの流行を極端な服飾で表現するように、ジョジョの世界も必要に応じて加工された後に読者に提供されている。以下にこれらの加工のうち、重要と思われるものを取り上げていく。

ジョナサンとディオの身長

ジョジョ1部では成人したジョナサン・ジョースターの身長は195cmであり、一方ディオ・ブランドーの身長は(作中で言及はないが)おそらく10cm前後は低い。しかし作中で二人が並んで立った時には「顔の高さ」は同じに描かれている。この理由は、二人の身長差を正しく描くと、それを見る読者が無意識に立場や強さなどの「上下」のイメージを持ってしまい、それは両者を対等の者として対比するジョジョ1部のテーマ的に望ましくないからである。そしてこの、「対等の者を同じ顔の高さに描く」という手法は、2部のジョセフ・ジョースター(195cm)に対するシーザー・ツェペリ(186cm)、3部の空条承太郎(195cm)に対する花京院典明(178cm)などでも踏襲されていくことになる。

広瀬康一の身長

ジョジョ4部の広瀬康一・小林玉美・間田敏和の3人は、「作中で身長が縮んだキャラ」として有名である。広瀬康一の本来の身長は157cmで、登場初期はそれに準じて描かれることもあったが、それ以降は明らかに100cm前後しかない。彼はどうやら承太郎や仗助などとの身長差を「誇張して」小さく描かれるようになったらしい。そして玉美や間田は「康一より格が上ではない」と示すために康一を上回らない身長にされている。いずれにせよ彼らについては、「実際のジョジョの世界」と「読者の見る世界」とで大きな歪みが生じているのは疑いない。また康一の持つ人型スタンドであるエコーズACT3も本当は、本来の康一の身長に合わせた姿なのだろう。

吉良吉影のネクタイ

ジョジョ4部のサラリーマンな殺人鬼、吉良吉影のトレードマークは「ドクロが描かれたネクタイ」である。残念ながらこれはおそらく、吉良吉影というキャラクターを表すために、「読者が見る映像に付け足された」ものである。つまり実際の彼は普通のネクタイを付けている。そう考えないとあまりにも不自然である。

ジョルノ・ジョバァーナの髪型

前髪が3つの大きな輪を描くジョルノ・ジョバァーナの特徴的な髪型は、もしかすると誇張してそう描かれているだけで、実際はもっと曖昧で地味な見た目かもしれない。ちなみにジョルノのモデルはミケランジェロのダビデ像である。確かにダビデ像の前髪を大げさに誇張すればジョルノの前髪に辿り着きそうではある。

トラック運転手の顔

ジョジョ5部のクラフト・ワーク戦では、グイード・ミスタが敵スタンド使いだと思って対峙したトラック運転手が、「いかにも敵らしい箔のある顔立ち」をしていたが、次のシーンで実は一般人だと示された途端にモブキャラの顔に変わっている。これもジョジョにおける「演出上の加工」の1つであり、読者に誤認させるために一時的にそう描かれたわけである。なお、「モブキャラが重要キャラのような顔立ちに描かれる」この演出は逆に考えると、作中の重要キャラは演出上「人目を引く顔立ち」に描かれているだけで、実際はもっと十人並な顔であるという理屈も成り立つ。ただ実際の彼らが元から人目を引く顔立ちであれば補正は必要ないわけで、つまり作中のどのキャラに顔の補正が行われているかは、考えたところで結論は出ないだろう。(作中で顔立ちについての言及があれば話は別だが) 

翼の上のサッカーボール

ジョジョ5部のノトーリアスB・I・G戦でトリッシュ・ウナが見た「ジェット機の翼の上を転がるサッカーボール」は、実際は「ノトーリアスB・I・G」であり、トリッシュの誤認した姿がそのまま絵として描かれている。

枯れ木の彫刻

ジョジョ7部のワイアード戦で、ジョニィ・ジョースターが枯れ木を人の形に彫刻し、敵のポーク・パイ・ハット小僧がそれをジョニィと誤認するシーンがある。この彫刻は目鼻口までしっかり描かれているが、これも上記のトリッシュの例と同じく、ポーク・パイ・ハットが誤認した姿をそのまま描いただけであり、実際は一瞬人間に見間違えれば充分程度にしか彫られていないはずである。

スタンドは半透明

ジョジョ6部のグーグー・ドールズ戦で言及されているとおり、スタンドは本来「半透明」であり、向こうの景色が透けて見える。作中でその通りに描かれることが少ないのは、もともと濃い絵柄がさらにごちゃごちゃして分かりづらくなってしまうからであろう。ともあれ作中のスタンド使いにはスタンドの向こうは常に見えている。ただし4部でハーヴェストが吉良吉影の前方に壁を作り出して視界を遮ったように、スタンドがごちゃごちゃしていればその向こうを著しく見えにくくすることは可能である。

命令操作タイプでないスタンドへの命令

ジョジョ3部終盤のクリーム戦では、ポルナレフがシルバーチャリオッツに自分の体を引っ張らせる際に、チャリオッツにあれこれ命令している。だがポルナレフはチャリオッツをそれまでずっと、「自分のもう1つの体」のように動かしてきており、それを基準に考えるとこのシーンは不自然である。またこれと同じ類のシーンは4部のキラークイーンや5部のゴールド・エクスペリエンスなどでも見られる。これらはおそらく読者向けに「シーン」自体が加工された演出である。つまり、実際の彼らは命令のセリフを発することなく行動している。この演出の理由は、これらのシーンを実際の光景そのままに描くと、地味かつ読者から見てそのキャラがどう行動しようとしているのか伝わりにくくなってしまうからである。ジョジョの演出は「派手さ」「熱さ」「わかりやすさ」を重視しており、そのためならこのレベルの「現実」と「描写」の食い違いも許容するということなのだろう。

ポルポの指食い

これは演出ではなく本当に食べている。詳しくは『ブラック・サバス』のスタンド解説を参照のこと。

■とりあえず思いついたものをひと通り。また何か思いついたらその都度加筆する予定。

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