高原サパの豪華ホテル列車



スイス・コティジ風のビクトリア・サパ・ホテルとそのロビーで見た列車ポスター

 北ベトナムの中国雲南省と接する国境の町ラオカイから、更にバスで西へ1時間ほど走った処にフランス時代に避暑地として開拓された高原の町サパが有ります。街の中心に古いキリスト教会があって、20分も歩けば一周できる石畳や石段の多い雰囲気の良い街です。標高1450米の山間で何時も霧が多い所で、近くには3000米級の山や少数民族の村々を尋ねてトレッキングの旅行者が訪れるためにホテルが集まっている。
 ビクトリア・サパ・ホテルが作成した専用客車2両と食堂車が、ハノイ〜ラオカイ間294Kmをベトナム国鉄定期列車に連結されて、約9時間で運行されている。

ビクトリア・ホテルのプルマンカー ベトナム国鉄のディーゼル機関車
機関車はチェコ・プラハのスコダ製で小型ながらも18両の客車を牽引した

 午前10時20分発のハノイ行き定時列車はプープープーと長い警笛を三度繰り返すとゆっくりと発車した。先頭の3両がビクトリア・エクスプレスの食堂車とプルマンカーで、後の車両とは扉でロックされている。そして寝台車1、座席車9、荷物車2、ショッピングカーが1両続く。
 エクスプレスはビクトリア・サパ・ホテルの宿泊者専用で利用できるホテル列車である。その為にハノイからは午後10時発の夜行寝台として運行され、レストラン「トンキン」はミッドナイト迄営業している。個室は1両に2名用2部屋と4名用5部屋で、部屋は2両通しで1番から48番となっている。「トンキン」の座席は24席で昼食は2回に分けて開催される。

ソフト・ベッドとウッディな4人用の個室 越南風の扉と通路
天井のエヤコンと上段ベッド 洒落た洗面台 清潔な洋式トイレ
アテンダント バー・カウンターにて レストランカーにて
車窓を眺めての昼食はコース料理 レストラン「トンキン」のテーブル
パンプキン・スープ 田舎風テリーヌ 白ワイン掛け魚と御飯 マンゴ・タルト

 私達の1号車(An11801)の昼食は正午から13時30分迄で、ホン河上流の左岸を山すそに沿って右に左にカーブしながらゆっくりと走る。バナナの木が植わる東南アジア独特の田園風景を眺めながらのコース料理だった。食後の私達は個室に戻り、午後の一時をベッドで仮眠を摂った。往路は国鉄の増設寝台車が使用されていた為に夜間の振動に悩まされたが、このホテル専用のプルマンのベッドは大変にソフトで快適、しかも静かで大満足でした。
 列車は速度制限表示板が50Kmとなっていたが、カーブが多い為にのんびりと走っていた。小さな町では商店の軒先をかすめる様にして通過して行く。田園では牛の入った水田や池で釣をする人を見かけたり、時々停車する駅では対向列車とも行き違いを行い、私達の後方車両でも乗客が大勢乗り降りしていた。やがて夕暮れ時になると西に沈む太陽が紅くなり、ハノイに近付くと直線も多くなってスピードも上った。そしてホン河の長い鉄橋を渡る頃には夜の帳は下りていた。

 ロンビエン大橋を3分40秒と慎重に渡った列車は左にカーブして高架を下り、ハノイ駅構内に滑り込んだのが10分遅れの午後7時35分だった。このダイヤ時刻だと許容範囲だろう。先頭車両のビクトリア・エクスプレスはホームからはみ出して停車、ポーターやアテンダント達が乗客の降車を手伝っていたが、それがベトナムの首都ハノイ駅の風景だった。
2004年11月11日