アトゥム神
ATUM:創造の神
Sephirah-No.9
本体名:テレンス・T・ダービー
DIOの館の執事、ダニエル・J・ダービーの弟
能力:他者の心をYES/NOの2択で読む
スタンド形成法 | 射程距離 | パワー | |
---|---|---|---|
アトゥム神 | 身体・能力作業体 | 数m | 低 |
人形 | 霊魂寄宿体 | − | − |
当ページの要点
- ジョジョ3部に登場するスタンドは全て、「生命の樹」と呼ばれる図形に関係している。
- エジプト9栄神のカードのNo.9であるアトゥム神は、生命の樹のセフィラのNo.9に配置される。
- アトゥムのセフィラは成長するものが、次なる分野への移動に備えた状態を表す。
- アトゥム神は他者の魂の状態から、次の行動などを読み取ることができる。
セフィラ解説
ジョジョ3部に登場する22枚の「タロットカード」は、占いの道具としてよく知られ、それぞれのカードにはさまざまな解釈が与えられている。そしてその解釈法の1つに、『生命の樹』と呼ばれる図像を絡めたものがある。生命の樹とは、宇宙・生命・人類・個人など、この世界の中で進化・成長する全てのものが、成長する際に辿る変化の共通性を図像化したものである。「セフィロトの樹」とも呼ばれるその図は、「状態」を表す10個の円形「セフィラ」と、円形同士を結び「変化」を表す22本の小径「パス」から成り、タロットはパスの方に対応している。
一方、第3部後半には「エジプト9栄神のカード」なるものが登場し、こちらはセフィラに対応している。そしてセフィラの9番目である「アトゥム」は、「総括せしもの」を暗示するカードである。(なお「アトゥム」という名称は、セフィラをエジプト神話の神々に対応させたジョジョでの独自名称であり、正式なセフィラ名は「イェソド」(Iesod:基礎)である)
ある分野内で活動してきた成長体が、そこでの成長に一段落を付けた時、成長体はそこまでの成長によって生じた雑然とした状況を「整理」する必要がある。例えば会社での商品開発なら、決定案以外のボツ案の廃棄などである。その整理によって成長体は次なる成長へと、身軽かつエネルギーを集中した状態で向かうことができる。これがアトゥムの表す状態である。
そしてアトゥムの状態から成長体が向かう先は2つある。1つは別の分野。もう1つは今いる分野に改めて挑むことである。牛が食物を反芻してさらなる栄養を吸収しようとするように、成長体も成長を一段落させた状態から再度その分野に挑むことで、さらなる成果を得られることが多い。この場合成長体はアトゥムからの再開始を必要なだけ繰り返し、充分な成果が得られたり、これ以上の滞在は無駄と判断したりした時点でその分野から「脱出」し、10番目のセフィラである「オシリス」へと変化することになる。
なお、ここからは余談となるが、成長体がアトゥムから今いる分野での再開始の道を選ぶ時、そのセフィラは便宜上、生命の樹の上方へと戻される。戻される位置は2〜5番目のセフィラの中心辺りで、生命の樹の思想ではここには、「ダアト」(Daath:知識)と呼ばれる「隠れたセフィラ」が存在するとされる。またこの再開始を繰り返すほどに成長体は、生命の樹の左半分が大きく右半分が小さくなる、「カップ(杯)」と呼ばれる状態が強まっていく。このカップは生命の樹の「4つのスート」と呼ばれるものの1つで、トランプの4つのマークと似たものであり、カップは「ハート」に対応している。
スタンド解説
■本体テレンス・T・ダービーが行う質問に対する、相手の「魂の反応を見る」能力を持つ人型スタンド。フクロウのようなその顔にはレンズのように丸い両目が曇りなく光り、顔の下半分は平らで鼻も口もなく、顎の両脇から伸び出たパイプが小さくカーブして喉元へとつながり、まるで呼気をループさせるかのような外観になっている。(また顔の平らな面の右左には、それぞれ大きく「T」と「D」の文字が描かれている) またその頭頂部は左半分が段差になって一段高く、そして全身には大量のハートのマークが、肩や膝に殻状に被さったり、体表に描かれたりしている。
■アトゥム神の目には人間の姿が、サイケデリックな模様のエネルギーに包まれたように見え、ダービーはそのエネルギーの状態から相手の魂の状態を読み取る。ただしそれは相手の思考まで読めるようなものではなく、質問に対して相手の心に働く「肯定と否定の度合い」を「YES」か「NO」で読めるに留まる。作中での「YES」と「NO」それぞれの描写を見ると、「YES(肯定)」の時にはエネルギーは体表近くで落ち着き、「NO(否定)」の時には泡状のエネルギーがアドバルーンのように体からいくつも浮き上がっている。おそらくダービーはこの情報をメインにして否定の強さと、逆説的に肯定の強さを判別している。そしてダービーの言によると、「どんな聖人も天才詐欺師も魂の反応を偽ることはできない」ため、この読心術が相手の本心と食い違うことは絶対に無い。
■アトゥム神にだけ見えるこの特殊なエネルギーは、おそらくアトゥム神自身が発しているものである。コウモリが超音波を発するように、アトゥム神は両目からこの特殊な波長のエネルギーを放出して、相手の魂の表面にくっつけて覆わせる。そしてこのエネルギーは、ダービーが行う質問に対して相手の否定の意志が強いほどに、その者の肉体に斥力を発生させて離れようとする性質を持ち、これが泡のような見た目としてアトゥム神の目に捉えられるのである。このエネルギーは最低でも数10秒以上は相手の魂の表面に残り続け、一度質問すればその反応を数10秒以上見続けられる。またダービーはこのエネルギーの読解に相当に長けているらしく、例えば相手に複数の質問を立て続けに行って、それぞれの質問に対する相手の魂の反応を別々に読み取ったり、相手の決断が実行に移される兆しをエネルギーの変化で読んで、相手の人型スタンドが殴ってくる一瞬前に攻撃をかわしたりもできる。
■テレンス・T・ダービーの実兄であるダニエル・J・ダービーは「オシリス神」のスタンド使いであり、「賭け勝負で負かした相手の魂を奪う」能力を持っている。アトゥム神も基本的にこれと同じことができるが、その性質には少し違いがある。オシリス神が「魂を抜き取れる状態にした後」に焦点を置いた能力であるのに対して、アトゥム神は「魂を抜き取れる状態にするまで」に焦点を置いた能力といえる。この違いからダービー兄は賭け勝負をスタンドなし(イカサマはあり)で行うが、ダービー弟は読心能力を使える。また魂を奪う際には、オシリス神はそれをかなり力まかせに行えるが、アトゥム神は読心能力の延長能力を補助として必要とする。(これについては後述する) そして魂を奪った後は、オシリス神はその魂を「コイン」に変えることで単独で保管できるが、アトゥム神は人形を「魂の容れ物」として用意しておく必要がある。
■テレンス・T・ダービーは兄とは違ってテレビゲームを得意としており、賭け勝負もそれで行う。読心能力が役に立つかはゲームジャンルによって大きく変わるが、ダービーは自分のテクニックによほど自信があるのか、ジャンルには特にこだわらないようである。そしてダービーは勝負の間、ゲームで相手が採る行動を読むのとは別に、アトゥム神で相手のある心理状態を読んでいる。それは勝負自体に対する相手の「ネガティブな心理」である。相手にとって勝負が好調な間は、当然ネガティブな反応はほとんど見られないが、勝負が不利になってくるとネガティブな心理はどんどん強くなっていく。そして相手が勝負に負けた時、あるいはもう勝てないと勝負を諦めた時、勝負に対するネガティブな反応は極大を示す。アトゥム神はその、相手の精神のエネルギーが限りなくゼロに近づいた一瞬を狙って魂を奪いにかかる。さらにその時、アトゥム神が相手の魂の表面にくっつけていたエネルギーは、衣類から汚れを浮き上がらせる洗剤のように、肉体から魂を強く浮き上がらせ、肉体から魂を引き離す補助をする。オシリス神のような魂の捕獲に特化した吸盤の指先などを持たないアトゥム神が、オシリス神とさして変わりなく肉体から魂を引き離せるのはこれらが理由である。(ちなみにオシリス神の方は多分もっとアバウトなタイミングで魂を奪えると思われる)
■アトゥム神の手で肉体から引き離された魂は、ダービーが事前に用意した「人形」に詰め込まれ、その状態で保管される。この人形は魂の主そっくりに作られているが、これはダービーの趣味らしい。(ただもしかすると魂の主に似ていた方が「魂を人形内に留め置く力」が強くなるのかもしれない) 人形の用意が必要となるのは手間ではあるが、一方でこの人形はオシリス神の「魂のコイン」と違って精神活動は停止しておらず、人形の体を通してダービーとコミュニケーションを取ることができる。ただし魂だけのエネルギーでは人形を満足に動かすには不十分なのか、できるのは目や口を動かして喋ることくらいのようである。